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なぜ? 岡山から強いプロがぞくぞく誕生<後編>「報われるぐらい努力をすればいい」岡山理大付属高に潜入

渋野日向子を筆頭に、男子の若手注目株・久常涼や、ルーキーシーズンに優勝した尾関彩美悠など、近年、岡山から強い選手がぞくぞくと誕生している。そこで今回は、岡山のジュニア事情を探ってみることに。後編では、2022年の中国ジュニアで大活躍した岡山理科大学付属高校に潜入。

TEXT/Masato Ideshima PHOTO/Takanori Miki

今年の8月、大学敷地内に新しくゴルフ練習施設が完成した。附属高校ゴルフ部の利用のほか、大学のゴルフ授業でも使用している

>>前編はこちら

作陽には負けられん!
次のプロ予備軍はココにいる

岡山県で作陽高校に次いで勢いがあるのが岡山理科大学附属高校だ。2021年のプロテストで合格した桑木志帆は同校ゴルフ部出身。また、今年の中国ジュニア選手権では優勝した青山ゆずゆさんを筆頭に、15位までに6人が入る成績を収めている。岡山で今最も勢いがあるゴルフ部なのだ。

<2022中国ジュニア選手権成績>

1位青山ゆずゆ(1年)±0
3位タイ祇園美衣菜(1年)+5
7位タイ中村有希(2年)+6
森愉生(3年)+6
13位タイ佐川佳帆(2年)+9
15位川上知夏(3年)+10

高校1年で岡山ジュニア制覇! 青山ゆずゆさんを雑巾王子が直撃

  • 雑巾王子こと武市悦宏プロが、全国の有望なジュニアゴルファーのもとを訪れ、大人ゴルファーにも役に立つゴルフのヒントを探る当連載。今回の王女候補は愛媛県出身、岡山理科大学附属高等学校1年の青山ゆずゆさん。安定感抜群のショットで中国地区を制した注目株。そのスウィングの特徴とは!? 武市が迫る。 今回の王女候補 青山 ゆずゆさん あおやま・ゆずゆ……

そんな岡山理科大附属高校ゴルフ部で監督を務めるのは山岸優子さん。作陽高校の田淵監督と同じ同志社大学ゴルフ部の出身で、同校に指導者がほしいと相談を受けたのをきっかけに監督を引き受けることになった。岡山理科大附属高校には元々男子ゴルフ部があったが、今は休部状態で、現在の部員は女子のみの12名。3年生の中の1人はプロテストの最終を受けるほどの実力だ。創部5年でなぜここまでの結果を残せるようになったのだろうか? そこには「上を目指す」という基本方針がある。

「目標は全国に行って、全国の上位を目指すこと。だから、中国地区でギリギリなんかじゃダメだよねっていうのは常に話しています」と山岸監督。「入部するためには一般的な出願だけでは入れません。人柄を見させてもらうため、必ず事前に面接をさせていただきます。また、いわゆるスカウトでの特待生も取っていて、今は3名で来年は2名が入部する予定です。でも、ゴルフ初心者の子もいますよ。中学で別の部活をしていたんだけど、どうしてもゴルフ部でやりたいという子が今は2名います。最初は大丈夫かな? と思っていましたが、本人がやるっていうので、じゃあ厳しい世界だけど飛び込んでおいでという感じで入部してもらいました。最初はルールもわからないですし、すごいスコアでしたけど、なんとかなるものなんだなって思っています」

PM3:00 ランニングで到着

ランニングは毎日の基本。時間を切って行うことを重視しており、時には海に行ってトレーニングを行うこともある。体力作りが強さのベースになっている

PM3:45まで 体幹トレーニング

1日おきのペースで体幹トレーニングを取り入れている。基礎的な体力を作ることで試合の多い夏場などにバテないよう、そしてケガをしないよう努めている

PM5:30頃(日没)まで 打撃&小技の練習

整備された練習環境をどう利用するかは自分次第。高い意識が自然に植え付けられる

やるかやらないかは自分の判断で決めさせる

入部するには少しハードルが高いようにも感じる岡山理科大附属高校ゴルフ部。だが、山岸監督が重視しているのは人柄と熱意。そして、入部希望の生徒たちを見極める際に大事にしているのが“目”だ。

