【平成スウィング変遷史①】ノーマン、カイト、ファルド、エルス。感性から物理学へスウィングは変わっていった
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令和が始まった今、改めて平成のゴルフ史を振り返ってみると、まさに激動と呼ぶにふさわしい時代だった。科学の進歩やコースコンディションの変化で、新たな理論や技術が次々に生まれ、多くのスターが生まれた30年。平成スウィング変遷史。第一回は平成の初期を振り返る。解説はプロコーチの江連忠。
【平成初期】ドライバーがパーシモンからメタルへ
平成元年(1989年)に、グレッグ・ノーマンが全英オープンに勝ち、トム・カイトがPGAの賞金王に輝いたことは、まさに平成の幕開けの象徴でした。(江連)
全英優勝時、ノーマンはパーシモンを使っていました。クラブにエネルギーがないことに加え、ノーマンに限らず、この時代の選手はジャック・二クラスに憧れてゴルフを始めた選手がほとんど。
大きなフットワークや逆C字のフィニッシュに代表される「体」重視のスウィングが主流だったのです。
グレッグ・ノーマンの体を目いっぱい使った「逆C字」フィニッシュ
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飛距離で圧倒したG・ノーマンは、アップライト軌道の逆C字フィニッシュ。体主体スウィングの代表格
「C字」から「I字」フィニッシュに変えて成功したのがトム・カイト。クラブ重視の先駆者でした。以降、「クラブに仕事をさせる」時代が始まったのです。
クラブに仕事をさせ始めたトム・カイトのI字フィニッシュ
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グリーンを狙うショットとアプローチで賞金王に。ショートゲーム重視は師匠ハービー・ペニックの影響
【1990年年代】D・レッドベターの登場。コーチとスウィングを作る時代へ
1990年代は、まさに私がジム・マクリーンの元でスウィング理論を学んでいた時期にあたります。スウィングコーチという存在が、注目されるようになった時期といってもいいでしょう。
その代表格がデビッド・レッドベターであり、チームとして理想的なスウィングを完成させたのがニック・ファルドです。
レッドベターの申し子、ニック・ファルド
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ツアー43勝(うちメジャー6勝)。最終日になるとスウィングが締まり、勝負強さがより高まった
映像によるスウィング解析はダウンスウィングでシャフトがオンプレーンに下りてくればボールは真っすぐ飛ぶ、という真理を突き止めます。それを実現する方法として注目を集めたのが「ボディターン」でした。
ボディターンというネーミングから、一方で「体主体の理論」と勘違いする人も生みました。しかし、正確には「体とクラブを同調させる理論」であり、具体的にはフットワーク、腕や手の動きを極力抑えるスウィングです。
腕や足の動きは感性や体調といった不確定要素に左右されやすいので、それらを極力排除し、クラブに最大限の仕事をさせるという科学であり哲学です。
ファルドに限らずアーニー・エルス、ニック・プライスなどチーム・レッドベターに共通する「感情がまったく表に出ないフラットなスウィング」の理由はそこにあります。
優雅なリズムでゆっくり振る。アーニー・エルス
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ツアー仲間からも評価されたエルスのスウィング。大柄な体の動きを抑え、優雅なリズムでパワーフェードを放った
ハードヒットせずに、ゆったりしたリズムのボディターン。かといって体がゆるんでいるというのではなく、目に見えない部分、いわゆる体幹で頑張っているスウィングであることも見落とせない重要な部分です。
いずれにせよスウィングを語る言葉は「感性」から「映像によるクラブの動き」に変わりました。
キレのある1軸スウィング、ニック・プライス
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プライスのスウィングは厳密には「1.5軸です」と江連プロ。体重移動が少なく見えのは体幹を使ってスムーズに移動しているため
感性から理論へ変化した平成スウィングの変遷。次回は1990年代後半、ゴルフの常識を変えた「あの男」の登場です
週刊GD2019年5月7日・14日合併号より
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