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【対談】館山昌平×目澤秀憲<前編>野球もゴルフも大事なのは“インパクトからの逆算”

プロを教えるコーチは、選手以上にそのスポーツに精通していなければならない。つまり、コーチの頭の中には、一般の人がまだ知らないたくさんの「真実」が詰まっている。

TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Hiroaki Arihara、Getty Images THANKS/RAYCOM BASE CAFE

目澤秀憲 ゴルフ界の最先端を知り尽くすコーチ。現在は河本力、金子駆大、永峰咲希、阿部未悠などを教える
館山昌平 元プロ野球選手。現在は自身の経験を生かし、マルハン北日本カンパニー硬式野球部の監督を務める

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  • 生体力学や運動生理学的視点を取り入れたり、最新の機器による計測データを活用したりと、野球とゴルフには共通点が多い。ボールを「操る」という点ではどうだろうか。 TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Hiroaki Arihara、Getty Images THANKS/RAYCOM BASE CAFE 目澤秀憲 ゴルフ界の最先端を知り尽くすコーチ。現在は河本力、……

最大スピードのカギは
動きの「連動性」

今はゴルフのスウィング分析にも使われる「運動連鎖」の概念は、スポーツの分野では元々、野球の投球動作分析のためのものだった。それだけ、速い球を投げる投球動作と、遠くへ飛ばすゴルフスウィングはよく似ているということでもある。

館山 その人が投げられる最大スピードというのは、身長×体重×可動域で決まってしまうのですが、実際にそのスピードが出せるかどうかは、動きの「連動性」によるところが大きいと思います。とくに可動域に問題があると、連動性が損なわれる可能性が高い。あまり知られてないですが、プロ野球のピッチャーはみんな柔軟性が高くて、たとえば180度開脚して両ひじを地面につけることができない人はひとりもいないんです。

目澤 ゴルフ界でも、身長と体重に加えて「可動域」が大事だということがやっと浸透してきて(※編集部注 : 少し前までは単に体重が増えれば飛ぶという誤解が広まっていた)、とくに女子は3つのバランスがいいアスリート体形の選手が増えてきました。

館山 ボクが最初に選手を見るポイントは「骨格」で、それに合ったリリースポイントになっているかどうかということなんです。

目澤 ああ、やっぱり。それはゴルフでもまったく一緒です。

打つ瞬間だけは
合理的であることが大事

かつてゴルフ界には、リー・トレビノのような個性的なスウィングのプロが多くいたが、いわゆる「ボディターン時代」にはスウィングがやや画一化された。それがここにきてまた、B・デシャンボーやS・シェフラーなど、個性派スウィングのプロが増えている。これは「数値化」と関係があるのか。

館山 野茂(英雄)選手の投げ方やイチロー選手のバッティングは教科書には載ってないんですが、それでも活躍できたというのは投げる瞬間、打つ瞬間の体の使い方が理にかなっていたということなんです。逆にそうでなければケガをしてしまう。たとえば、子どもたちを教えるときは、ケガをしないための後押しというのが一番大事なので、その子の骨格を見て、仮に投げ方が個性的でも投げる瞬間の腕や手首の角度が合っていればそれも「能力」ととらえて、フォームを直したりしないんです。

目澤 ボクがコーチングのベースにしている「TPI※」でも、骨格や可動域を重要視していて、プロと同じように振りたくても、可動域が足りないからできない場合もあるということを大前提にしてレッスンするようにしています。もし、それでもプロと同じように振りたいのであれば、先に可動域を改善しなくちゃいけない。今は動画サイトで何でも見られるから、逆に「完コピ」を目指す人が増えていて、それはちょっと困った現象です。

※TPI=Titlist Performance Institute

誰かの「完コピ」は
理想のフォームではない

館山 野球は採点スポーツじゃないので、「いいフォームで投げたい」とか、「誰それの真似して投げたい」というふうになってくると、ちょっと危ないんです。百歩譲って、誰かの真似をして投げたらすごく感覚がよかったということがあったら、その感覚を大事にしてほしい。いい形で投げられた、で終わってしまうと意味がないんです。

目澤 ゴルフだと「飛距離が出るのがいいスウィング」みたいな風潮があるんですが、ボクはそれにはあまり賛成できないんです。むしろボールを曲げたりだとか、風に乗せて狙ったところに落としたりだとか、そういうことのほうが大事だと思っていて、それって館山さんがおっしゃった「感覚」の部分だなと。「理想のスウィング」はひとつじゃなくて、実はゴルファーの数だけあるんですよね。

館山 ボクもそう思います。

ダルビッシュ有

ダルビッシュ投手の武器である変化球、とくにスライダーは、「ラプソード」でスピン軸、スピン量を研究して生み出されたという

スコッティ・シェフラー

いわゆる「オーソドック」とはかけ離れたシェフラーのスウィング。それでも世界ナンバー1なのは、インパクト効率が抜群だからだ

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月刊ゴルフダイジェスト2025年2月号より