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今のヘッドスピードでもプラス30Yは可能! 初速が上がる高効率インパクトの作り方<前編>

TEXT/Daisei Sugawara、Masato Ideshima
PHOTO/Shinji Osawa、Tadashi Anezaki、Hiroaki Arihara、Takanori Miki
THANKS/フェニックスゴルフアカデミー、エースGC、横浜CC

僕らとヘッドスピードはそれほど変わらないのに、女子プロはなぜらくらく250ヤードも飛ばせるのか? 答えはズバリ“初速”。ボール初速をアップさせられれば、女子プロ並みの飛距離が手に入る!

エネルギーロスを減らせば
今のHSでも飛ばせる!

解説/田中克昌
工学院大学工学部機械工学科准教授。スポーツにおける「衝突」に関する研究を行う。インパクトの瞬間に何が起こっているのか、わかりやすく解説してもらった

なぜ同じヘッドスピードで振っているのに飛距離に差が出るのか? インパクトの瞬間に何が起きているのか、エネルギー効率について研究している田中克昌氏に話を聞いた。

「ボール初速と打ち出し角、スピン量は飛びの3要素と言われるものですが、これらの条件を良くすることでエネルギーロスが少なくなり飛ばすことができます。なかでもとくに、初速をいかに上げるかが重要になります。ただ、インパクトは0.0005秒というわずかな時間に起こる現象で、これは人間の反応速度よりもはるかに短いものです。要するに、ボールに当たってしまえば何もできないのが事実。そうなると、ボール初速を上げるには、ボールに当たる直前までのクラブの動きが非常に大切になってくると言えます」

インパクトの真実① 接触時間は0.0005秒
数あるボールを打つスポーツの中でも、突出してインパクトの瞬間の時間が短いゴルフ。人間の反応速度よりもはるかに短い
インパクトの真実② フェース面を駆け上がる
ロフトとギア効果によって0.0005秒の間にボールはフェース面上をほんのわずかだが上っている。駆け上がり方が適正だと初速は上がる
インパクトの真実③ 衝撃力は1トン
物理的に計測するとインパクトの瞬間は最大約1トン(HS40m/sの場合)もの力が加わっている。これだけのエネルギーをいかにロスさせないかが鍵

※トマトは撮影後、スタッフで美味しくいただきました


飛びの3要素をおさらい!

ボール初速●
インパクト直後のボールスピード。ヘッドスピードの1.5倍が理想値。
飛距離に直結する部分で、ここをいかに上げるかが最も重要
スピン量●
スピン量が多すぎると球が吹き上がり、少なすぎるとドロップして
飛ばなくなってしまう。目安としては2000~2500rpmが適正
●打ち出し角●
効率よく飛ばすためには、スピンを抑えつつ、ある程度の打ち出しの
高さが必要。振り方で作る方法とクラブに任せる方法がある


同じHS42~43m/sでも
プロとアマでここまで差が出る!

プロ初速飛距離
小祝さくら63m/s240Y
髙橋彩華63m/s245Y
石井理緒62m/s240Y
アマ初速飛距離
原孝さん(平均100)54.3m/s210Y
山崎広幸さん(平均95)55.4m/s216Y
浅井哲也さん(平均100)53.4m/s209Y
プロもアマも全員ヘッドスピードは42~43m/sだが、飛距離は30Yも差がある。この差は、初速の違いが最も大きい。いかにヘッドスピードをボールスピードに効率よく変換するかがカギになる

初速を上げる最大のコツは
インサイドアッパー

解説/石井忍
大西葵などのトッププロを教えるプロコーチ。データ面からスウィングを研究しレッスンを行う

解説/植村啓太
服部道子などのプロを教えた実績を持つプロコーチ。工藤遥加、臼井麗香のコーチを務めている

女子プロのヘッドスピードは、男性アマチュアとさほど変わらない、40m/s程度。それなのに、女子プロのほうが飛ぶのはなぜか。石井忍コーチによると「同じヘッドスピードでも、女子プロのほうがミート率が高く、ボール初速が速いからです」とのこと。では何がこの差を生むのか。

「アマチュアの初速が落ちる原因は、①アウト-イン軌道、②フェースの開き、③減速インパクトの3つです。このうち、①の影響がいちばん大きく、他の2つを修正しても、①がよくないままだと、結局、初速は上がりません」と、石井コーチ。ヘッドスピード40m/sでの理想のヘッド軌道はイン-アウトで、ややアッパーブロー。まずはこの軌道を手に入れることから取り組んでいこう。

