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【さとうの目】Vol.212 サム・バーンズ「24歳、ルイジアナ期待の星!」

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週の注目選手はバルスパー選手権で初優勝を遂げたサム・バーンズ。

ビクトール・ホブランやコリン・モリカワ、マシュー・ウルフなど、次代を担う25歳以下の若手がしのぎを削るPGAツアー。そうしたなかで5月のバルスパー選手権で初優勝、続くバイロン・ネルソンで2位となり、ようやく頭角を現してきたのがルイジアナ州立大出身、24歳のサム・バーンズです。

ようやく、と言うのには理由があります。同年代では5~6番手といった印象のバーンズですが、アマチュア時代の実績は彼らにまったく引けを取りません。全米ジュニアゴルフ協会の最優秀選手に選ばれ、地元のルイジアナ州立大に進学。1年からオールアメリカンに選ばれ、2年では15戦に出場し4勝をマーク。大学ゴルフの最高栄誉のひとつジャック・ニクラス賞も獲得しました。その後、2年で大学を辞めプロ転向します。

大学を中退する一流選手のプロ転向は、全米学生との兼ね合いから通常5月か6月になるもの。ところがバーンズは17年秋に開催される大学の対抗戦・ウォーカーカップへの出場と、その後のプロ転向を表明します。そのため7月のバルバソル選手権にはアマチュアで出場、6位に入る健闘を見せました。

ところがウォーカーカップにはまさかの落選。選出方法を巡ってゴルフ界に物議を醸しました。これでプロデビューが1シーズン遅れたのは確かです。春にプロ転向して推薦で何試合か出ていれば、前出のバルバソル選手権のときプロだったら……と残念がる声もありました。でも当人はウォーカーカップでは「アメリカチーム頑張れ!」と応援するナイスガイなんです。

その後、Qスクールを経て下部ツアーからのプロ生活が始まりますが、その存在をアピールしたのは18年のホンダクラシック。この年は、4度の手術を経てタイガーが復活を果たした年。この試合の最終日、赤黒ウェアのタイガーと2サムで一緒に回ったのがバーンズでした。「緊張して何も覚えていない」とのコメントとは裏腹に、解説をしていたボクには落ち着いているように見えたし、2バーディ・ノーボギーの68で回り、タイガーより上位の8位に食い込んだゴルフには非凡なものを感じました。さらにホンダの1カ月後には下部ツアーで初優勝しています。

「バックスウィングでグッと沈み込みながらアーリーコックで上げていくのが特徴的。上半身と下半身の捻転差が非常に大きく、深い前傾を終始キープしたまま一気に左に振り抜いていく、いわゆるボディターンの代表のようなスウィングです」(Photo by Julio Aguilar/Getty Images)

ドライバーとパットが上手い、ケプカタイプの選手。19年はバスケットで遊んでいてケガをしプレーオフには進出できませんでしたがケガも完治。アイアンのスタッツも今シーズンは改善しています。ガッツポーズなどがなくファンには少し面白くない選手に映るかもしれませんが、ここからの活躍には注目です。

同じ大学出身で、メジャーチャンピオンのデビッド・トムズとはご近所。トムズの息子とは「2階でプレステで遊んだ」という子ども時代からの親友で、大学でも一緒にゴルフに励みました。トムズ以外はプロ転向後にパッとしない同大出身選手が多いなか、久々のルイジアナの期待の星なのです。

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2021年7月27日号より