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【世界基準を追いかけろ!】Vol.40「世界トップ30の本当の凄さは上手さよりも“粘り強さ”」

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、最先端のゴルフ理論について語る当連載。今回は前回に続き、PGAツアーのトップレベルの選手の凄さについて目澤が語る。

前回のお話はこちら

GD 前回、世界ランク上位30位以内の顔ぶれはあまり変わらないとおっしゃっていました。

目澤 そうですね、例えばマックス・ホーマなどは、いつも上位争いしているイメージがあると思うんですが、まだ世界ランクは40位。そういう意味では、30位以内に入ってからもそこからさらにランクアップするのは厳しい世界だと思いますよね。

GD 30位以内とそれよりも下位の選手との違いはどの部分にあると思いますか。

目澤 調子が悪いときに“どれだけ粘れるか”というところじゃないですかね。調子が良いときのゴルフはトップ30圏内でも圏外の選手でも、PGAに出てくる選手はそんなに変わらないと思うので。

GD 調子が悪いときの対応力や、粘りのゴルフができているなど、近くで見ていて、この選手は凄いなと思うプレーヤーはいますか。

目澤 パトリック・リードは、強かった頃のタイガーみたいなゴルフをしますよね。驚くような簡単なミスもしますが、そこからのリカバリーが凄い。アイアンでドローもフェードも打てるし、縦の距離の合わせ方も上手いし、パッティングも上手い。それに勝負師で非常にタフ。周囲にガタガタ言われても気にせずにプレーしていますよね。あの部分は凄いなと思いますね。

GD 確かに、しぶとくパーを取る、簡単にボギーを打たないというプレーぶりは印象的です。粘りということでいえば、松山プロも、マスターズ前のプレーヤーズ選手権は予選落ちこそしましたが、2日目は最後まで粘りを見せました。

目澤 2日目のラウンドは相当凄かったです。その粘った経験が次戦のマッチプレーに生きて、3日目に世界ランク12位のパトリック・カントレーを相手に完勝することにつながったのだと思います。

GD さらにそれがまた、マスターズの快挙に繋がるわけですよね。

目澤 そうだと思います。ただ、松山選手のように、調子が悪くても粘ってスコアを出せる選手がPGAツアーのトップ30の中にはゴロゴロいるわけですね。

GD そこにパッと入っていって勝つというのは、なかなか難しいことですか。

目澤 いやぁ、そうでしょうね。

GD 目澤さんからみて、ここ数年でトップ30に入ってきた若手の注目選手は誰ですか。

目澤 ビクター(ビクトール・ホブラン)(※1)などは凄く強いですよね。ああいう選手が、すぐに出てくるのがPGAの凄さですよね。

GD 彼は、18年にはノルウェー人として初めて全米アマを制していますよね。

目澤 ビクターと同じ歳のコリン・モリカワ(※2)も世界アマチュアランキング1位になるなど、アマ時代に実績を挙げ、プロ転向後6試合目で優勝を果たしています。あと一人、マシュー・ウルフ(※3)もプロ入り3試合目で優勝という快挙を成し遂げていますよね。この3人は本当に仕上がっていると思いますね。

GD アマでの実績の延長でPGAツアーでも活躍できる。こうした流れは、これからも続いていくでしょうね。

(※1)ビクトール・ホブラン……1997年、ノルウェー生まれ。18年全米アマ優勝。19年プロ転向。翌20年プエルトリコオープンで米ツアー初優勝。同年のマヤコバクラシックで2勝目。フェデックスランキング3位。(※2)コリン・モリカワ……1997年、米カリフォルニア州生まれの日系アメリカ人。19年にプロ転向。6試合目のバラクーダ選手権で初優勝。20年全米プロ選手権優勝。ツアー4勝。フェデックスランキング25位。(※3)マシュー・ウルフ……1999年、米カリフォルニア州生まれ。2019年5月にNCAA全米学生選手権個人戦優勝。19年プロ転向後、3戦目の3Mオープンでツアー初優勝。フェデックスランキング47位

目澤秀憲
めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁
くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導

週刊ゴルフダイジェスト2021年6月8日号より