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Dr.クォンの反力打法 Vol.6 右は前、左は後ろ。前後の力が軸回転を生む

地面反力が生み出す回転力には、①体の正面から見た「前後軸の回転」、②頭の上から見た「縦軸の回転」、③飛球線後方から見た「飛球線軸の回転」の3つがあるとクォン教授。今回は②の「縦軸の回転」について考えてみよう。

【語り手/クォン教授】
ヤン・フー・クォン。テキサス女子大学教授。専門はバイオメカニクス。生体力学的に理に適ったスウィングを研究。教え子にタイガーの元コーチ、クリス・コモらがいる

【聞き手/吉田洋一郎プロ】
よしだ・ひろいちろう。D・レッドベターをはじめ、世界の名だたるコーチのもとを訪れ、最新理論を直接吸収。日々探究・研鑽に余念がないゴルフスウィング研究家

前回のお話はこちら

吉田 「縦軸の回転」というと、脳天からズボッと串が刺さっていて、それをクルッと回す感覚でしょうか。

クォン 面白いたとえだね(笑)。ではどうすれば、その回転を速めることができるだろう?

吉田 串そのものを、速く回すしかないですね。

クォン 串そのものを回すというのは、以前話した「内力」の役割。体幹など筋力を鍛えて、体の内側の力を使うやり方だ。

吉田 我々が目指すのは、地面反力という「外力」の力を借りて効率よく飛ばすことでしたね。

クォン そう。我々の体は単純な棒ではなく、2本の足がついている。それを利用しない手はない。

吉田 足を踏み込んで生じる反力が、この縦軸の回転にどう関わるのでしょうか?

クォン 日本の伝統的な玩具に、竹とんぼがあるね。あれを回すとき、片手で棒をつまんで回すだけではうまく飛ばすことができない。

吉田 勢いよく回すには、両手のひらを前後にズラすようにしますね。

クォン そう、前後! 右手を前、左手を後ろに動かすことで、棒に強い回転力が生じる。

吉田 たしかに前後の動きが回転に変わっています!

クォン スウィングのときも実はこれと同じことが起こっているんだ。地面反力の向きと強さを可視化できる装置を使うと、切り返しで反力のベクトル(矢印)は、右足は前(お腹側)、左足は後ろ(背中側)に伸びていることがわかる。


竹とんぼを飛ばすとき、右手を前、左手を後ろに動かすと軸が回転する。スウィングでも、右足を後ろに蹴ることで前向きの反力が生じ、左足の力を前向きに加えることで後ろ向きの反力が生じる。この2つの反力が、縦軸の鋭い回転を助長する

吉田 本当だ! 右足の反力が前向きということは、右足は後ろ向きに蹴り、反対に左足は前向きに力を加えるようにすると、より回転力が高められるということですね。

クォン そのとおり。ただ、左足が生むことのできる縦軸の回転力は、右足に比べると実は小さい。その代わり、前々回話したように、左足は「前後軸」の回転に大きく寄与している。左足の地面への踏み込みで前後軸の回転力を高め、右足の背中側への蹴りで縦軸の回転力を高める。この組み合わせが、最大加速を生むというわけだ。

地面反力を可視化すると、切り返しで右足は前、左足は後ろ向きにベクトルが伸びている。これが半時計回りの回転力を生む。一見すると、右足の反力FRのほうが左足の反力FLよりも小さいが、モーメントアーム(d)が長くなる関係で、右足のほうが回転力のアップに寄与する割合が大きくなる

吉田 いままで感覚でやってきたことが、生体力学ではこんなふうに説明できるわけですね。では、実際に足を踏み込んだり蹴ったりするのは、どのタイミングで行うのが良いのでしょうか?

クォン それは次回以降説明することにしよう。

Vol.3へ続く | 反力打法TOP

Dr. クォン&吉田洋一郎
『驚異の反力打法』

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