「ウチに入る子はある程度の成績とやる気がないとダメ。その際に私は目がいい子を取るようにしています。目が生きている子。言葉でやる気がありますと言っていても目が死んでいる子は取りませんね。もちろんご両親とも話をします。部活動は強制的に押し付けることはなくて、基本的にはオール自由。例えば今日は練習に参加できませんという場合も事前に連絡があればOKです。でも、練習に参加するとなったら全部のメニューをやってもらうことにしています。そこは選べないんです。(メニューの中の)1つを外してくださいっていうのはなしというルールにしています。やるからにはきちんとする。やるかやらないかをはっきり自分で決めなさいっていうことです」

山岸監督は高校生という難しい時期を大切に考えている。人間形成をする意味での重要な時期であり、だからこそ厳しく接する時もあると言う。

「私はスコアについては一切怒りません。それよりも時間を守らなかったときとか、食べ方が汚いとか、生活面はよく注意しますね。ゴルフはどうしても大人と行動を共にすることが多いですし、そこで敬語が使えないとかはナシかと。高校生はもう子どもじゃないので。あと、ゴルフに関することでいえば体作りを重視しています。ケガをしてしまってはリハビリに時間がかかってしまうので、トレーニングはマストです。毎日走るのは基本で、体幹トレーニングは1日おきくらいで取り入れています。食事の管理もしっかり行っています」

石川県出身の山岸監督にとって岡山県という土地はゴルフ、特にジュニアの環境が恵まれていると話す。天候が安定していることに加えて、ゴルフ場や練習場のサポートもしっかりしている点に羨ましさすら感じるとのこと。ただ、その環境を生かすも生かさないも自分次第だという。

「ゴルフは考えるスポーツです。何かの壁にぶち当たったら、それをどう乗り越えるかを考え、チャレンジする。自分にとって何が必要で、何が足りないかを考えて、探す。探す力がゴルフの上達には必要です。努力は報われる人と報われない人がいますが、報われるくらい努力すればいいんじゃないと生徒たちにはよく話しています」

「これは作陽、さすがにやらんじゃろ!」

写真撮影一つを取っても、作陽より上を目指すという心意気を見せた部員たち。こだわりの撮影はTAKE3まで続くことに……。

Take1 これじゃ、普通じゃね!?

最初はきれいに並んで、にっこりポーズをとってくれたが、何やらしっくりこない様子で再撮を申し出た

Take2 上手く決まらん……

チームワークでタイミングを計るものの、なかなか決まらず

Take3 テッペン取ったゾ!

挑戦して失敗して……を繰り返し、やっと納得の一枚が!これぞ岡山理科大附属高校の精神だ!

「人気選手の後を追うようにジュニアの層が厚くなってきました」

07年に岡山県の東児が丘マリンヒルズGCで行われたマンシングウェアオープンKSBカップで当時高校1年生たった石川遼が日本男子ツアー史上最年少優勝。岡山ではこの出来事をきっかけに、ジュニアゴルフの熱が一気に高まったという。「ジュニア会員が増えることで、力のある選手も比例して増えてきました。ここ数年、その選手層の厚さが岡山にはあると感じています」(岡山ゴルフ協会・小川慎二事務局長)。渋野日向子の登場や尾関彩美悠の快進撃は偶然ではなく、ゴルフ場の協力のもとで発展させてきたジュニア育成事業が下支えになっている。ゴルフを子どもにさせるには“高い習い事”ではあるが、それを「安い料金でリピートできることが大切です」(同氏)

ハーフ500円のゴルフ場も!

高梁市にあるパインツリーGCのジュニア料金は1ラウンド全日1000円(税込)で、ハーフラウンドは500円(税込)で回れる。「ジュニア育成委員会があり、練習の機会を提供するには低料金に抑える必要があると理事会で決めました」(副支配人・川合秀幸さん)。岡山市内から車で15分という抜群の立地の岡山CC桃の郷Cでは、ジュニアに限り平日の薄暮プレー(ハーフラウンド)を1600円(税込)で提供。「高校総体の会場となることが多いので、練習に開放しています」(総務部・大枝直美さん)。放課後に回れる薄暮ハーフはジュニアにとって利用しやすいが、岡山の隣の広島、兵庫のジュニア料金と比べてみても、岡山は安価だった。

月刊ゴルフダイジェスト2023年1月号より