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入りすぎて禁止になる? 「アームロック」はアマチュアこそ試してほしい最強グリップだった

PHOTO/Hiroaki Arihara

2019年頃、PGAツアーで流行した「アームロックグリップ」が最近ひそかに脚光を浴びている。「変則的」とされるグリップだが、なぜプロの間で注目されているのか、我々アマチュアも真似していいのか? パッティングの専門家に聞いてみた。

解説/橋本真和

最先端の機器を駆使し、松田鈴英や髙木優奈のパッティングコーチを務める。TPI レベル1、アスリートボディケア・セルフトレーナーなどの資格を所持

アームロックが主流になる
時代がやってくる

“アームロック”というワードを聞くと、思い浮かべる選手といえばブライソン・デシャンボー選手だと思います。彼はゴルフの科学者という別名もありますが、パッティングにおいても独自の研究をしてきたようで、行き着いた先がこのアームロックとも言われています。

そもそもアームロックとは、左前腕にパターのグリップエンドを当てて、腕(アーム)にパターを固定(ロック)させるグリップのこと。2016年にアンカリングが禁止されたことを受け、考案された握り方といわれています。アームロックでのストロークは少し窮屈そうに見えますが、腕とクラブが一体化することにより、たくさんのメリットがあり、正直近いうちに禁止になるんじゃないかって思うぐらい最強のグリップなんです。

腕とクラブが一体化することで、腕や手首を回す動きや、シャフトのブレなどが抑えられます。これにより、フェース面をスクエアに保ちやすくなるという利点があります。アメリカの研究でも最大で50%のムダなフェースローテーションが抑えられるという結果があるぐらいです。

こういった研究からPGAツアーでは2019年ごろからアームロックを試す選手が増えてきました。でもこのときはまだアームロック用のパターは少なく、適正なロフトや長さなどフィッティングデータも少なかったように感じます。通常のパターではロフトの調整幅が限られているので、ヘッドの選択肢が限られていたのです。それが理由で手を出せなかった選手もいるかもしれません。

それから2年でオデッセイやベティナルディなどの大手メーカーがアームロック用のパターを出してきたことから、これからは多くの人がアームロックを採用してくると思います。その証拠に国内ツアーでも池村寛世プロ、比嘉一貴プロ、上井邦裕プロなどが取り入れていますね。

パターのグリップは順手、クロスハンド、クロウの3種がベースですが、その中に新たにアームロックも加わって、4種が主流のグリップになりました。

今年のマスターズでルーキーながら2位に入ったウィル・ザラトリス選手もアームロックグリップでした。何年か後にはアームロックが当たり前の時代がやって来るかもしれませんね。

ボールの回転が良くなって、ストロークの再現性が高くなる最強のグリップがあるとしたら試してみたいですよね。

アームロック
国内外でじわじわ増加中!

ブライソン・デシャンボー

アームロックと言えばこの選手。アームロック歴は2年以上で、計測器を使ってボールスピードを管理するほど研究している。ヘッドはSIKのピンタイプを使用

ウィル・ザラトリス

左腕はアームロック、右手はクロウの変則タイプ。ヘッドはマレット型で、おそらくオデッセイのOG#7。慣性モーメントの高いマレットを右手のクロウでカバーしている

池村寛世

池村プロはテーラーメイドのTPコレクションのデルモンテというモデル。通常のピンタイプのネックを曲げてロフトを約5度に調整

上井邦裕

上井プロはミズノオープン時にキャメロンのマレットタイプ、ツアー選手権ではピンタイプを試し、試行錯誤しながら自分に合ったものを探している様子

比嘉一貴

比嘉プロはアームロックを採用する選手の中ではライ角の寝たパターを使用している。ライ角を寝かせることで、緩やかな円軌道ができる

クラブと左腕を一体化
「ボールの転がりが格段によくなります」(橋本)

【アドレス】アームロックにするとシャフトの角度はハンドファーストに。右肩が下がるのが特徴
【テークバック】ひじの曲げ伸ばしが難しいので、ナチュラルなショルダーストロークになる
【フォロー】インパクトからフォロー付近で自然なアッパー軌道になるので強い順回転をかけやすい

支点が動かないから
いつでも同じストロークができる

なぜアームロックが最強かというと、まずは支点が安定することにあります。ストロークするうえで、支点は動かないほうがいいのはみなさんも理解できると思います。もしこの支点がストローク中に動いてしまうと軌道がズレてミスヒットしたり、ボールの回転がバラバラになってしまいます。

しかし、アームロックだと左腕にクラブを固定しているので、左わきにある支点がズレるのは体重移動しない限りほぼ不可能です。よって左腕に固定している限り、毎ストロークほぼ同じ軌道を描くことができるようになります。再現性が高まれば、打点もヘッドの最下点も安定しますから、ストロークのミスが減少します。ここで注意しておきたいのは、グリップエンドを腕に触れさせるだけではいけません。しっかりと腕に圧を加え続けてストロークをすることが重要です。

いまや“4大グリップ”とも言えるアームロックを含んだ4つの握り方で表を作ってみました。アームロックは距離感以外、正直ダントツ1位。距離感に関しては、腕と一体化したストロークに慣れていないため、練習が必要になってきます。

ストロークのミスが減るぶんプロよりもアマチュアのほうがこのアームロックの恩恵を受けやすいと思います。とくにショートパットは、入る確率が上がるでしょうね。その代わり、しっかりとフィッティングして、自分専用のアームロック用パターを作ってもらうことが大事です。

左わきを支点にすることで
再現性が極めて高くなる

アドレス、テークバック、フォローで左わきにある支点が常にキープされている。支点を固定することができると、ヘッド軌道が安定し、再現性の高いストロークができる。最下点の位置が揃うことで入射角、打点が安定し、ボールの回転が一定になる(写真は池村)

すでに進化系も登場!
マット・クーチャーは右腕に固定

アームロックは左腕に固定するのが通常だが、マット・クーチャーは右腕に固定する“逆アームロック”に。「正直これには驚きです。詳しい情報はまだ入ってきてませんが、方向性が安定しそうな新しいグリップですね」(橋本)

週刊ゴルフダイジェスト2021年7月6日号より