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【林菜乃子の全米女子OP奮闘記】ゴルフだけに集中できた一週間「ゴルフの世界観が大きく変わりました」

2006年開場のリンクス風コース「エリンヒルズ」で開催された海外女子メジャー最古の大会「全米女子オープン」。日本予選を2位通過し、本戦出場を果たした林菜乃子に、初めての海外メジャーで感じたことを語ってもらった。

PHOTO/本人提供

解説/林菜乃子

はやし・なのこ。1997年5月17日生まれ。神奈川県出身。クラーク記念国際高校卒。2018年プロテスト合格(90期生)。18年のステップ・アップ・ツアー「京都レディース」でプロ初優勝

行くまでにクラブをたくさん用意しました

全米女子オープンはずっと出たかった大会です。コロナ禍もあって日本の予選会にはなかなか出られなかったのですが、2回目の挑戦で出場権が獲得できました。まずはエリンヒルズのことを調べました。ネットの記事や動画を見て地面が硬い、風の影響が大きいことなどを把握。行く前にクラブだけは準備しようと思い、ローバウンスのウェッジ、ロフトを立てたドライバー、風に流されないように球の高さが出ないUTや6Iなどを用意しました。パターもロフト違いを数本。クラブは全部で20本以上になりました。

全米女子オープンの会場は大会前週の土曜日から回れるので、その週の国内ツアーはお休みにして、土曜日にアメリカに入りました。時差ボケを想定していたのでその日は1日ホテルでのんびり。今回のチームメンバーはキャディの呉本里恵子さん、クラブやプレー面をサポートしてくれる男子プロの西脇まあくさん、トレーナーのジャーマイアス賢三さんの4人。通訳は賢三さんがペラペラなので何も問題なかったです。

宿はオフィシャルのホテルにしました。キッチンが付いていて自炊もできましたが、食事はすべて外食にしました。料理する時間はあるのかな? 作業分担はどうしよう? そんなことを考えるのが面倒になってしまって。同ホテルには、選手がたくさん泊まっていました。アメリカの空港に着くとコーテシーカーがお出迎えです。”さすが、海外メジャー”って感じでしたね。

日曜から18ホールの練ラン。コースが広すぎ

日曜からさっそく練ランです。海外メジャーは初めてでしたし、コースを覚えるのに時間がかかると思ったので、とにかくコースを見て回ろうと。日曜は18ホール回りました。最初の感想は「コース広すぎ!」。フェアウェイの幅は日本の倍はあります。ただ、リンクスっぽいと聞いていたのにアップダウンが激しかったです。フェアウェイもグリーンも傾斜がたくさんあってマウンドだらけです。

かっちゃんと練ラン。外食は少し後悔……

月曜は仲良しのかっちゃん(勝みなみ)とアウト9ホールを回りました。久しぶりに一緒にゴルフして楽しかったです。夕飯も一緒に食べましたが、外食は少し後悔しちゃいました。アメリカは脂っこいものが多すぎです。いつも半分くらい残していました。

憧れのチョン・インジ選手と回れてびっくり

火曜はイン、水曜はアウトを回りました。火曜はずっと憧れていたチョン・インジ選手と回ったんです。本当に偶然で自分の組に入ってくれたんです。めちゃめちゃ優しくて日本語で「今週、ガンバレ」って言ってもらえました。

海外の選手はみんな背が高い

実は月曜にロッカーでチョン・インジ選手を見かけたんですけど、勇気がなくて声をかけられなかったんです。それがまさか火曜に一緒に回れるなんて……

【大会1日目 スコア74】
10番でいきなりバーディ。イケるかもって思った

日曜から練ランを始めてアウト3回、イン2回の計2.5ラウンドしました。エリンヒルズはアウトが難しいので、アウトを多めに回ったのですが、日本のコースとはまったくの別物でした。一番の違いはグリーン周りです。芝が刈ってある(コレクションエリア)のでボールが乗ってもグリーンの傾斜で落とされます。でも狙いどころはあるんです。右が下っていても左には上り面があって、そこに落とすと転がってピンに寄っていくんです。

