【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.784「1球に集中して練習するから本番で生きるショットが打てるようになるのです」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
11歳からゴルフを始めプロを目指していますが、全国大会レベルの成績には届かず、なかなかつらいことが多いです。それでも、このまま練習していれば上手くなる日は来るのでしょうか?(匿名希望女性・17歳・ベストスコア73)
わたしが初めてゴルフと出合った時代と比べて、いまプロゴルファーになりたい人の数はどれだけ増えたのでしょうか。
ゴルフ人気も相まってこの半世紀でその裾野は大きく広がってきましたし、ゴルフ人口も増加して、それに伴いギアも進化してきました。
さらに屋外練習場だけでなく、インドアなど練習環境の整備が進み、ゴルフと接する機会が増えたことで、上手なゴルファーが増えてきたと思います。
そして、プロを目指す若いゴルファーも増えてきました。
実際、ここ20年ほどを振り返っても、新人プロのほとんどが大学や高校でアマチュアの公式競技経験を持っているジュニア出身選手なのではないでしょうか。
若い世代のなかにプロ予備軍の層が生まれ競争も激しくなってきました。
ただ、時代は移ってもプロテストを目指す若い候補生の日々の奮闘と悩みは、今も昔も変わらないのかもしれません。
そこで思うことがあります。
プロになりたくて練習を重ね課題や悩みを抱えこんだ場合、相談する相手がいたほうがいいと思います。
しかし誰の話を聞くべきか。
プロテスト合格を目指して努力を続け、迷ったり悩んだりしているあなたにとって参考になるとしたら、プロになってツアーへ出るために奮闘している選手の言葉は響きやすいかもしれません。
多くの人はいわゆる成功者である大スターや有名人の話を聞きたいと思います。
山あり谷ありのワクワクするようなサクセスストーリーは聞いていて楽しいでしょう。
しかし、実際に成功した人が積み重ねてきた努力や失敗の苦しさは、ひょっとするとあまりリアルに実感として伝わりにくいかもしれませんね。
という意味で、本当はいま同じように悩み苦しんでいる人に話を聞いたほうがいいと思いますが、私からアドバイスさせてもらうなら、練習や努力というのは日常の繰り返しということです。
わたしは今の選手たちを見ていて思うことがあります。
それは練習場でボールを打つとして、彼女たちはものの30~40分ほどで100球も打ってしまうことです。
しかも、打っている間に座って休憩を入れたり隣同士でおしゃべりしたり、ケータイをいじったりする時間を挟んだりする選手が結構います。
わたしはプロになってから練習で1日に300球以上打ったことはほぼありません。
逆にそんなに打てないのです。
1球ごとにどんな状況で、どこへどんな球筋で打つかを強くイメージして打っていくと時間もかかりますし、体力的に持ちません。
ですから、同じ100球でも中身、濃度が違います。
正直な意見として、今も昔もプロテストの合格ラインは、それほど高いものではありません。
むしろ合格者のなかには、技術的にプロレベルに達していない選手がたくさんいるのが実情かもしれません。
テスト合格はゴールではなくスタートなのです。
合格だけでは決して一人前とは言えないのです。
時代は流れ、プロになりたいジュニアゴルファーは増えたかもしれませんが、そのうち3分の1はテキトーに練習して遊んでいる候補生、というのがわたしの率直な見方です。半人前のプロと大差はありません。
あなたが本当にプロを目指したいなら、まずはあなたの毎日の24時間のスケジュールを見直してみることです。
そして、あなたの相談に乗ってくれる適切な相手を探すことをオススメします。
プロを目指すための準備を改めて整えれば、違う景色が見えてくると思いますよ。
「練習でできないことが、本番でできることはありませんよ」
週刊ゴルフダイジェスト2023年10月10日号より
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