【対談】館山昌平×目澤秀憲<後編>球が“曲がる”仕組みを理解しておこう
生体力学や運動生理学的視点を取り入れたり、最新の機器による計測データを活用したりと、野球とゴルフには共通点が多い。ボールを「操る」という点ではどうだろうか。
TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Hiroaki Arihara、Getty Images THANKS/RAYCOM BASE CAFE
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- プロを教えるコーチは、選手以上にそのスポーツに精通していなければならない。つまり、コーチの頭の中には、一般の人がまだ知らないたくさんの「真実」が詰まっている。 TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Hiroaki Arihara、Getty Images THANKS/RAYCOM BASE CAFE 目澤秀憲 ゴルフ界の最先端を知り尽くすコーチ。現在は河本力……
軌道の安定は重要だが
野球とゴルフは目的が違う
――速い球の投げ方とゴルフの飛ばしには共通点が多い、というのが前回の結論でしたが、たとえばボールを曲げることについてはどうでしょうか。
館山 ピッチャーの場合は、腕の軌道やリリースポイントでバッターに球種がバレたらダメなので、なるべく同じ腕の振り方、同じリリースポイントで投げるというのが大前提で、そのうえで手首の角度をどう変えて、球を曲げるかということを考えます。たとえば、時計の文字盤で「1時」から「7時」(自分から見て)のラインで腕を振った場合、理想的なリリースポイントで手首を真っすぐにすればストレート、手首を内側にひねればカーブが投げられるという感じです。
野球の場合は手首の角度で球種が変わる
ストレートでもカーブでも、腕の軌道やリリースポイントは同じ(そうでないとバッターに球種を見抜かれる)。違うのは手首の角度で、真っすぐならストレート、内側に曲げるとカーブになる
目澤 ゴルフだと、次に打つ球が誰かにバレちゃいけないということはないので(笑)、基本的にはセットアップを変えて球を曲げますが、同じセットアップからでも打点やフェースの向きを変えるだけで弾道を打ち分けることもできます。ピッチャーの手首の角度がフェース面で、腕の軌道がクラブ軌道というのは同じで、カーブを投げるときとドローを打つときのそれぞれの関係も一緒ですね。ただ、リリースポイント(=打点)だけは少し違うというイメージですね。
館山 ピッチャーはいかにバッターの判断に「エラー」を発生させてアウトを取るかがすべてですから、そのためには多少、体に負担がかかっても仕方ないと思っています。ボクも現役のときはそう思ってやってました。
目澤 ゴルフも理にかなっていないやり方で無理に飛ばそうとしたり、球を曲げようとするとケガのリスクはあります。スウィング軌道を安定させるためには、体に負担の少ない動きで、クラブの物理的な運動を妨げないように振ることが求めらます。その部分は、ピッチャーと少し違いますね。
野球のストレートはシュートしている
人体の構造上、腕を垂直にして真上から投げることはできない。腕の軌道に必ず斜めの角度がつくので、それに対して手首が真っすぐでもボールのスピン軸は右に傾く(シュート回転する)。曲がり幅は20cmくらいという
「手首だけで振ると負担が大きい」(目澤)
ボールを曲げたくても、手首だけで無理やりフェースをねじったりすると、クラブの重さ+重力+遠心力がすべて手首にかかり危険
ボールを操るには…
「球が曲がる仕組みの理解が絶対必要」(目澤)
最下点(最遠点)でスクエアに当たればストレート
●フェードの場合
軌道よりフェースがオープン
最下点より先は軌道がアウト−インになる。この部分で軌道よりもフェースがオープン、かつターゲットよりクローズにヒットすれば、左に打ち出され右に曲がるフェードが打てる
●ドローの場合
軌道よりフェースがクローズ
最下点に至るまではヘッドがイン−アウトに動く。この部分で軌道よりもフェースがクローズ、かつターゲットに対してはオープンにヒットすると、球が右に打ち出され、左に曲がるドローになる
月刊ゴルフダイジェスト2025年2月号より