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【名手の名言】倉本昌弘「プレッシャーを楽しみたい」

レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は、AONと並び日本のゴルフ界を牽引してきた倉本昌弘の言葉を2つご紹介!

1981年にプロデビューし、ゴルフ界に新風を巻き起こした倉本


プレッシャーを楽しみたい

倉本昌弘


「プレッシャーを楽しみたい」

今でこそ、さまざまなジャンルのアスリートが口にするようになった言葉で、最近ではサッカーW杯で注目を浴びた三笘薫も同様の発言をしているが、ゴルフ界では、1980年代に一時代を築いた倉本昌弘が、いち早くこの言葉を発していた。

我々からすると、プレッシャーは苦しいもの。狭いホールのティーショットしかり、外したくない2mのボギーパットしかり、大勢が見守るコンペの第1打しかり……。楽しむどころか、自分で自分を追い込み、いつものストロークができなくなってしまう。

プロの試合の優勝を争う緊迫した場面ならなおさら。1打にかかるプレッシャーは想像するに余りある。

それを倉本は「楽しみたい」と表現したのだ。試合に“楽しむ”という概念を持ち込んだのも倉本世代からだった。青木功、尾崎将司、中嶋常幸のAON時代に、倉本を頂点とした学生ゴルフ部出身のプロが華やかに参戦してきたときであった。

この倉本の言葉には裏にこんな思いがあったようだ。

「プレッシャーがかかるということは、優勝争いしている位置にいるということ。逆にいえば、その位置にいなければ重圧も感じないわけで、自分はいつもその位置にいることを楽しんでいるということだ」

倉本のプレースタイルは決断が早く、爽やかで、「楽しむ」という言葉がよくマッチしていた。

我々一般ゴルファーも、楽しむために訪れているゴルフ場で、わざわざ自分を苦しめる必要はない。舞台は違えど、楽しむという気持ちだけは真似できよう。


イップスは試合でしか治せない

倉本昌弘


いったいどれだけの名手が、イップスという病でトーナメントの表舞台から消えていったことか。

倉本もまた、イップスという難病にとりつかれた一人である。ベテラン記者の話では、倉本は次のようなことを語っていたという。

この病気は治らない、だから上手くつきあっていくしかない。まずはそれを覚悟して、ボールは打たず、自分のゴルフを考え、真正面から向き合うことが大切だ。

そうして自分のゴルフのいいところは何かを知って、自信を持つこと。そうしないといつまでも治らない。

そしてそれは試合でしか治せない。練習でいくらボールを打っても治せない。人と比べると、自分の弱点と比べることになる。自分の長所で戦うしかない。

しかし、そこまで理解するには、長い時間がかかった、と倉本はしみじみ語ったという。

■倉本昌弘(1955年~)

くらもと・まさひろ。広島県出身。ジュニア時代から天才として名を馳せ、高校3年のときに日本ジュニアで優勝。日本大学ゴルフ部時代は日本学生4連覇をはじめ、アマチュアタイトルをほぼすべて獲得した。日本アマ3勝。81年、2度目の挑戦でプロテスト合格、同年は年間5勝で賞金ランク2位と活躍。その後も勝ち星を重ね、ツアー通算30勝。永久シードも手に入れている。82年の全英オープンでは日本人最高4位。シニア入り後も強さを発揮し、10年と14年の2度、シニア賞金王に輝いている。