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【イザワの法則】Vol.21「切り返しの“間”はゆったりが正解なのか?」

世界も認めた美スウィンガー・伊澤利光が、ゴルフで大切にしていることを語る連載「イザワの法則」第21回。今回は、スウィングで大事と言われる「間」についての持論を語ってもらった

TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)

前回のお話はこちら

間を作るにはある程度の柔軟性が必要

いわゆる、切り返しの「間」が必要か、必要でないかと聞かれると、「どちらとも言えない」と答えるしかありません。スウィングのタイプによって、一旦静止するような、明確な「間」がある人もいれば、ぱっと見ではほとんど「間」をとらずに、素早く切り返している人もいて、「間がとれているから飛距離が出る」とか、「間がないから曲がる」とは、一概には言えないからです。それに、たっぷり間をとっているスウィングの人に、そのことについて聞いてみたら、「自分ではすぐに切り返しているつもり」というケースもあるので、ますますどっちなのかわからなくなるというワケです。


ただひとつ言えることは、体の柔軟性とか、肩の可動域の広さがないと、たっぷり間をとったスウィングはできないということです。松山(英樹)くんは、トッププロの中では割とゆったり間をとるほうですが、あれは勢いをつけて上げなくてもしっかり体を回せる柔軟性があるという証拠です。逆に、ジョン・ラームはトップが小さく、切り返しの間をほとんどとりませんが、おそらく、体のどこかの柔軟性に問題をかかえていると思います。(※編集部注:ラームは、トップでの腰の回転角度が約30度で、これはPGAツアー平均の約45度に比べかなり少ない。この理由について、出生時に起因する右足首の可動域不足があり、大きなトップを支えきれなかったと、ラーム本人が明かしている)

自分のリズムで振ったとき
自然に生まれる「間」を大事にしたい

私自身は柔軟性がないタイプなので、たっぷりと間をとって振るのは難しいです。トップが浅くなりがちなところを、テークバックで勢いをつけて、サッと上げることで補っている感じなので、クラブがいちばん高いところに上がったときには、もう下半身は切り返していると思います。とはいえ、自分の中では間の感覚がきちんとあって、それが早くなったりすると、やっぱり「ちゃんと」ミスが出ますけどね(笑)。

プロでも、苦手なホールだったり、池だとかOBだとか風だとか、何か気になることがあったりすると、間がとれずに打ち急いでしまうことはよくあります。心配なときほど「早く結果が見たい」という気持ちは、アマチュアとあまり変わらないかもしれません。それで1回失敗して、打ち直しとかになると、もうその時点では気持ちが開き直れていますから、完璧な間でいいショットが打てることが多いです。これも、アマチュアと一緒じゃないでしょうか。

たまに、間をとりたくて「ゆっくり振る」というアマチュアがいますが、ゆっくり振って、仮に間がとれたとしても、抱えている問題が必ずしも改善するとは限りません。たとえば、切り返しがアウト‐インでスライスの人は、ゆっくり振ってもアウト‐インの場合が多いので、「間がとれればスライスも直る」とは考えないほうがいいでしょう。ゆっくり振るよりは、自分がいちばん気持ちよく振れるリズムを探すことが大事です。「イチッ、ニッ」が心地よい人もいれば、「イチ、ニーの、サンッ」が心地よい人もいますから、そのときに自然に生まれる間の感覚を覚えておいて、いつも同じ間で振るようにすると、球筋は安定するはずです。

「ゆったり間をとりたいのであれば
柔軟性を高める努力が必要」

柔軟性が低い人はテークバックを素早く上げてみよう

体の柔軟性が低い人ほど、テークバックをゆっくり上げるとトップが浅くなってしまう。逆に、柔軟性が高い人が、テークバックを速く上げると、トップが大きくなりすぎる。柔軟性がそれほど高くないという伊澤プロは、素早くテークバックすることでクラブを高い位置まで上げている

伊澤利光

1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中

月刊ゴルフダイジェスト2022年8月号より