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【運動神経がいい人の落とし穴】<後編>「セットアップを丁寧にするだけで結果は大きく変わります」

ゴルフに運動神経は必要か否か。「運動神経、ないです」というプロゴルファーは案外多いが、アマチュアゴルファーを見ていると、「運動は得意なはずなのに、ゴルフはなぜか上手くなれない」との愚痴も聞こえてくる。「運動神経のよさ」に潜むゴルフの“落とし穴”を分析してみた 。

THANKS/東我孫子CC ILLUST/Koki Hashimoto PHOTO/Shinji Osawa、Hiroyuki Okazawa、Yasuo Masuda

桐林宏光

1964年生まれ。桐林宏光ゴルフ塾主宰。LPGAティーチングプロA級、日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士。心理面と技術面を融合したレッスンに定評あり

権田理恵さん

1970年生まれ。名門女子校から体育大学に進学した根っからのアスリート。平均スコア100、ベスト95。「止まっている物体を打つスポーツ、こんなに難しいとは思っていませんでした」

>>後編はこちら

「ヘッドが走る感じがわからない。
キレイなスウィングになりたいんです」(権田)

権田さんがゴルフにハマったのはここ5年。男性用クラブを使うパワーの持ち主で、ドライバーで当たると200ヤード超えショットも出る。

「いいショットも出るんですけど、スコアがよくならないんです」

今回はプロコーチの桐林宏光がラウンドしながら、メンタル、技術面からチェック。

「運動神経がいいと感じている人の1つの特徴は、部活動やスポーツクラブでの経験があり、自分が他の人より成績がいいとか動けることを認識している人。周りから『あの子すごいね!』と言われたりするので『自分は運動ができる人なんだ』とセルフイメージが上がるんです」

まず、この思い込みとセルフイメージが上達の邪魔をするという。

「ゴルフで上手くいかない自分を認められないことからイラ立ち、それが忍耐力欠如につながり、パフォーマンスを発揮できないことはよくあります」

そして、ゴルフは道具を使うスポーツだ。

「たとえば権田さんがやってきたバレーボールなら、道具は『自分の体』。自分のボディイメージだけで『こういうふうに動けばスパイクを打てる』となりわかりやすい。でもゴルフの場合は道具を1種類ではなく14本、違う役割のものを使いこなさないといけません」

「ヘッドが走る感じがわからない」という権田さんの落とし穴もここにある。

「自分の体で解決しようとするんです。落ち着いて淡々とやっているときはいいのですが、追い込まれてわけがわからなくなったときに、自分でウリャーと戦いにいく。ドラコン競技なら体で1発の結果は出るかもしれない。でもラウンドはいろいろ繊細な要素が必要になる。運動神経がよくないと言われている人だって上手くなるチャンスはたくさんあるんです」

またスポーツは、『オープンスキル』と『クローズドスキル』という“特性”で2つに分けられる。

「前者は状況がくるくる変わります。バレーボールやサッカーは来たボールに対してじっとしてはいられない。チームでお互いに声をかけあって相手やボールに対して反応する。対して後者は、環境がそれなりに安定していて自分がそれに対して反応するもの。たとえばアーチェリーやボウリングです。ゴルフは多くがクローズドスキルに分類されますが、屋外スポーツなのでオープンスキルの要素もある。風が吹いたりライの状況が変わったり、同伴競技者の言動も受けたりしてパフォーマンスに影響する。複合体だからややこしい」

小さい頃から「運動神経がいいね」と言われている人はオープンスキルの運動に多いと桐林プロ。
「心拍数が上がるようなスポーツですよね。実は私、ボウリングが苦手なんです(笑)」(権田)

「まずゴルフは複合体だというスポーツ特性を理解し、取り組み方を変えなければいけない。作戦能力や判断力、実行力などを高めていく。チームプレーは監督やコーチの指令通りにやらなければいけない部分がありますが、ゴルフは全部自分でやらないといけません。そして、チームスポーツの方は自分ひとりで集中することに慣れていない。周りに目配り気配りができることは大事です。でも、メリハリを付けることは必要です」

また、「私は、スウィングをキレイにしたくて、動画を撮って見まくっています」という権田さん。ここにも落とし穴があるという。

「アスリートに多い感覚です。見た目、バランスが良く芸術性が高いと上手く見える。自己評価も他者評価も、そこをクリアしないとパフォーマンスが上がったと言えないのではないかとの自己認識がある。でもゴルフは結局スコアです。スウィングが個性的な年配の方で上手い方もいますよね」

「『自分の体』で解決しようとしてます!」(桐林)
「私は運動神経がいいと言われてきました。体育大ですし器用ですから。でも、なかなか上手くいかない。それにゴルフって上手くなったことを感じるのが難しいです」(権田)

