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【ゴルフは“なで肩”がいい!】<後編>お手本は西郷真央! 肩甲骨を下げるコツとは?

ゴルフのスウィングでは、肩甲骨が上がった「いかり肩」よりも、肩甲骨が下がった「なで肩」の状態が、腕をスムーズに動かすうえで重要だという。ではどのようにすれば理想的な「なで肩」姿勢を作ることができるのか。横田英治プロに話を聞いた。

TEXT/Kenji Oba PHOTO/Hiroaki Arihara、Hiroyuki Okazawa THANKS/明治ゴルフセンター、ヤマハレディースオープン葛城、ダイキンオーキッドレディス

解説/横田英治

プロゴルファー、アマチュア問わず、わかりやすいレッスンが人気。女子プロの岸部桃子を指導中。自らが主宰するゴルファーが集まる総合サロン「クラブハウス」が5月に千葉県にオープンする

>>なぜ「なで肩」がいい?

  • ゴルフのスウィングは腕を大きく振るが、そのために重要なのが「肩甲骨」の動き。そして肩甲骨をスムーズに動かすには、「なで肩」が理想だという。ではそもそも「なで肩」とはどういう状態なのか。「いかり肩」の人はどうすればいいのか。詳しく話を聞いてみた。 TEXT/Kenji Oba PHOTO/Hiroaki Arihara、Hiroyuki Okazawa THANKS/ヤマハレディースオープン……

絶好調の西郷真央選手は
理想的な“なで肩”スウィング

「肩甲骨が下がっているといえば、この選手でしょう」と横田英治プロが挙げるのが、今季すでにツアー3勝(4月6日現在)を挙げている、絶好調の西郷真央選手だ。

「スウィングの大きなメカニズムに軸キープ、回転運動、体重移動の3つがあります。この要素に大きく影響するのが、股関節と肩関節という2つの球関節(可動域が広い関節)です。そして主に回転運動に影響するのが肩関節ですが、西郷選手のように肩甲骨の下がった“なで肩”姿勢は、ぜひ参考にしてもらいたいです」

横田プロによれば西郷選手は、理想的な“なで肩”スウィングだという。肩が上がらないことで上半身が深く捻転するため、手打ちにならず、スウィング軌道が安定し、ヘッドスピードも再現性も飛躍的に高まる。その結果、飛距離もスコアも伸びるのだ。


「とくに回転運動が苦手なアマチュアは、西郷選手のスウィングを見習うべきでしょう」

では、具体的に肩甲骨を下げるには、どうすればいいのか? 横田プロによれば、もっとも意識してほしいのが、グリッププレッシャーだという。

「人間の体で最も器用で繊細な部位である手のセンサーがいちばん大事です。ここに力が入るから肩甲骨が上がり、上半身の動きが鈍くなるのです。西郷選手のアドレスを見るとわかりますが、グリップを握るどころか、持つ感じすらありません。ライ角通りにセットし、クラブを下から支えているだけ。まずはこのアドレスの真似から始めてもいいくらいです」

【アドレス】
クラブは握らずただ支えるだけ

クラブは下から支えるだけ。クラブを落とさない範囲での必要最小限のグリッププレッシャーが理想的だ。この力感のなさは“緩み”ではない。リラック状態が腕やクラブを自由自在に操る技術のベースになっている

【トップ】軸がブレずに深く捻転
肩甲骨の下がったアドレスなら肩周りはスムーズに動く。西郷選手のトップは捻転が深く、それでいて軸がまったくブレていない。筋肉の緊張がないからこそ、肩がここまで回るのだ

【ダウンスウィング】インサイドからクラブが下りる

上半身が回れば、クラブは自然とインサイドに下りてくる。インサイドからヘッドが入れば、ボールはつかまりやすくなる。西郷選手のねじれない球筋はここから生まれるのだ

【インパクト】低く長いフォローでボールが曲がらない

肩甲骨が下がった状態でインパクトができるということは力みがない証し。手元が浮かないため、再現性が高く、低く長いフォローが可能だ

簡単に言えば“脱力しろ”ということだが、アマチュアはここにも注意が必要。というのも脱力というと、緩んでしまう人がほとんどだからだ。そこでこんなチェック方法を教えてくれた。

「台の上にクラブヘッドを乗せたまま、横へスライドさせます。台上からヘッドが外れたとき、ヘッドが下へ落ちてしまうのは緩みです。プロや上級者は台の高さでヘッドをキープできます。なぜならクラブの重さを感じながら、ちゃんと支えられているからです」