こんなゴルフ、日本ではしたことがなかったです。奥の傾斜から寄せるグリーンもあって、そのルートを探すのがとても新鮮でした。エリンヒルズは木がないので風の影響も大きく、選手はみんな低い球で攻めていました。地面が硬いのでボールもよく転がりますし、そういう意味ではクラブセッティングが上手くハマりましたね。

そして大会初日。スタートは14時42分(最終組)。10番でいきなりバーディです。ギャラリーも少なくて全然緊張しなかったです。「これならイケるかも」って。ただ、そう甘くはありません。私には距離が長すぎました。しかも飛距離が必要なホールほどアゲンストなんです。230Yくらいのマウンドに着弾してボールが戻されることも。「いじめかよ」って思いましたね。最後の9番でバーディが取れましたが、初日は2オーバーの78位タイ。ホールアウトは20時半。日が沈む寸前です。夕飯はゴルフ場で食べました。

【大会2日目 スコア76】
前日と同じホールでボギー。スキル不足を感じました

2日目は8時57分スタート。前日が最終組でホテルに着いたのは24時くらい。寝る時間はほとんどなかったです。2日目はアウトスタートでしたが、前日と同じ1番、4番、6番でボギー。難度の高いホールで上手く対応できませんでした。本当にスキル不足を感じましたね。結果は76。トータル6オーバー、98位タイで予選敗退です。初日、2日目とも風は強くなかったのでカットライン(1オーバー)が高くなった可能性はありますが、他の選手のスキルが高かったのは間違いありません。パットのタッチもそうですし、グリーン周りから寄せるアプローチも絶妙です。

コースとして考えれば、グリーンの速さは日本のサロンパスカップのほうが速いですし、カップも傾斜に切られているわけじゃなく、グリーンの端にもありません。ただ、マウンドがいっぱいあるだけです。だからライン読みはすごく難しかったです。フェアウェイもうねりやマウンドはありますが、狭くはないのでプレッシャーも少ないです。傾斜を読み、傾斜を利用するゴルフは、私には初体験でした。

日本のコースは外してはいけないエリアばかり考えがちですが、アメリカは違ったんです。このルートで攻めれば、ご褒美がある、というのがよくわかるんです。そこに打てないことのほうが多かったですが、打てたときはすごく嬉しくて楽しかったんです。ゴルフとの向き合い方が変わるというか、自分の中の“ゴルフ観”が大きく変わりましたね。

【大会3日目】
悔しかったので会場で1日中練習してました

コースは海外メジャーらしく、本当に難しかったです。ですが、とても楽しかったです。この1週間、ゴルフだけに集中できたことが、本当に素晴らしい経験でした。予選落ちでしたが、帰りの飛行機は月曜の予約でしたし、悔しさもあったので会場に行って1日中練習しました。かっちゃんも一緒に練習してくれて、クラブの話で盛り上がりました。帰国すれば、すぐヨネックスレディスですし、それに向けてひたすら練習しました。

エリンヒルズは、このルートで攻めてください、そういう意図がコースからすごく伝わってくるんです。そのショットを打つには、高いスキルが必要ですから、自分のゴルフを磨くしかありません。この感覚というか、モチベーションというか、やりがいを強く感じたんです。今回は力不足でしたが、新たな気持ちでゴルフに向き合えそうな気がしています。アメリカで戦っている日本人選手たちもすごく楽しそうでした。

【大会4日目】
最終日は観戦に。ネリーの組を追っかけ

最終日は試合観戦です。ネリー・コルダ選手の組とミンジー・リー選手の組につきました。ティーショットは飛ぶし、難しいエリアからアプローチで簡単に寄せてくるし、すごいプレーの連発でした。ギャラリーはみんなネリーを応援していましたね。アメリカでは絶大な人気のようでした。

2026年はLA開催。また挑戦したいです!

最初はアメリカの試合に出てもそんなに変わらないでしょって思っていました。ですが、全米女子オープンに出て、絶対に行くべきだって痛感しました。もっと若いときに来たかったと後悔したくらいです。アメリカに来れば、ゴルフと深く向き合えます。いま日本の選手が活躍していますが、日本人の丁寧さやショットの精度があれば、十分に戦えることもわかりましたし、何よりゴルフの世界観が変わるはずです。来年はロサンゼルスのリビエラCCです。絶対に行きたいです。また予選会からチャレンジします!

週刊ゴルフダイジェスト2025年6月24日号より