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将来を嘱望される逸材は本当に開花するのか? 若者の未来

PGAツアーのフォールシリーズ「ビダンタワールド・メキシコオープン」でまたひとり20歳のアマチュアがリーダーボードを賑わしている。ハワイ出身のキヘイ・アキナ。ブリガムヤング大学2年の彼の前途は輝いているように見える。しかしアマチュアとして史上2人目のPGAツアー覇者となったニック・ダンロップのように通算2勝挙げながら低迷する選手の例もある。果たして若者の未来は?

ビダンタワールド・メキシコオープンに出場中のキヘイ・アキナ(左)。予選ラウンドは年下のプロ、ブレーズ・ブラウン(右)、そしてルーク・クラントンと同組だった (Photo by Orlando Ramirez/Getty Images)

「ビタンタワールド・メキシコオープン」第2ラウンド、アキナは『64』をマークし、平田憲聖らと並び首位と3打差の2位タイにつけた。現在彼はPGAツアー・ユニバーシティ・アクセラレーテッドプログラムを通し大学を卒業する前にツアーカードを取得する可能性がある。そうなればジャクソン・コイブンに続き史上4人目の同プログラム出身者となる。

PGAツアー・ユニバーシティ・ランキングは大学4年生に適用され、アクセラレーテッドプログラムは大学卒業を待たずにPGAツアーに参戦する資格を付与される、いわば飛び級のような制度だ。

今年PGAツアー5試合に出場しているアキナはすべて予選突破。「バンク・オブ・ユタ選手権」で初のトップ10入りを果たしたがこのままトップ10入りが続ければあっという間に規定の20ポイント(現在12ポイント)に達し、ツアーカードを取得することができる。

この制度で出場権を得た最初のプレーヤーがゴードン・サージェント、2番目がルーク・クラントンで3人目がコイブンだが、現時点で結果を出しているのはコイブンだけ。アマチュア時代プロの試合でたびたび優勝争いを演じ旋風を巻き起こしたクラントン(準優勝2回トップ10、4回など)は今年出場した試合の半分で予選落ちしポイントランク126位とシードも危うい。サージェントも134位で正念場を迎えている。

我々はよく「将来を嘱望される逸材」という表現を使う。もちろんサージェントもクラントンもアマチュア時代は将来を嘱望される逸材だった。しかし若くして注目され周囲の期待を背負いながら実力を開花させるのは難しい。

1982年全英オープンに出場したボビー・クランペット(写真/弊社保管)

アキナが通うブリガムヤング大学の大先輩で同大の殿堂入りを果たしているボビー・クランペットもアマチュア時代の戦績は素晴らしかった。NCAA選手権(全米大学ゴルフ選手権)で12勝を挙げ在学中にオールアメリカンに3度選出され、当時珍しかった19歳でPGAツアーに参戦するなどジャック・ニクラス2世と呼ばれていた。

1980年にプロ入りすると次世代のヒーローとして持て囃され、翌年には優勝こそなかったものの2位1回、トップ10、8回を記録し賞金ランク14位に入った。1982年の全米オープンでは優勝したトム・ワトソン、2位のニクラスに次ぐ3位タイ。そして全英オープンでは3日目までトップを走ったが最終日に崩れて10位タイに終わった。

それでもメジャーでの活躍で「もうすぐボビーの時代がやって来る」と思われた。そしてその年の9月、サザン・オープンで遂に念願の初優勝を飾ったのだ。ところが翌年から成績は下降線を辿り、ニクラス2世と呼ばれた彼にとってサザン・オープンでの優勝が最初にして最後の勝利となってしまった。

66歳になった現在はCBSのゴルフ解説者として活躍。コース設計もこなしティーチングプロとして独自のメソッドを掲げ指導者として名を馳せている。

それにしても勝ち続ける選手と勝てなくなってしまう選手の境界線は何なのだろう? ビッグ3のひとりでメジャー9勝のレジェンド、ゲーリー・プレーヤーはこんなことを言っている。

「優勝するかしないか、それは誰にもわからない。ゴルフの神様のみぞ知る勝負の機微。おそらくプレーヤーのハートの問題なのだ」

彼はまたマスコミがやたらと若手をスーパースターと呼んで持ち上げることにも苦言を呈する。

「メジャーで最低でも6勝を挙げなければスーパースターとは呼べない」と手厳しい。彼の解釈によればニクラス、タイガー、ワトソン、アーノルド・パーマー、ニック・ファルド、ローリー・マキロイら全世界でスーパースターと呼べるのは15人しかいなくなってしまう。メジャー5勝のセベ・バレステロスがスーパースターでないはずはないと反論したいが……。

1988年太平洋VISAマスターズにはセベ・バレステロス(中央)を一目見ようと太平洋C御殿場Cに多くのギャラリーが詰めかけた(写真/弊社保管)

将来を嘱望される若手がプロの世界で通用するようになるまでにはさまざまな試練が待ち受けている。それを乗り越えて選手は成長する。誰が成功するのかは誰にもわからない。ただ我々は気長に温かい目で彼らの成長を見守るしかないのだろう。

文/川野美佳

米サンディエゴ州立大学留学を経て1990年代から「週刊ゴルフダイジェスト」「Choice」を中心に執筆を開始。主な翻訳書に『タイガー・ウッズ私のゴルフ論』(テレビ朝日)『タイガー・ウッズ:もうひとつのインサイドストーリー』(日本ヴォーグ社)『ブッチ・ハーモンの勝者のゴルフ: タイガー・ウッズを育てた名伯楽』(小池書院)など。ジャック・ニクラス、ゲーリー・プレーヤー、トム・ワトソンなど海外のレジェンドゴルファーへのインタビューを多数行っている

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