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ありがとう! イ・ボミ 特別インタビュー<前編>“勝ちたい!”と思った試合は1つだけ。「私、性格がやさしすぎたのかも」

今季のマスターズGCレディースで日本ツアーを引退するイ・ボミ。抜群の愛嬌と笑顔に加え、2015、16年に2年連続で賞金女王に輝くなど、日本女子ゴルフ界の一時代を築いた。日本参戦から13年の歳月を本人に振り返ってもらった。

TEXT/Kim Myung Wook PHOTO/Hiroyuki Tanaka、Tadashi Anezaki、Shinji Osawa、Hiroyuki Okazawa THANKS/ムニマルカフェ

イ・ボミ 引退インタビュー
イ・ボミ 1988年、韓国水原市出身。2011年から日本ツアーに参戦し、翌年日本ツアー初優勝を果たす。2015、16年と2年連続の賞金女王に。“スマイルキャンディ”の愛称で多くのファンを魅了した


インタビューを行ったのは7月初旬。複雑な気持ちと言いつつも、話し始めると、いつもと変わらぬあの笑顔で丁寧に答えてくれた。


「韓国ツアーの選手」から
「日本ツアーの選手」へ

――日本ツアーに初参戦した2011年の開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」に出場した時のことは覚えていますか?

イ・ボミ 12年前のことですよね……。正直に言うとほとんど記憶にないんです(笑)。

――でも当時の写真を見ると笑顔が多いです。

イ・ボミ 笑ってはいるけれど、心の中では笑ってないかも。緊張と楽しさ、両方あったと思います。

「緊張していたのか、当時のことはあまり覚えていない。でも、成績を残そうと必死だったのは覚えています」

――日本での初優勝は2012年「ヨコハマタイヤPRGRレディス」でしたね。

イ・ボミ 最後の1メートルのパーパットを決めて勝ったのは覚えています。初優勝を目標にしていたので、ものすごくうれしかったですし、私のことを知ってもらえるきっかけになった試合でした。日本での1年目も韓国企業がメインスポンサーだったのですが、契約が日本のスポンサーに変わっていくことで、『韓国ツアーの選手』という気持ちから、『日本ツアーの選手なんだ。ここでもっと結果を残そう』という気持ちに切り替わっていったのを思い出します。

――節目の10勝目は2015年の「アース・モンダミンカップ」でした。

イ・ボミ これが一番うれしかった試合です。イ・チヒオンニ(=韓国語でお姉さん)とのプレーオフでしたよね。ウェッジショットがカギとなるコースで、ものすごく練習しました。最後はピンにビタッと寄せて勝った試合だったので、努力が実ったことがうれしかった。

――ほかにも記憶に残る試合はありますか?

イ・ボミ 16年の「ヨコハマタイヤPRGRレディス」で、最終ホールで追い付いてプレーオフで勝った試合です。

――確か「JLPGAアワード」でベストショット賞に選ばれた試合で、「ショットのイメージはできていたし、イメージできていないと打たない。でも、100回打っても、もう二度とできないかもしれない」と話していました。

イ・ボミ 最終日の18番、2打目が右ラフからだったんです。首位を1打差で追っていて、バーディを取らないと追い付けない。目の前には大きな木があって、グリーン手前にはガードバンカーがありました。左に打ったらOBになる可能性もあったのですが、フェースを開いて思い切って打てば、スライスでピンに寄せられると考えたんです。

2016年PRGRレディス最終日の18番。つま先上がりのラフから、持ち球とは逆のスライスで木を避け、ピンそばにつけるスーパーショット!

――持ち球がドローで、しかもラフからだとかなり難しいショットだったと思います。

イ・ボミ キャディのノリ(清水重憲)さんは、むしろ心配していました(笑)。私は自信を持って打ちましたね。それが入りそうなショットだったので、自分でも驚きました。バーディで追い付いてプレーオフもその勢いで勝ったので、流れや運が自分に向いてきたと感じた試合でした。

「毎週優勝するんだ!」という気持ちで
戦っていれば…

――15年と16年の試合がやはり記憶に残っていますね。

イ・ボミ もちろん。15年は年間獲得賞金が2億円を超え、当時のJLPGAツアーの新記録となったのも意味のあることですが、緊張感のある場面で、これまでの努力で得られた優勝のほうが記憶に残りますね。

――それにしても賞金女王になった15年と16年はいつまで勝ち続けるんだという雰囲気がありました。

イ・ボミ もっと気が強かったらよかったのに、性格がやさしすぎたのかも(笑)。『毎週優勝するんだ!』という強い気持ちで戦っていれば、どんな結果になっていたのかなと思うこともありますね。

>>美しすぎる! イ・ボミ全盛期のドライバースウィング【連続写真】

――それでも「絶対に勝ちたい」と思った試合がひとつくらいはありませんか?

イ・ボミ ひとつだけ。優勝した2016年の伊藤園レディスです。この年、ニトリレディスでりっちゃん(笠りつ子)とのプレーオフで負けたんです。それで伊藤園でまたプレーオフになったのですが、この時は「絶対に負けない!」と闘志をむき出しにした試合でした。プレーオフではいいショットを打って、パターも確実に入れるという気持ちで挑んだ試合でした。

自ら勝ちにいくことはあまりなかったというが、2016年の伊藤園レディスは別。「とにかく勝ちたくて。狙って勝ててうれしかったです」

――当時は常に勝つ自信はありましたよね?

イ・ボミ いいえ、不安でいっぱいでした。優勝した翌週にはまたリセットされるので……。完璧主義者な一面があったので、もっと自信を持つことができれば、より結果が出ていたんじゃないかな。

――初めて賞金女王になった2015年のJLPGAアワードで泣きながらスピーチしていたのは覚えていますか?

イ・ボミ 大勢の人がいる前で、慣れない日本語でどう感謝の気持ちを伝えるべきか、すごく緊張していました。14年は父(ソクジュさん)が亡くなって、ものすごくつらい時期で、15年に7勝もできるなんて思ってもいなかったんです。父とその同じ時間を共有できなかったことがとても悲しかったです。

>>後編へつづく

月刊ゴルフダイジェスト2023年12月号より