初速アップの3条件

<条件1> インサイドアウトのスウィング軌道

「アマチュアのアウト-イン軌道は、多くの場合、手が主体で体の力が使えていない。イン-アウト軌道は、体と腕を一体にして振らないと実現できないので、体全体の力がボールに伝えられる」(石井)

<条件2> フェースを真っすぐ当てる

「インパクトの瞬間にフェースがしっかり目標方向に向くことで、エネルギーロスを最小限に抑えることができる。そのためにもフェース面を管理することが重要」(植村)

<条件3> 加速しながらインパクト

「ボールに当たった衝撃で、ヘッドは必ず減速するが、インパクト直前まで加速していれば減速の度合いが少なくてすむ。インパクト前までヘッドが加速していることで初速が上がる」(植村)

インサイドアウトに振るためには
足→胸→クラブの順番を厳守!

そもそも、なぜ「イン-アウト」で「アッパー」が最強軌道かというと、ボールがつかまって、打ち出し角が高くなり、スピン量が減るから。多くのアマチュアのように、アウト-インで上から打ち込むと、これらの要素が全部逆になるから飛ばないのだ。

「アマチュアがイン-アウトに振れない、いちばんの原因は、体を動かす『順番』が間違っているから。切り返しで最初に左足(下半身)が動き、2番目に胸(上体)が回ると、イン-アウトに振れますが、アマチュアは先に胸が回る人が多い。そうすると、右肩が前に出てしまうので、アウト-インにしか振れなくなるんです」と、石井コーチ。切り返しでは、胸を飛球線後方に向けたまま、左足だけ踏み込むくらい、足と胸の動きに時間差をつけたい。

「胸が早く回りすぎなければ、体の右サイドにスペースができるので、自然にインから下ろせます」(石井)

Point 1
トップで胸を真後ろに向ける

トップで上体の回転が十分でないと、切り返しで胸から動きやすくなってしまう。胸が飛球線後方を向くくらい、上体を回しておこう。下半身を固定すると胸が回りづらいので、足を動かして「右向け右」する感覚でいい

Point 2
右足を半歩引く

スタンスをクローズにしておくことで、バックスウィングで胸を深く回しやすくなり、ダウンスウィングでは腕をインから下ろしやすくなる

Point 3
上半身をキープしたまま左足を踏み込む

切り返しは上体と下半身が別々の方向に動く。上体をトップの形から変えることなく、左足だけを踏み込んでいく練習が効果的

Point 4
胸を開かず前傾キープ

胸の回転により腕が引っ張られ、少し遅れて下りることで、腕(クラブ)の下りるスペースができる。このとき、上体が起き上がらないように前傾をキープすることが大切

右肩を上げるように回ってみよう!

「足→胸」の順番を守って、腕の軌道がイン-アウトになっても、器用な「手」、とくに右手が余計なことをしてしまうと台無し。石井コーチは、「ダウンスウィング中の右手は、手首を固定して振る感覚じゃないと、ヘッドの軌道が安定しません。ちょうど、卓球の『ドライブ』や、テニスの『トップスピン』を打つような感じです」という。

もちろん、右手首の固定には「軌道とフェース面の管理」という重要な役割がある。手首でフェースを返さないと、「ボールがつかまらないのでは?」と考える人もいるだろうが、胸が回り続ければ、手首は何もしなくてもヘッドはインサイドから下りスクエアに戻る。

「右肩を下げすぎない(軸を右に傾けすぎない)ことも大事で、右肩をむしろ上げていく感じで振ると、アドレスの軸の傾きを保ったまま回れるので、適度なアッパー軌道で打てます」(石井コーチ)。

Point 1
右肩を上げるイメージ

アドレスで軸(背骨)はやや右に傾いているが、ダウンスウィングで右肩を下げると、それ以上に軸が傾いて、すくい打ちになる

Point 2
右手首は体の動きで返す

胸が回転していけば、右手首を固定していてもインパクトでフェースはスクエアに戻る。手首を返そうとすると、右肩も連動して前に出やすい

後編へつづく

月刊ゴルフダイジェスト2021年6月号より