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【通勤GD】迷ったとき、ユハラに帰れ! Vol.25 「フェース開閉」だけでプラスマイナス3ヤード 湯原信光 ゴルフダイジェストWEB

フックやスライスを狙って打つには「アドレスでのフェースの向きを変えるだけでいい」と湯原信光。では、コースで曲がる球をコントロールして使うにはどうしたらいいのか。聞いていくと「フックとスライスの長所を知れば、球を曲げるだけではないゴルフの姿だって得られる」という。

前回、第24話のお話し

【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。

【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。

GD 通常のアドレスをしたうえで、クラブフェースを閉じたり、開いたり握りなおしてフック、スライスを打ち分けるというのが前回の話でした。ボールの位置については、どのように考えればいいのでしょうか。

湯原 ボールの位置は、通常のショットを打つときと同じ場所のままでOKです。

GD つまり、通常のボールの位置が真ん中だろうが左寄りだろうが、その位置のままでよくて、特別なことはやらないということですね。

ボール位置を変えて、フック、スライスを狙い打つのは危険

湯原 ええ。フェースを閉じたり、開いたりして球筋の変化を見るのですから、ボールの位置まで一緒に変化させてしまったら、基準がなくなってしまうからです。いつもと同じボールの位置というのが、その人にとっての、ひとつの基準になると思ってください。

GD 前回教わった「マットを使ったフック打ちの練習」をおさらいさせてください。

湯原 練習マットのラインに対してスクェアに立って、フェース面だけを少し左に向けて(閉じて)打ちます。すると、ボールは左に飛び出して、さらに左へ曲がる球筋になるはずです。そのときの曲がり具合に応じて体の向きを少しずつ右に向けてやれば、ボールが右に飛び出してセンターに戻ってくる球筋になるはずです。

GD このとき、体を右に向けてもボールの位置が変わらないということはつまり…?

いつものボールを中心に、回る込むように体の向きを変える

湯原 ボールの位置を中心点と考えて、ボールを回り込むように体の向きを変えるんです。普通にアドレスした状態から、その場でただ右を向くだけだと、(左足がボールに近くなり、右足がボールに遠くなって)相対的にボールの位置はスタンスの左寄りになってしまいます。これではダメです。ボールの位置はいつも同じ場所のまま変わらない、円の中心のようなイメージです。両肩と腕が織り成す三角形を変えないようにして右を向けば、体とボールの位置関係を崩さずに自然と構えることができるでしょう。

フックを打っために体の向きを変えるとき、その場で右を向いてしまうと、体とボールの距離が変わってしまう。「両肩、グリップ、ボールの位置関係を変えないようにすれば、体の向きを正しく変えることができます」

GD なるほど。それが「ボールを中心にして回り込む」ということなんですね。そのうえで、フェースの向きだけを閉じるんですね。反対にスライスを打つときは、やはりボールを中心に左へ回りこんで、フェースを開くわけですね。

湯原 そうです。単純に、その場で左を向いただけでは、ボール位置はスタンスの右寄りになってしまいますから、そうならないように、両肩、グリップ、ボールの位置関係は変化させないようにし、ましょう。

クラブの開閉で3ヤードの違いをアジャストできるようになる

GD 練習で、フック、スライスの打ち分けがある程度できるようになったら、それを実戦でどのように活用すればいいのでしょうか。

湯原 例えば、ピンまで153ヤードの状況だったとします。8Iでノーマルに打ったときの飛距離が150ヤードなら、あと3ヤード余計に打つために、ちょっとフックに打つという方法があります。ほんの少しロフトを立てて、ほんの少し右から打ち出すのです。ロフトが立ったぶんだけキャリーもランもノーマルより距離が出るのです。

GD たった3ヤードの違いをわずかなロフトの操作だけでアジャストできるんですか。ということはつまり、3ヤード短い147ヤードを狙うときは、反対にフェースをほんのちょっと開いてフェードを打っていけばアジャストできるというわけですね。

球筋を変化させて距離をアジャストさせる

湯原 はい。私たちプロは、ほとんど無意識に球筋を変化させて距離をアジャストしています。それを理論的に話せば……、フックを打つとき、フェースを左に向けるというのはロフトを立てるのと同じですから、打ち出し角が低くなって飛距離も出ます。反対にスライスを打つときは、フェースを開くのですから、ボールは高く飛び出してそのぶんだけ飛距離はロスします。

