【名手の名言】バイロン・ネルソン「牧場を買いたかった。借金ではなく、現金で」
レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は、ベン・ホーガン、サム・スニードとともに「ビッグスリー」として時代をリードしたバイロン・ネルソンの含蓄のある言葉を2つご紹介!
気が狂いそうな思いと同時にうれしかった
憑き物が落ち、やっと
普通の生活に戻れるからね
バイロン・ネルソン
バイロン・ネルソンといえば、今も破られていない大記録保持者として知られる。
1945年は第二次世界大戦終結の年だが、米本土ではツアーは行われていた。そのツアーの3月のマイアミ・フォアボールから8月のカナダオープンまで、ネルソンはなんと11連勝というとてつもない記録を達成するのである。
冒頭の言葉は、12連勝がかかったメンフィス招待で4位に終わったとき、心境を問われて応えたものである。
ネルソンはワンピースの美しい近代スウィングを身につけたゴルファーとして知られ、その後のスーパースターたち――ケン・ベンチュリー、トム・ワトソン等――が師事した。
牧場を買いたかった
借金ではなく、現金で
バイロン・ネルソン
バイロン・ネルソンといえば、ツアー11連勝の大記録で知られているが、驚く数字は他にもある。1945年のその年、30試合に出場したネルソンは11連勝を含む18勝をあげた。勝率はなんと6割。平均ストロークは120ラウンドで68.33。
平均ストロークこそ07年にタイガー・ウッズが破ったが、11連勝、年間18勝、勝率6割、この記録は今後も絶対破られないだろう。あの帝王ニクラスも成しえることができなかった。
ネルソンがこの大記録を成しえた原動力は何だったか? その答えが表題の「言葉」である。
牧場を持つことに憧れていたネルソンは、この年、その憧れを実現することを決意した。ルイーズ夫人にその決意を打ち明けるが、最初は「ノー」の返事。粘ったネルソンは、借金ではなく現金でならと、譲歩を勝ち得た。大恐慌を経験していたため、特に家計を受け持っていた夫人は、借金することに不安を抱いていたためだ。
牧場を買うと決意したネルソンは、1勝するごとに牛何頭かが手に入り、牧場の広さが増していくと奮起し、その意欲がついに11連勝を含む18勝、2位が7回、アンダーパーのラウンドが90回強、ベストスコア62という驚異的な数字を残すに至る。それまでのトーナメントでの記録を、すべて塗り替えてしまったのだ。
34歳で引退したネルソンは念願の牧場を手に入れ、夫人とともに次の人生へと出発したのだった。
■ バイロン・ネルソン(1912年~2006年)
テキサス州フォートワース生まれ。10歳からキャディを始め、20歳でプロ入り。仲間にはベン・ホーガンがいたが、性格は正反対だったという。その後サム・スニードを加えた3人は、「ビッグスリー」として時代をリードした。1937、42年マスターズ優勝。39年には全米オープン、全米プロは40、45年の2度優勝している。また45年には前人未踏の11連勝を達成し、年間平均ストローク68.33という驚異的数字を残している。ヒッコリーシャフトから、当時開発されたスチールシャフトにいち早く切り換え、それが美しいワンピースのスウィングを獲得する要因になった。引退してからもネルソンに師事するために門を叩くトッププロは多く、長くツアー界の大御所として君臨した。
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