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【インタビュー】久常涼「行っちゃえばなんとかなる」「自分の人生なので自分で決める」自らこじ開けたPGAツアーへの道

2020年のファーストQT落ちからわずか3年。久常涼はついにPGAツアーという夢の舞台へ上り詰めた。日本から欧州、そして米国へと次々に戦いの場を移す“RYO HISATSUNE”の人間性に迫った!

TEXT/Masato Ideshima PHOTO/Arakishin、Hiroyuki Okazawa、Getty Images

久常涼 ひさつねりょう。2002年生まれ岡山県出身。高校卒業後にプロ入りし、21年にはABEMAツアーで3勝を挙げレギュラーツアーに昇格した。22年の欧州ツアー予選会で7位に入り翌年の出場権を獲得。そして23年9月「カズーフランスオープン」でツアー初優勝を飾り、自らPGAツアーの道を切り開いた

自分の人生だから最後は全て自分次第

日本国内では中島啓太が賞金王に輝き、金谷拓実、蟬川泰果ら若い世代の台頭が著しいが、久常涼は彼らよりさらに下の世代。男子プロは特に、高校を卒業し、大学に進学してプロ転向という流れが主流(中島らもそう)だが、久常は大学には進学せず、そのままプロの世界に飛び込んだ。大学に行く選択肢ももちろんあったと言うが、なぜそれを選ばなかったのか?

PGAツアーの出場資格を得るために最後の戦いに向けて飛び立つ直前、成田空港で大活躍だった今年を振り返ってもらいつつ、この時はまだ決まっていなかったPGAツアーへの想いについて話を聞いた

「実際に大学に行って練習環境とかも見させてもらいました。米国の大学も選択肢のひとつでしたね。でも、いずれプロの世界で戦うなら、少しでも早くそのレベルで戦ったほうがいいと思ったんです。行っちゃえば何とかなると思ったんですよね」(久常)

年齢が若いほど吸収力が高いのはゴルフに限ったことではないが、久常自身はそれを感覚的に悟っていたのかもしれない。しかし、高校3年時に受けたQTではファーストで失敗。ランキングは1212位と、絶望的な位置からプロとしてのキャリアをスタートさせた。当時、「無職になる! どうしよう!」なんて話していたが、実はそれも「何とかなる!」と、楽しむくらいの気持ちでいたのかもしれない。

結果は「何とかなる」どころか、大躍進。1年目にABEMAツアーで3勝を挙げレギュラーツアーへ。2年目はレギュラーツアーで賞金シードを獲得して、その翌年は欧州ツアーのQTをクリアして欧州へ。そしてご存じの通り、カズーフランスオープンで優勝。青木功、松山英樹に次ぐ日本人3人目となる欧州ツアー優勝を果たすだけでなく、日本人として初めてDPワールドツアーの新人王にも選出された。たった4年の間に様々な分岐点があったはずだが、久常は自分自身で決断し、それを信じて突き進んでいる。

PGAツアーへの道を切り開いた

カズーフランスオープンで優勝してからもしかしたらという思いが生まれたと久常。そこからの痺れる戦いを勝ち抜いて手に入れた経験は久常をさらに成長させるだろう

「日本から欧州へ行く時も父親には何も相談していません。確かに、いろんな人に相談はしたりもしますけど、最後は自分で決めています。自分の人生なので。前から世界のいろんなところを渡り歩くのは夢でした。川村(昌弘)さんが僕の目標なんですよね」

久常が高校時代に出場したトヨタジュニアゴルフワールドカップで、日本代表選手の中で誰よりも積極的に海外選手と交流し、宿舎となったホテルの卓球場で他国の選手たちと夜中まで勝負していたという。どんな環境でも対応できることや、その環境を楽しめるのは、彼の大きな強みだ。

何から何まで自分で行う

久常はいわゆる帯同マネジャー的な存在をつけていない。海外であっても全て1人で移動から食事など何から何までやる。それも楽しみのひとつだと考えているからだ

2023年、久常が渡り歩いた国は21カ国。言葉も文化も異なる地ではもちろん苦労もあっただろうが、そのひとつひとつの経験が今の久常の強さを支えていることは間違いない。そしてついに辿り着いた夢の場所。久常に最終戦のことについて聞いた。

「1年でPGAツアーの出場権を取れるとは思っていなかったので本当にびっくりしました。カズーフランスオープンで優勝したところからPGAツアーのチャンスが少し見えてきたなかで、そこでしっかり取り切れたことが自分のなかでも良かったポイントだと思います。今までは『自分はまだまだ』と思っていたのですが、1年で少しは自信がついたので、PGAツアーにも自信を持っていきたいですね」

久常はまだスタート地点に立ったばかり。本当の戦いはこれからだ。

DPワールドツアー最終戦でマキロイと同組となった久常。24年からはPGAツアーメンバーとなる

目標は「やっぱりZOZOで優勝したいですね」

PGAツアーで勝ちたい試合は日本で開催するZOZOチャンピオンシップだと久常

>>まさに世界基準! 久常涼のスウィングを分析

  • 23年9月カズーフランスオープンでツアー初優勝を果たし、来シーズンからPGAツアーへと舞台を移す久常涼。そのスウィングの強みをプロコーチの植村啓太氏に解説してもらった。 TEXT/Masato Ideshima PHOTO/Arakishin、Hiroyuki Okazawa解説/植村啓太 久常涼 ひさつねりょう。2002年生まれ岡山県出身。高校卒業後にプロ入りし、21年には……

月刊ゴルフダイジェスト2024年2月号より