7Iでロフトを立てると6Iに近くなる

逆に開くと8Iにちかくなる

GD 例えば7Iを持ってロフトを立てれば、6Iに近くなるし、ロフトを開けば8Iに近くなると。

湯原 どちらにしてもスウィングが同じなら、クラブヘッドがボールに与える運動量も同じです。違うのは運動量を与える方向なのです。よく「スライスは止まるが、フックは止まらない」という人がいますけど、止まる、止まらないは、バックスピン量の問題であって、球筋の違いではないのです。

GD 7Iのロフトを立ててフックを打ったときと、6Iでロフトを開いてスライスを打ったときと、もしキャリーが同じで、さらにバックスピン量も同じなら、同じように同じ場所に止まるということですね。

湯原 そのとおりです。もちろん、同じ番手でフックとスライスを打ち比べてみれば、フックのほうが低い弾道になって止まりづらく、スライスのほうが高い弾道になって止まりやすいという違いは出ます。しかし、それは球の高さと落下角度の差であって、フック、スライスという球筋の違いで生まれたものではないのです。

GD 左が高くて、右に流れるグリーンに対して、スライスでピン筋に打っていけば、どんどんピンから離れていく止まらない球になってしまうし、逆にそんな場面では、フックで攻めたほうが止まりやすいというのは、容易に想像できますからね。

湯原 そういうメカニズムがわかっていれば、場面、場面に応じた球筋の使い分けができるのです。スライスで打ったほうが止まりやすいという場面に遭遇したとき、「でもスライスでは飛距離が落ちて届かないかもな」と思えば、1番手、あるいは2番手でも大きいクラブにして打っていけばいいのです。自分が意図しているフェースの向きと、それによって生まれるロフトの角度を考えてクラブをチョイスするのです。

曲けるといっても大袈裟にはやらない

GD 湯原プロのように、フックとスライスが打ち分けられるようになると、グリーンの傾斜に対応する球筋だけではなく、例えば左から吹いている風に対してフックでぶつけるとか、逆にスライスで風に乗せるとか、コース攻略のバリエーションが増えてゴルフの楽しみも広がると思います。そこで気をつけるべきことは何でしょうか?

湯原 何事によらず、大袈裟に、やり過ぎないようにすることが大事です。フックを打つときにフェースを左に向けて、そのぶんだけ体は右を向けますが、それは“ほんのちょっと”なのです。前回、私がフックとスライスを打つ写真を見てもらいましたが、その違いはほとんど分からないものでしたよね。

ほんのちょっとの調整に使う

GD 解説書きがなければ、どちらのスウィングがフックなのかスライスなのか判断がつきませんでした。

湯原 それぐらい微妙なものなのです。ところが、フックを打つというと、極端にインサイドアウトの軌道にして、フェースも被せて……と、ものすごく大袈裟にやらないとダメだと思い込んでいるアマチュアが少なくないんです。

「普通に打ったら届かないかも……でも1番手上げると大きすぎる」。そんなとき、球を曲げるメカニズムを知っていれば、ちょっとの距離の増減ができ、ゴルフの幅が広がる

GD スライスの場合も、やはりアウトサイドインなどを大袈裟に考えがちですね。

湯原 ほんのちょっとフェースの向きを変えて、その通り道も、ほんのちょっと変えているだけなので、写真ではその変化がほとんどわからないというのが実際のところです。意図的にボールを曲げる方法について話してきましたが、まとめると、フックを打つ場合…

球を曲げる練習のまとめ

①練習マットのラインに対し、普段どおりにストレートを打つつもりでアドレス。

②フェースをほんのちょっと左に向ける。

③フェースを左に向ける際、手首をひねったり、手首に角度をつけたりせず(グリップの握り方を変えず)、普段と同じようにグリップ。

④普段どおりにスウィング、どれぐらい左に飛び出して、さらに左へ曲がるのかを観察。

⑤曲がり具合に応じて、体の向きを右向きに修正する。このとき、ボールが通常よりも左にならないよう、ボールに対して回り込むようにし、両肩、グリップ、ボールの位置関係を変えないようにする。

GD スライスの練習は、これとは左右逆の作業をすればいいということですね。ところで今回は、積極的にボールを曲げてみようという趣旨で話してもらいましたが、スライスで悩んでいる、あるいは、フックで悩んでいるという人にとって、こういう練習方法は、球筋の矯正としても利用できますか?

湯原 もちろん有効ですよ!

GD 次回は、球筋の矯正について話を聞かせてください。

週刊GDより

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