Point 1
力みがなければ肩甲骨が下がる

力めば肩甲骨は上がり、脱力すれば肩甲骨は下がる。いわゆる肩ひじが張った硬いアドレスは、アマチュアに多いといえる。肩甲骨が上がれば、腕は自由に動かせない。まずは脱力することでなで肩を目指そう

Point 2
リラックス状態なら肩も深く回る

力めば力むほど、肩甲骨は上がり、肩が回らなくなる。その結果、軸をズラしたり(頭が動く)、ひじを曲げたりしてトップを作るしかなくなる。まずはグリッププレッシャーを緩め、肩甲骨を下げよう

Point 3
肩が回らないと手打ちになってしまう

アマチュアに多いアウトサイドイン軌道は、体が回らない(肩が深く捻転しない)から、仕方なく手で上げ下げするしかない結果。肩甲骨が上がった状態では肩は回らず、クラブはアウトサイドにしか下りないのだ

Point 4
脱力できた結果再現性も高まる

肩甲骨が上がる、つまり力んだ状態では、スウィング軌道は安定せず、打点もバラバラになってしまう。肩甲骨を下げるだけでミート率は上がり、再現性も高まる。その結果、飛距離もスコアも伸びるのだ

練習前&ラウンド前におすすめ
肩甲骨エクサイサイズ

肩甲骨を下げて使うのが大事なのはわかったが、横田プロは「意識して下げようとするのは、むしろ逆効果です」と指摘する。

「骨は単体で動くわけではなく、周囲の筋肉や腱などと連動して動きます。そのため関節を下げるとか、固定するという意識は余計な筋肉の緊張を生み、自然な動きを阻害する可能性があります」

そのうえでまず意識したいのは、自分の肩甲骨がどうなっているのか、ということだ。自分のスウィングを西郷選手や好きなプロと比較してみるといいだろう。一流の選手であれば、例外なく肩甲骨は下がっているという。そして横田プロはこう教えてくれた。

「左わきにヘッドカバーを挟んでボールを打ってみてください。これで自分の肩甲骨の位置が簡単にチェックできます。ヘッドカバーが落ちないように打てれば“なで型スウィングに近いです。力んだり、手打ちの人は、左わきからヘッドカバーが落ちてしまうはず。つまり肩甲骨が上がっているのです。これは普段の練習ドリルとしてもおすすめです」

あなたの肩甲骨は下がっている?
簡単セルフチェック法

左わきに挟んだヘッドカバーが落ちなければOK
肩甲骨の状態、位置が簡単にチェックできるテスト。ヘッドカバーがなければ、タオルでもいいので左わきに挟み、落とさないように振る。力でわきを締めるのはNGだ。最初はハーフスウィングから始め、落とさず振れるようになったら徐々にスウィングを大きくしていく。脱力、手打ちの防止、リズム改善など練習ドリルとしても有効。プロも必ずやるメニューのひとつだ

またスタート前のウォームアップとして、肩甲骨に絞ったエクササイズも教えてくれた(詳細は下記)。

「20回を目安にやってみてください。これをやれば体が温まりますから、肩甲骨の動きが格段によくなります。ラウンド前は球を打つより、肩甲骨の動きをよくすることを優先しましょう」

【肩甲骨ウォームアップ1】
胸の高さで前後に押し引き

クラブを前後に動かすことで肩甲骨を開いて閉じるエクササイズ。クラブを持つ手の幅を狭くすると難度は下がり、広げると難度が上がる。自分の柔軟性に合わせて設定しよう

【肩甲骨ウォームアップ2】
後頭部から真上に上げ下げ

クラブを肩で担ぐようにシャフトを頭の真後ろにセットしたら、その位置で両手を上げ下げする。手が前に傾くと効果は薄れるので、できるだけ背面で上げ下げする

【肩甲骨ウォームアップ3】
胸の前で左右に90度回転

肩甲骨をねじるように回旋させるエクササイズ。真横に構えたクラブのヘッドを上に90度回し、そこから真横に戻して今度はヘッドを下へ90度回していく流れ。ねじれがキツイ場合、手の幅を狭くする

このウォームアップは、プロよりもアマチュアに効果絶大だと言う。というのもプロや上級者は、普段からトレーニングや体のケアをしており、そこまで変わることはないが、普段何もせず凝り固まったアマチュアの肩甲骨なら動きが劇的に改善されるからだ。

「筋温を上げることで肩甲骨周りの筋肉は柔らかくなります。柔らかい=肩甲骨が下がり、硬い=肩甲骨が上がるのです。ウォームアップをするだけで、大きな効果が期待できるはずです。また肩甲骨と鎖骨は連動していますから、鎖骨下から胸にかけて、手でもむようにマッサージするだけでも動きやすさが変わります。ぜひ試してください」

週刊ゴルフダイジェスト2022年4月26日号より