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ほっそりなのに平均340Y! 新世代の飛ばし屋たちは「マッチョ離れ」が進んでいた?

PHOTO/Tadashi Anezaki

ブライソン・デシャンボーに代表されるように、筋力強化に励む選手が増えている一方で、若手の飛ばし屋の中には細身体型の選手も少なくない。その理由を掘り下げてみた。

解説/斎藤大介

16 年に米女子ツアー選手をサポートし、20 年から渋野日向子の専属トレーナーとして活躍

手足の長さと体のしなやかさで
クラブを最大限に加速させられる

B・デシャンボーやB・ケプカなど、海外の飛ばし屋たちは筋肉隆々のマッチョ系が多いのは周知の事実。だが米ツアーや欧州ツアーの飛距離ランキング上位には、細身体型の選手も意外と多い。その理由を斎藤トレーナーに聞いてみた。

「一概にパワー=飛距離とは言えません。背丈と手足の長さは比例するのですが、手足が長いとスウィングの回転半径が大きくなるので、助走距離を長く取ることができます。また筋肉量が少ないほうが関節の可動域が広がる傾向にあるので、より助走距離が長くなり、インパクト時のスウィングスピードが上がりやすくなります。若い選手は筋肉自体も柔らかく、しなやかに動きますし、あえて筋肉量を増やす必要がないのだと思います」

ただ、これらの選手は見た目こそ細めだが、インナーマッスルなど必要な筋肉はしっかり備わっていると斎藤トレーナー。

「ガリガリと言うと筋肉量が少なく、関節の安定性が弱いと思われがちですが、300ヤード以上も飛ばす彼らのインナーマッスルはかなり鍛え上げられているはず。でないと大きな遠心力に耐えられませんし、切り返しからフォローまで軸をキープするのにも強靭なインナーマッスルが必要です。普段どういう風に鍛えているのか気になりますね」

欧州ツアーの若き飛ばし屋2人もやせ型

欧州ツアー屈指の飛ばし屋、ラムセス・ホイガードとウィルコ・ニナバーは、ともにBMI(体重(kg)÷身長(m)の2乗)の値が22。米ツアーの選手の平均は身長184.9cm・体重81.1kgで、BMIが24.8ということからも、彼らが高身長かつほっそり体型だとわかる。

ウィルコ・ニナバー

平均340.47Y(2020欧州ツアー1位)

188cm・78kg。欧州ツアーで439ヤード飛ばしたことで有名になった南アフリカの20歳。今季も平均飛距離1位

ラスムス・ホイガード

平均319.32Y(2020欧州ツアー10位)

187cm・77kg。欧州ツアーで2勝を挙げている期待の20歳。東京五輪ではデンマーク代表で出場

米ツアーでも細身の選手が気を吐いている

ウィル・ザラトリス

平均306.4Y(米ツアー24位)

188cm・75kg。今年のマスターズで松山英樹を最後まで追い詰め2位に入った

ホアキン・ニーマン

平均310.8Y(米ツアー9位)

182cm・69kg。チリ代表として東京五輪でも活躍した22歳

長身細身とマッチョはどっちが有利?

「1発の飛びは長身が有利です」(斎藤)

身長と手足が長いとスウィングアークが大きくなり、ヘッド速度を上げられる。また、大胸筋など筋肉量が少ないほうが関節の可動域も増える。しかし、可動域が増えたぶん、それを制御できる体の強さがないと再現性は低くなってしまう。ミート率という点では、可動域が狭くとも、コンパクトなスウィングのほうが有利になる。

長身で細身体型

【強み】
大きなアークでヘッド速度が上がる
●関節の可動域が広い

【弱み】
●筋肉が強くないと遠心力に耐えられない
関節や筋肉への負担が大きくケガをしやすい

身長は低いがマッチョ体型

【強み】
●コンパクトなトップで再現性が高い
関節が安定しケガをしにくい

【弱み】
可動域が制限され運動効率が落ちやすい
しなやかな筋肉でないとケガを招きやすい

月刊ゴルフダイジェスト2021年10月号より