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【PGAツアーHOTLINE】Vol.7 キーガン・ブラッドリー「プレショットルーティン」

ARRANGE/Mika Kawano PHOTO/Hiroyuki Okazawa

PGAツアーアジア担当ディレクターのコーリー・ヨシムラさんが米ツアーのホットな情報をお届けする隔週連載「PGAツアーHOT LINE」。第7回のテーマはキーガン・ブラッドリーの“ルーティン”について。

前回のお話はこちら

「どう打つか」より実は重要なこと

ゴルフはいかに少ない打数でボールをカップに入れるかが、勝負のゲーム。目的は同じでもプロセスは選手それぞれに個性的です。

たとえば11年の全米プロ覇者キーガン・ブラッドリー。彼はショットを打つ前に、アドレスに入っては外す動作を繰り返し、なかなかスウィングをスタートさせません。コーチであり父であるマークさんは「友達とのプライベートなゴルフではそんなことはしないよ」と笑います。

「あれはプレッシャーに対処するためのルーティンなんだ」

マークさんによるとブラッドリーはスポーツ心理学の権威ボブ・ロッテラ氏に傾倒しており、「準備が整うまで決して打ってはならない」という同氏の教えを忠実に守っているのだといいます。

以前は構えに入ったり外したりだけでなく、グローブのマジックテープを外してはつける動作を繰り返してから打っていたブラッドリー。見ている側は「さっさと打ってよ」と言いたくなりますが、本人にとっては心と体の準備を整えるの
に必要な作業。それがなければナイスショットは望めないのです。つまりプレショットルーティンはプロにとって打球の結果を直接左右する重要な鍵だということ。

どんな球を打ってどうコースを攻めていくかをイメージすることは、何より大事なこと。以前は打つ前に時間もかかってスロープレーの指摘を受けることもあったが、最近はかなり時間をセーブしている

シニアツアーで活躍するキーファー・サザーランドはグリーンに必ずタオルを持って上がります。「ジュニアのころからのクセでね。キャディがいないから自分でクラブやボールを拭いていたんだ。プロになってもその習慣を続けていたらタオルが手元にないとスイッチが入らなくなった」
 
全米プロチャンプのデビッド・トムズにも目の前の1打に集中するための魔法のスイッチがあります。それはボールの後方に立って打つべきショット(またはパット)をビジュアライズ(可視化)したら小指の先を舌でひと舐め。それから打球動作に入ります。その儀式なしではいいプレーができないのだとか。

プロは誰もが自分なりのフォーミュラ=方程式を持っています。誰にでも当てはまるのではなくその人だけに効果がある魔法。エンジンを点火するためのプレショットルーティンはクラブをどう振るかと同じくらい重要なようです。

コーリー・ヨシムラ

PGAツアーのアジア全体のマーケティング&コミュニケーションディレクター。米ユタ州ソルトレーク出身でゴルフはHC6の腕前

週刊ゴルフダイジェスト2021年7月27日号より