【ゴルフの急所】Vol.46 ラウンド中に「怒り」を感じたときの対処法
30歳からゴルフを始め、トップアマとして活躍したのち、49歳でプロ転向。会社経営の傍ら、2020年には日本シニアオープンを制するまでに至った異色プロ・寺西明が、自身が考える「ゴルフの急所」について、読者からの疑問に答える形で解説していく。
PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/美奈木GC
OBを打ったとき、3パットをしたとき、同伴競技者にプレーを邪魔されたとき……etc.。私は、腹を立ててスコアを崩してしまう傾向があります。そういう怒りの感情が湧いたとき、寺西プロはどうしていますか?(有田洋一郎さん・60歳・HC16)
お気持ちは、よくわかります。ボクも、アマチュア時代には、怒りからスコアを崩す経験を何度も繰り返してきましたので……。
思い返せば、ボクの場合、他者に対する怒りがミスにつながることが多かった気がします。
ボクや同伴競技者のプレー中にしゃべる、動く、スロープレーがひどい、ルール違反を犯す。そんな行いを見ると、ボクは黙っていられません。思わず「それはいけない」「おかしい」と諫めてしまうのです。しかし、それを口にすれば、結局自分自身の心を乱し、リズムを崩すことになります。結果、その後のプレーがガタガタになってしまう。それがボクの悪いパターンでした。
では、それを見過ごせば何事もなく済むのかというと、そんなことはありません。「なんであのとき言わなかったんだろう?」「やっぱり言えばよかった」という思いが消えないので、やはりいいプレーができないのです。
ですから、ボクは今でも不適切なプレーに出合ったときには、心が乱れることを覚悟で、それを指摘するようにしています。言っても言わなくても結果が同じなら言うべきだし、ボクにはそれしかできないからです。
ただ、怒りに対する向き合い方は、昔とはだいぶ変わったと思います。今でも、怒りを感じる場面はたくさんあります。そんなとき、ボクは「あぁ、今日はそういう日なんだ」「仕方がない」と、怒りを受け入れるようにしたのです。
それは、狙いどおりに打った球がディボット跡に入ったり、ナイスショットがピンを直撃して弾かれ、バンカーに捕まったりしたときの考え方と似ています。
いつまでもその一打を悔やみ、落胆したままでは、いいプレーなどできるわけがありません。どんなアンラッキーも、「これもゴルフだ」と受け入れ、次の一打に集中するしかないのです。
同様に、怒りの感情にとらわれていたら、いいプレーはできない。それなら、怒りを感じるのもゴルフと受け入れ、心を乱しながらも前を向き、ゲームを捨てず、次の一打に集中し、一打でも少ないプレーを心がけるのです。
そうして受け入れても、怒りを消し去れず、パフォーマンスは下がってしまうかもしれません。それでも、怒りにとらわれたままプレーするよりはいいプレーができると、ボクは考えています。
いずれにしても、怒りの感情を抱かないようにすることは困難です。であるなら、怒りを受け入れ、わずかでも平常心に近づける。そういう自分なりの対策を見つけることが大切ではないかと、ボクは思うのです。
CASE1. ミスして自分に怒りを覚える
>>体の一部を叩いて痛みに意識を向ける
「短いパットを外したり、OBを打ったりすると、カチンとくることがあると思います。そんなとき、ボクは、体の一部(太ももや腰など)をパン! と叩いて、次の一打に集中するようにしています。叩いた痛みに意識を向けることで、怒りの感情から意識をそらし、今やるべきことに集中することで、怒りを受け入れているのです」
CASE2. 失敗したことをいつまでも悔やんでしまう
>>忘れるのではなく受け入れて前を向く
「『悪いことは早く忘れろ』と言いますが、怒りをすぐに消し去るのは難しいと思います。とはいえ、腹が立ったことに意識を向けたままでは前に進めません。だから、『これもゴルフだ』と積極的に諦め、受け入れ、次の一打をどうすべきかを考える。そうして前を向くことが、怒りから大崩れすることを防ぐと、ボクは思うのです」
CASE3. バーディパットが決まった!
>>なるべく気持ちをフラットに保つ
「ホールインワンの後にスコアを崩すことが多いように、ゴルフは怒りだけでなく、歓喜の感情もパフォーマンスに影響を及ぼします。ですから、ボクはいいプレーをしても、派手なガッツポーズはしないし、大きなミスをしても、あまりガッカリした態度は見せないようにしているのです」
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