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【グリップ大研究】#1「いいグリップ」とは手が余計なことをしなさそうな握り方

グリップはプレーヤーとクラブの唯一の接点で、「グリップを見ればゴルフの腕前がわかる」と言われるほど重要な要素でもある。では「いいグリップ」とはどんなグリップなのか。改めて考察してみた。

TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/こだまゴルフクラブ

Q. 上の写真の中に1枚だけプロのグリップがあります。果たして何番でしょう?

解説/中井学

1972年生まれ。アメリカの大学に留学しゴルフの腕を磨き、以後コーチとして活躍。登録者数27万人の人気ユーチューバーでもある

「いいグリップ」の
条件とは?

人間とクラブの唯一の接点であるグリップの握り方はゴルフのすべての基本と考えられる一方で、プロでも千差万別、個人差が大きいため「基本ではない」という考え方もある。

しかし、形は違えどもプロや上級者に共通する要素は確実に存在し、それを満たしたグリップは「いいグリップ」だと認識される。プロに「いいグリップだね」と褒められるのは、「ゴルフが上手そうだね」と言われているに等しく、アマチュアにとって最上級の誉め言葉のひとつだろう。

上の写真のさまざまなグリップを見比べると、いいグリップと悪いグリップの違いはなんとなくわかる。しかしその正体は何なのか?

いいグリップと悪いグリップの違いはどこにあるのか? プロ、アマ問わず幅広いゴルファーを指導してきた中井学プロに聞いてみた。

「見た目の印象を挙げるなら、腕に力みがないことと、手が密着していて隙間がないこと、この2つでしょうか。形もあるにはありますが、あまり極端に崩れていなければ個性の範疇と言っていいので、どうしても表現が抽象的になります。だからこそ、『いいグリップ』というのがわかりにくいのかもしれません」

しかしその2つの条件にはもちろん理由がある。中井プロによれば、それは「スウィング中に手が余計なことを“しなさそう”なグリップ」という点に集約される。

「ゴルフにおいては、スウィング中にグリップの形や力感が変わることが、スウィングを乱す大きな要因です。握りの形が変わればフェースの向きや体に対するクラブの位置が変わってしまいますし、力感が変わると軌道もタイミングも乱れる。プレッシャーがかかる場面ではこれが顕著に表れるため、そういった力感や形状の変化が起こらないことがいいグリップの条件なんです。そのため『いいグリップ』に見えるのは、見るからにそれが“起こらなそう”な握りということになります」

最初から力んでいる握りは、スウィング中でも力むか、反対にどこかでゆるみやすい。形に隙間がある握りは、それによって手の中でクラブが動きやすいし、その隙間をスウィング中に埋めようとして力むことにもつながるというわけだ。

上の問題の答えは「10番」

いいグリップの条件
①腕に力みがない
②密着していて隙間がない

力感が変わらない!

スウィング中にグリップの力感が変わると、軌道やタイミングが乱れる。とくに切り返しで変化しやすいので、握りの強さが変わらないことも大事

形が変わらない!

握りの形が変わってしまうと、フェースの向きやクラブのポジションが変化しミスの原因となるので、スウィング中に握りの形が変わらないことが重要

わざと手先を器用に
使いにくくしている

つまりスウィング中に「手が何もしない」握りこそがいいグリップだというのが中井プロの考え。これはそもそもゴルフのグリップの形を考えれば自明だという。

「ゴルフのグリップは、明らかに異様な握り方をします。最初に教わったときに違和感のなかった人はいないのではないでしょうか。これはなぜかと言えば、手が余計なことをしにくいように意図的に変な形にしているからです。手のひらに直角ではなく斜めにして握るのはクラブのライ角を保つためですし、オーバーラップにせよインターロックにせよ、右手の小指を浮かせる形は右手に力が入りにくくするため。親指や人さし指の形も、手先を器用に使いにくくするための工夫です。その意味では、『手が不器用そう』なグリップこそ、いいグリップと言っていいかもしれません」

ではアマチュアはなぜ「いいグリップ」で握れないのか。それには2つの側面がある。1つは、この違和感に負けて最初からいいグリップを習得できなかったケース。もう1つはスウィング自体に問題があるのを、手先を器用に使ってごまかしながらスウィングしているケース。いずれの場合も、上手くないことの証明になってしまっているのだ。

クラブを斜めに持ち、左手人さし指と右手小指を重ねたり絡めるゴルフの握りは明らかに不自然。この不自然さこそ、グリップに込められた意図の表れだ

斜めに握る
>>ライ角を維持するため

ゴルフクラブはシャフト軸からズレた位置にヘッドがある偏重心で、ライ角がついている。腕とクラブを直角にせずグリップが手のひらを斜めに横切るように握るのは、ライ角維持のため

右手小指を離す
>>右手を抑えるため

右手の小指を左人さし指に絡めたり乗せたりするとともに、右手親指と人さし指のポジションも不自然なのは、右手を強く握りすぎないため。器用で強い右手の動きを抑えるためだ

>>では具体的にどうやって握ればいい?

月刊ゴルフダイジェスト2024年6月号より