丁寧さ、状況判断、イメージ力が必要だ

実は桐林プロも、「運動神経がいい」と自他ともに認める存在だ。

「小さい頃からスポーツはほぼできたし、ウインドサーフィンはインストラクターもしていて命がけでした。『ゴルフごとき』と、すぐに上手くなると思っていたのに、初めてスポーツで挫折しました」

「一緒ですね、何が必要なんでしょうか」と言う権田さんに、「クラブの取り扱いが上手いことです。頭でイメージしたことをすぐに筋肉に伝えられることが運動神経。権田さんのすぐに反応できる能力は素晴らしい。ただ、上達するためには、押さえるべきポイントを知識として持っておく。ただ“動ける”だけではパフォーマンスが上がらないんです」と桐林プロ。

そして、イメージ力が大事だと言い、アライメントを含むセットアップの重要性を説く。

「まずはパットから。パターはヘッドスピードが遅いので自分でイメージしたとおりに動きやすい。セットアップを丁寧に。ストロークの細かい技術を考えるよりも大切です。ゴルフは自分主体で動くので、準備の段階で考えることやイメージすることができる時間が確保されています」

桐林プロは権田さんがセットアップに入る前に必ず「どういうラインか、どこに打つか」を聞いていた。「自分のイメージをしっかり持つクセを付けるためです」。

スパットを決め、ボールの後ろで距離感を決める素振りをしながら8秒間瞬きせずにイメージをインプット。左足、右足の順で開き、1、2、3で、1点を通すくらいに丁寧にボールを出す。

「ボールの横で素振りをしたら狙いがぼやけます。素振りは何となくのイメージではなく予行演習です。実際打つときの振り幅に決めて、ゴールセッティングを明確に。8秒以内なら覚えていますから残像を焼き付ける。自分のストロークに集中することでストレスを追いやって、入らなくても打ち損じがない。あとは構えてゴールに向かってやり遂げるだけです」

「今までのルーティンがいかにいい加減だったかがわかりました。それに、『目線』の大切さ、これだけで随分違いますね」(権田)

「セットアップがバラつくとフェース面もあちこちに向きます。インパクトゾーンがきちんとしていればターゲットにボールがいく。パットでフェース面の管理も学んでいきましょう。ゴルフがターゲットゲームだということが理解できますよね」

そして地道な練習こそ力なり。

「バレーボールも基礎練習、ずっとやってきたでしょ。上手い人は絶対に練習しています。連続素振りなどでもいいんです」(桐林)

「全然スコアが変わらないならつまらない練習にお金を使わずにラウンドしようと思ってしまって。悪循環でした。エネルギーゼロのものを自分がどうにかしていくのは難しい。でも、何となくこんな感じかとやっていたことに上達のためのルールがあると知ることができました」(権田)

「それが学んで習得する技術でありマネジメント。あとはクラブが仕事をする。運動神経よりクラブを信じていきましょう」(桐林)

前にならえで

セットアップのときに脱力する。「小さい前にならえのまま手を下ろす感じ。右ひじは身体に付け、左腕は真っすぐに。右肩が上がらず、肩甲骨が背骨に寄り、体が回りやすくなります」(桐林)

パッティング

パターは目の下にボールを置くので、ターゲットと目線が同じでよい。「目線の置き方がパットもショットもすべて間違っていました。理屈を知れば修正ができますね」(権田)

ショット

目線をターゲットに置くので右に向きがちになる。「ヘッドと自分との距離があるので、ヘッドがターゲットを向くようにする。ターゲットラインに平行に肩、腰、足のラインをセット」

林から出す

目線の置き方を理解すれば、怖くない。「後ろから見て十分振れることが分かれば、スパットを見つけて、そこにヘッドを向けて振る。目線は木のほうに行っても大丈夫」

フェース面の管理を意識する

バドミントンのラケットでフェース面の管理を意識。「インパクトで真っすぐに当たればいい。インパクトゾーンでフェース面の管理をすることが大切です」

地道な練習の積み重ねは必須

シャドウスウィングでもOK。「左腰と足の使い方は、左のお尻で『どいてよ!』という感じで左腰と足を使う。インパクトでは右の手首の角度はそのまま。左のお尻が痛くなるくらいまでやるべし」

「伸びしろは大きいので頑張って!」という桐林プロに、「年齢を重ね、トレーニングをして体の状態を上げていくことは難しくなるけど、体力や技術とは違うポイントに気を付けることで上達できそうでやる気になります」と権田さん。この取材後すぐのラウンドは「97」で回ったとの報告が!

週刊ゴルフダイジェスト2026年5月12・19日合併号より