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【インタビュー】髙木優奈<前編>6度目の挑戦でプロテスト合格「もうやめよう、と思ったことも…」

渋野日向子、畑岡奈紗、勝みなみ、原英莉花らと同じ“黄金世代”の髙木優奈。同期が国内外で活躍しているなか、プロテストには落ち続けながらもステップ・アップ・ツアーで優勝するなど結果を残していた。だが、制度改正でJLPGA会員以外は試合に出られなくなってしまう。活路をオーストラリアへ求めた昨年、6回目の受験でプロテストに合格した。遅れてきた“黄金世代”が今年、新たなスタートを切る!

PHOTO/Tsukasa Kobayashi TEXT/Masaaki Furuya

髙木優奈 たかぎ・ゆうな。1998年生まれ、神奈川県出身。11歳でゴルフを始め、相洋高校卒業後、プロテストを受験するも不合格。アマチュア資格を返上しプロ転向。2019年ステップ・アップ・ツアーANA PRINCESS CUPで初優勝。23年に6回目のプロテスト受験で合格を果たすとQT14位で今年前半戦の出場権を獲得。新人戦 加賀電子カップでは完全優勝を飾る

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「日本女子アマに出場して
プロになろうと思っちゃった」

――昨年、6度目の挑戦でプロテストに合格。「遅れてきた“黄金世代”」と言われることもありますが。

年を聞かれて答えるといつも、「じゃあ“黄金世代”と一緒だね」と言われるんですが、「みんなは“黄金”かもしれないけど、私はまだ“磨き”が掛かっていないので」と言ってきました。ゴルフを始めたのも遅いほうだし、ジュニア時代の実績もなく、日本ジュニアにも出たことないし。日本女子アマは2回行きましたけど、記念に出ただけというような成績。もちろん、上手い人たちに追い付こうと思って頑張っていましたが、レベルが違うから焦りも何もなかったです。

――結果が出ていないのに、どうしてプロゴルファーを目指したのですか?

小学5年生まで体操競技、中学生のときは陸上の短距離で専門は100メートルと200メートルで、100メートルは13秒3でした。運動神経はイイんですよ。だから、スポーツ選手になりたかったので、ゴルフを始めたときから競技志向でやっていたんです。これといった成績はなかったのですが、高校2年のときに日本女子アマに出られて。そこで、なんでかは分からないのですが、「大学に行かないでプロになろう」って思っちゃったんです。今、振り返れば、あの成績でよくそう思えたなって。結局、プロテストに合格するまでに大学を卒業するくらいの月日を過ごしてしまいましたけど。

「プロテストでは周りの人のゴルフが
気になってしょうがなかった」

――プロテストにはなかなか合格できませんでしたが、ステップ・アップ・ツアーで優勝したり、全米女子オープンでは予選も通っています。

初めてのプロテストのときはそこまでダメージはなかったんです。「プロになりたい」とは思っていましたが、ちゃんと現実も見られていて、あの時の実力だったら120%の力が出せないと受からないと分かっていたので。それよりも、最初のプロテストに落ちてプロ宣言してからステップ・アップ・ツアーで勝てたり、1年間を通してレギュラーツアーで戦えているのに、プロテストになるとなぜか毎回、受からない。それがキツかったですね。

私にとっては、全米女子オープンの予選を通るより、プロテストに受かるほうが難しかったんです。自分のゴルフより、周りの人のゴルフが気になってしょうがなくて。「レギュラーツアーの選手とはアイアンのインパクトの音が違うな」とか、自分のほうが飛んでいないなとか。そのうち、「私のパットは入らないのに、みんなは入っている」という気がしてきて。22年のプロテストでは、イヤでたまらなくてスタート前に涙が止まらなくなりました。そんなメンタルでは受かるわけがないですよね。でも、そんなふうになるのはプロテストだけなんです。レギュラーツアーとも全米女子オープンとも、プロテストはやっぱり別ものなんです。それで、どれだけプロテストに備えても備え切れないと思ったときに、「もうやめよう」と思って、22年には2カ月近くクラブを握らなかったこともありました。

――そんなどん底からの合格。2023年のプロテストは、何が違ったのですか?

昨年から坂詰和久コーチに見てもらうようになったのですが、「ゴルフになるとすごく考え過ぎていて、自分で自分の首を絞めているよね。もっとシンプルにやればいいから」と言っていただいて。それで2023年は「いろいろ考えるより行動する」をテーマにしたんです。たとえば風が右からだからフェードでとか、いろいろ考えながらゴルフをしていたのを、145ヤードなら、145ヤードを打つだけ、とシンプルに考えられるようになったんです。また、コーチから送られてきたサッカーの本田圭佑さんが出演したNHKの『プロフェッショナル』を毎晩見てから寝るようにしました。「才能のある人はいるけれど、その差はほんの少しで、自分を信じてやるしかない」というような内容で。それを繰り返し見ることで、自分を信じられるようになりました。だから、今回のテストでは、「自分に集中する」ことができたんだと思います。

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週刊ゴルフダイジェスト2024年3月5日増刊号より