Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • プロ・トーナメント
  • 【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.780「全英女子OPのセッティングの妙に気づいた選手はどれくらいいたでしょう」

【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.780「全英女子OPのセッティングの妙に気づいた選手はどれくらいいたでしょう」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


今年の全米女子オープンには総勢22人、全英女子オープンには16人。海外メジャーに日本人選手が大挙出場するのは、もはや当たり前になりましたが、岡本さんは解説をしていてどうお感じになりましたか? (匿名希望・55歳・HC12)


7月の全米女子オープンではハワイ出身のアリセン・コープス選手(フィリピン×韓国系の25歳)、8月の全英女子オープンでは同じくアジア系のリリア・ブ選手(ベトナム系の25歳)が勝ちました。

コープス選手は昨年ツアーデビューしたばかりでツアー初優勝。

ブ選手は今年2月にツアー初優勝し、4月のシェブロン選手権でのメジャー初優勝に続いての勝利で一気にロレックス世界ランキングの頂点に駆け上がりました。

エビアン選手権を制したセリーヌ・ブティエ選手(29歳)もタイ人の両親を持つフランス国籍ですから、女子プロゴルフ界はアジアンパワー全開の様相を示していて、日本の選手が大挙してきても不思議はありません。

世界各地で地区予選が開催されるようになったことや、日本をはじめ各ツアーに世界ランキングの対象ポイントが加算されるようになった点が、日本ツアーの選手にメジャー大会への門戸を広げていると言えるでしょう。

また、全英女子オープンの資格カテゴリーには、「開催8週間前時点での日本女子プロゴルフツアー今年度ランキング上位3名」と「開催8週間前の日本国内トーナメントの上位2名」に出場権が与えられるため、資格に該当した穴井詩、岩井明愛、吉田優利、岩井千怜、木村彩子が出場できました。

大勢の日本人選手が、全米や全英のフィールドで毎年のように活躍する──日本国内のゴルフレベルは、その段階にまで進化しているでしょうか?

今年は畑岡奈紗選手が全米女子オープンを最終日最終組でプレーしましたし、全英女子オープンに挑戦した16人の日本人選手のうち10人が予選通過しました。

全米、全英女子オープンの決勝ラウンドで、日本人同士が同じ組でプレーするシーンがあり、今後も珍しいシーンではなくなっていくのだと思います。

ただ、もう少し時間が必要かなとも感じました。

日本ツアーで主役を演じている彼女たちも、メジャーの舞台ではそうはいかないとわたしの目には見えました。

解説席で今回の全英女子オープンを見ていて、もっとも印象に残ったのは、コースセッティングの妙というか奥深さ、選手たちを刺激し誘う設定の意図の面白さでした。

たとえば今回の全英女子オープンが行われたウォルトンヒースのフェアウェイは、平均して長さ12ミリの刈り高にそろえてあるということでした。

この長さは全米女子オープンが開催されたペブルビーチとは大きく違います。

地面もあまり硬くないので、ティーショットのランはそれほど出ないのではないか。

そのフェアウェイの右側はティーからグリーンに向かって順方向に刈り、左側は逆目になるように刈ってあるホールがありました。

逆目だとヘッドが抜けにくく打ちにくいけれど、右の順目側に飛んだティーショットは芝目に導かれ吸い込まれるように壁の高いポットバンカーが配してある。

10番パー4、3日目は289ヤードのセッティングで1オンを誘い、最終日はティーを後方に移し347ヤードの設定に戻した。

あと、ホールによって若干変わるグリーンの硬さによって、軟らかく止めることができるホールではエッジから3ヤードのギリギリの場所にカップを切ったり、硬めのホールはそこまで厳しくしていなかったりもあったと思います。

このように、18ホールの隅々にまでセッティングする人間の意図が感じられる仕掛けが施されていました。

それは、オトナの顔をしたコースと言えました。

そこへ風が吹く、急激に気温が下がり雨も降る。

相当な経験者でなければ対応が非常に難しくなる。

見ていて久しぶりに「実際にコースに立ってみたい!」と感じさせてくれました。

今年の全米女子オープンではコ・ジンヨンやレキシー・トンプソンなど世界ランク上位の選手が次々と予選で姿を消し、全英女子オープンでも似たような傾向が見受けられました。

これは、コースに対抗すべく力を尽くした実力者の技がひょっとして裏目に出たから? なんて考えたりもします。

ゴルフは経験を積みそこから得た知恵を武器に戦う。

日本の若き挑戦者たちが、こうした輝かしくも憎らしい舞台を数多く経験し、堂々と打ち破るシーンをこれから期待したいと思いました。

「コースからの声を聞けるようになると、違う景色が見えてきますよ」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2023年9月12日号より

アヤコさんの著書『本番に強くなる!アヤコ流』好評発売中!