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【競技ゴルファー・タニシゲ】Vol.9 アプローチの距離感はアドレスでつくる

プロ野球の第一線を走り続け、強靭なフィジカルとメンタルを誇る谷繁。修羅場をくぐり抜けてきて男が「苦手」と吐露するのは実は“小技”。アプローチなのだという。

PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/六甲国際GC

谷繁元信 1970年広島県生まれ。88年ドラフト1位で横浜大洋ホエールズ入団。02年中日ドラゴンズに移籍。14、15年はプレーイングマネジャー、16年は専任監督。通算3021試合出場は日本記録、捕手として2963試合出場は世界記録。ベストスコア67
青木翔 1983年福岡県生まれ。2017年渋野日向子を全英女子オープン優勝に導いたコーチ。2020年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。ジュニアから一般アマチュアまで幅広く指導。「六甲国際ゴルフアカデミー」校長

前回のお話はこちら

ミスをただのミスで
終わらせないことが大事

青木 最初、谷繁さんのドライバーやアイアンショットを見たとき、器用なだけに、ちょっと手で調整しようみたいな部分が見てとれたんですよね。

谷繁 それはアプローチも同じでした。ちょいちょい余計な動きをしてしまう。アプローチは苦手なほう……。いや、苦手です(笑)。

青木 それだけ伸びしろがあるということだからむしろラッキー。しかも、僕の大得意ジャンルです(笑)。まずは、残り50ヤードの左足上がりの状況でいつものように打ってもらいました。

谷繁 一見、まあ許容範囲かなって感じのアプローチ。悪くはない。方向性はまあまあ……ただ、距離が足りず、スピンがかかって戻って来ちゃって。いつもだったら「ああ、短すぎたか」で終わるところだったんですけど。

青木 でも、日本ミッド出場のためには、それじゃあダメ(笑)。

谷繁 どこが悪かったですかね。


青木 まず、見ていて「50ヤードを打つ構えじゃないな」と思っていました。スタンスが広く、70~80ヤード狙いぐらいに見えました。スタンスは、フルスウィングでの飛距離を考慮して、飛ばしたい距離に合わせて狭くしていきます。

谷繁 フルスウィングで100ヤード飛ぶ場合、そのクラブで50ヤードの距離を狙うなら半分のスタンス幅でいいということですね。

青木 その通りです。自分のクラブごとのフルスウィングの飛距離からスタンスを決めていく。距離感はそれで決まります。谷繁さんのアプローチのとき、スタンスが広すぎたんですが、谷繁さんはインパクト直前に緩めて調節しようとしていました。

谷繁 それだとミスになりやすいですよね。その後、スタンス幅を調整して、スパンと気持ちよく打つだけで距離感は合ってきました。

準備段階で
左に行く要素を消す

青木 でしたね。あとは、方向性です。今回は左足上がりのライだったので、ボールは左に行きやすいです。その要素を消したいので、ボールに近づいてもらいました。

谷繁 ボールから離れれば離れるほどフェースは左を向きますよね。

青木 そうですそうです。打てば響く生徒で助かります(笑)。ですから、左に行く要素を消すため、ボールに近づいてハンドアップにしてもらいました。

谷繁 だいぶ近いなという違和感はありましたけどね。でも、アドレスが決まると、あとはさっきと同じようにポンと打つだけなんですよね。そこで、変な小細工は必要ない。

青木 左に球が行きやすいライでしたが、今度はやや右めに行きましたよね。

谷繁 それは、ボールに近づいた効果なんですよね。

青木 谷繁さんなら、フラットなライなら上手にアプローチできると思うんですが、練習場とは違い、コースではまったく同じライなんてないですからね。スタンス幅で距離感、ボールとの近づき方で方向性。それを組み合わせたら、アドレスが決まる。

谷繁 アドレスを決めるところでほぼ勝負は始まっているんですね。

青木 勝負は、自分が思うよりうんと早く始まっています。

谷繁 準備の大切さは野球人生でも十分わかっているんですけどね。バッティングなら、バッターボックスに入る前から始まっているし。古い話になりますが、僕が、なぜ地元広島の高校に入らず、島根の江の川高校(現・石見智翠館高校)へ進んだか……そのあたりも準備の大切さがわかるエピソードなんですよね。

青木 えっ、それはどんな?

谷繁 ろくに受験勉強をしないまま、志望校の広島工業高を受けて不合格になったという準備を怠ったことで起きたエピソード。

青木 ……。

谷繁 それで二次募集をしていた江の川高校に進んだんですけど、2年、3年時に夏の甲子園に出場できたんです。さらに、親元を離れて寮生活を経験したことで、まず洗濯の大変さを学び(笑)、上下関係の厳しさももちろん知った。練習は厳しくて、その日その日はつらかったんですけど、長期的に考えたら、その3年間はプロとして花を咲かせるための重要な準備期間だったんです。詳しい内容は「谷繁元信のプロ野球『通』」(ビジネス社)に出ていますので……。

青木 うわ、こちらは神妙な面持ちで聞いていたら最後に、本の宣伝を入れてきましたね(笑)。

谷繁 あはははは。4月1日に出たばかりなんでよろしくお願いします。

青木 そういうことなら、来週は、谷繁さんが最も苦手とするグリーン周りのアプローチからやってもらいます! ザックリ、チャックリ、許しませんよ。

谷繁 そういうのね、実は大歓迎。いつものミスの再現からお見せしますよ(笑)。

狙う距離のスタンス幅ではなかったが、器用なだけにまた手先で調整していた谷繁。青木は見逃さない

週刊ゴルフダイジェスト2024年5月7・14日合併号より

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