Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • プロ・トーナメント
  • 「明日から頑張ろう」から「今日できることは全部やる」に! 生死の境をさまよったプロゴルファー竹山昂成の復活ストーリー<前編>

「明日から頑張ろう」から「今日できることは全部やる」に! 生死の境をさまよったプロゴルファー竹山昂成の復活ストーリー<前編>

25歳という若さで生死の境をさまよい、不可能と思われたプロツアーの世界に戻ってきた竹山昴成。「ゴルフ観が変わった」という竹山に、話を聞いた。

TEXT/Yumiko Shigetomi PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/パナソニックオープン ゴルフチャンピオンシップ

竹山昂成 たけやま・こうせい。ジュニア時代から全国大会に出場。東北福祉大学卒業。21年プロ入りし、22年からACNツアー参戦。昨年のQTで6位に入り今季はレギュラーツアーとACNの二足のわらじで戦っている。兵庫県出身の26歳

>>後編はこちら

再起不能の危機から
回復して生まれ変わった

昨年12月に行われたファイナルQTで6位に入り、今季はレギュラーツアーで戦えるという喜びの中で行った年末の忘年ゴルフ。その朝ゴルフ場で軽くストレッチをしていると、後頭部が温かくなり右目の視界がぼやけながら意識が薄れていくことに気付いた。

「一緒にいた中西直人さんたちがすぐに救急車を呼んでくれて、目が覚めたら病院のベッドで体が全く動かない状態でした。手も足も顔も動かせなくて、年越しも元日も病室の天井を見上げたまま絶望していましたね」 

脳梗塞に加えて椎骨動脈乖離もあり、首の後ろの血管にステントを入れる手術を受けた。まひが残ってゴルフは難しいかもしれないという医師の診立てを覆し、体は順調に回復していくが、退院は1カ月後、クラブを握れたのは2月の半ばからだ。

「首に負担をかけてはいけないからしばらくは片手打ちとかばかりやっていました。3月に入ってからフルショットを始めたけど、恐る恐るという感じでした。でも、その長い基礎練習期間と、力が入らないスウィングというのがいい効果をもたらしたと思います」 

奇跡的に間に合った開幕戦で初日に66の4位タイ発進、次の試合でも初日に64の好スコアで回った。ショットの精度が上がっている実感はあったが、まだ体はリハビリ段階でもあった。首のステントが生着する7月までは心拍数を上げてはいけないという制限があるなかでのラウンドは注意が必要だった。トレーニングもできなかったため体力も完全には回復しないままレギュラーとACNの両ツアーに出るというハードな生活だった。

「毎週試合が続くというのが初めての経験なので、まだ今年は結果に結び付けることはできていませんが、いまはゴルフができていることが幸せです」

7月の検査でステントの生着が確認できるまでは、インパクトで首に衝撃がかかることが怖かった。心拍数も上げてはいけないため、トレーニングもできなかった

1日の時間の使い方が大きく変わった 

基礎練習の大切さを実感したのと同時に、生活や内面の変化も大きかったようだ。

「血液をサラサラにしないといけないから大嫌いだったトマトを食べるようになったし、毎朝トマトジュースを飲んでいます。栄養面や睡眠のこともきちんと考えるようになり、生活の質が上がりました。それまでは、今日は楽しんで明日から頑張ろうっていう日が多かったのですが、今は『今日できることは全部今日やる』という考えに変わりました。ゴルフのことばかり考えるようになり、1日の時間が足りないと感じるようになりました」 

まさに生まれ変わったかのように行動も考え方も一転し、生き生きとゴルフをしている。

「倒れて死にかけたことで家族や友人には本当に心配をかけたので良かったとは言えないですけど、あのことがあったから気付けたことがあまりにも多い。あのまま何も気付けないまま30歳過ぎとかまでやっていたかもしれないので、神様がキッカケを与えてくれたのかなとプラスにとらえています」 

夏に検査を受けて運動制限が解除されてからは、試合中でも毎日コースに行く前にジムで1時間ウォーミングアップすることが日課になった。

「やっと筋トレもできるようになったし、技術面でも“ノビシロ”がまだたくさんあるのでこれからはそれをひとつずつ埋めていこうと思っています。練習へのモチベーションが以前とは全然違うので、これからが自分でも楽しみです」

「“中西オジちゃん”は僕の命の恩人です」

家が近く所属先や練習先も同じという中西直人(写真右)。開幕戦では万全ではない竹山の体を心配してキャディを買って出た

>>後編はこちら

月刊ゴルフダイジェスト2025年12月号より