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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.776「ペブルビーチを回るチャンスがなかったわけではないのですが…」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


手に汗握って見守った全米女子オープン。畑岡選手のリベンジは惜しくも実りませんでしたが、古江選手など史上最多22人出場となった日本勢の戦いぶりは、岡本さんの目にどう映ったのでしょうか?(匿名希望・54歳)


単独トップで最終日をスタートした畑岡奈紗選手には、多くのファンの方々同様、解説席に座っていたわたしも一球ごとに力が入っていました。

残念なのはもちろんですが、一昨年のプレーオフといい、今回の最終日首位スタートといい、確実にチャンスには近づいています。

また、ラウンドを終えた直後にもかかわらず

「この悔しさを忘れずに、また明日から次を目指して頑張っていきたい」

と、インタビューに答えてくれた畑岡選手の姿には心からのねぎらいの気持ちと頼もしさを感じました。

この姿勢があるなら必ず、近いうちに結果は伴ってくると思うからです。

それにしても舞台となったペブルビーチのタフさと美しさには何度も目を奪われました。

全米ゴルフ協会(USGA)が主催する公式戦の舞台には、主に東海岸や中西部にある歴史と伝統を誇る格式高いコースが選ばれてきましたが、西海岸とはいえ1919年開場のペブルビーチGLが初めてというのは不思議な気もします。


男子の全米オープンではお馴染みのコースであり、ベストコース100でも必ず上位にランクされ、国民的歌手でありハリウッドスターでもあったビング・クロスビーが創設したプロアマトーナメントは、クロスビー死後の1986年からはAT&Tナショナルプロアマと名称を変え毎年2月の風物詩として続いています。

太平洋が洗う岸壁や、海に突き出た岬の先に小さく張り付いたグリーンなど、幻想的ともいえるコースの美しさに加えて、海風がボールの行方をもてあそぶ難しさ、自然の過酷さなどさまざまな表情を見せてくれる。

ゴルファーなら一度はプレーしてみたいと思う憧れのコースがペブルビーチ。

今年でツアーを引退すると表明したミッシェル・ウィ選手の最後のホールアウトも話題になりましたが、彼女がここを別れの場所に選んだのも、ペブルビーチだったからなのかとわたしは思いました。

わたしも80年代初めに主戦場をアメリカLPGAツアーと決め、それから1993年まで、日本との間を行ったり来たりしながら、アメリカを本拠にして各地を転戦してきました。

その間、ペブルビーチをラウンドするチャンスがなかったわけではありませんでした。

「アヤコの名前でスタート取っておいてあげるよ」なんて誘いは何度かあったんですが、なぜかペブルビーチは、アメリカに十年以上も住んでいたのに、一度もプレーする機会がないままになってるのですよね……。

それはともかく、コースとしては特別長いわけでもないし、男子と女子で全長は違いますが、わたしならこのホールはこう攻める、といったイメージを描いて、選手たちの実際のプレーとの比較を楽しんだりして。

今回の全米女子オープンは、そういう意味でも内容豊富なスリリングな観戦解説になったと思います。

ゴルフがこの国に伝えられて以来、すでに100年以上がたっています。

すべてアメリカが素晴らしいとは言いません。

ですが、日本らしいゴルフ文化がこれまでにきちんと築かれ、今もしっかりと育まれ続けているかと問われると、どうでしょうか。

今年の全米女子オープンの本戦にはプロアマ合わせて、22名の若き日本人プレーヤーがエントリーしました。

その事実は確かにこの国のゴルフが進化していることを語っています。

しかし、これからはもっとゴルフの中身を豊かにできないか、と思ってみたりもしています。

「一朝一夕で達成しないからこそ“いま”が大事なのです」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2023年8月8日号より

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