【世界基準を追いかけろ】Vol.46「目標を叶えるコツは“口に出す”こと」
TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe
松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、最先端のゴルフ理論について語る当連載。今回は前回に引き続き、日本の女子ゴルフのレベルについて。
GD 前回、日本人の女子選手がアメリカツアーで通用するためには、相当に頑張らなければならないとおっしゃっていましたが、具体的にはどういう部分ですか?
黒宮 体が大きい海外の選手はアップライトに振れる分ショットの精度は高いので、日本人はスウィング効率やクオリティの高さでカバーをするといったことが必要だったりします。でもそういったテクニカルな部分より、まずは目標に向かう意志と、それを公言する強い気持ちを持つことですよね。優勝を争った畑岡奈紗プロと笹生優花プロは、ずっと全米女子で優勝するんだと言ってきたからこそあの場に立てたわけですよね。そういった発言をすること自体、ある種のリスクを背負うことにもなる反面、目標に真っすぐに取り組めることにもなるわけです。
GD 目標は口に出すことで実現性が上がるともいいますよね。
黒宮 目標達成のために畑岡プロは、プロ転向2年目からアメリカに渡り実績を重ねてきました。彼女の練習を見ていると、ひたむきさがよく分かります。時間が惜しい、時間が足りないという感じでいつも練習しています。これは、畑岡プロに限った話ではなく、米ツアーの多くの選手が時間を惜しむように練習していました。パッティンググリーンで、話をしている選手はほとんどいませんでした。
目澤 畑岡プロとは、(教え子の河本結プロと)春先に練習ラウンドする機会があって、トラックマンやGC4(※1)を見て、彼女なりに悩んだりゴルフを追求している姿を見ていました。何でも前向きに取り組んでいて、3月には男子ツアーも見に来ていた。単なる観戦じゃなく、自分に取り込めるものを探っていた。彼女のゴルフが上手くなりたいという姿勢は素晴らしいです。
黒宮 今回、全米女子オープンに出た、僕が教えている小暮千広(※2)は、試合後に「私もここで戦いたい」と言っていました。
GD どういうところに刺激や魅力を感じるわけですか。
黒宮 今回、練習グリーンでキャプト(※3)を持ち込んでやっている選手が4人いて、それを見て衝撃を受けましたね。そこまでやっているんだ、と。それとギャラリーの一打一打への大きなリアクションは、プレーヤーにしてみればあの場所でやりたいと思うでしょうね。小暮にとって今回の全米は良い経験になりましたし、米ツアーでやりたいと口にしたことは彼女の成長のためにもなると思います。
GD その一方で、目澤さんがコーチをしている河本プロが米女子ツアーからの撤退を表明しましたね。
目澤 迷っているということは聞いていましたが、最終的に判断は本人に任せました。僕としては、日本ツアーに戻るのは、そんなにマイナスとは思っていないですし、アメリカツアーというものを知ったうえで、日本の女子ツアーで戦うというのは、またワンステップ上への成長が期待できると思っています。そして、河本プロの中で、また米ツアーに挑戦したいという気持ちが出てきたらいいですね。その気持ちになれるよう、僕が彼女を引っ張っていけたらと思っています。
(※1)トラックマン・GC4……弾道解析器。ドップラーレーダーを使用するトラックマンは屋外での弾道追尾・解析に優れ、GC4はクラブ解析の精度が高いという特徴がある。(※2)小暮千広……2003年生まれ。明秀学園日立高校3年。日本で行われた全米女子オープンの予選会を突破し本戦に出場を果たすも予選通過はならなかった。(※3)キャプト……パッティング解析器の「CAPTO」。ストローク中のフェース向き、シャフトの傾き、ライ角度など16項目のデータが表示される
目澤秀憲
めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任
黒宮幹仁
くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導
週刊ゴルフダイジェスト2021年7月20日号より