【イザワの法則】Vol.46 アプローチは基準となるピッチ&ランを徹底的に磨きましょう
アプローチの際、プロは多彩なワザを繰り出すイメージがあるが、実際は何種類くらいの打ち方で対応しているのだろうか。またアマチュアは、何種類くらいの打ち方を覚えるのがいいのだろうか?
TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura PHOTO/Hiroyuki Okazawa THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)
特殊な打ち方が
必要となる場所には
外さないのが鉄則
プロでも、ショットには少なからず調子の波がありますが、アプローチにはそれがあまりありません。試合でも、よほど厳しいロケーションが続かない限り、そこでスコアを大きく崩すということはないということです。男子プロのほうが、コースのセッティング上、いろいろな打ち方を求められるケースが多いので、ワザの引き出しは多い傾向があります。対して女子プロは多彩なワザを身につけるよりも、それが求められる場所には絶対に外さないマネジメントのほうに力を入れている選手が多い印象です。どちらかといえば、女子プロのやり方のほうがアマチュアには参考になるかもしれません。
どうしたらアプローチがうまくなるのかと、よくアマチュアの方に質問されますが、まずは基本になるピッチ&ランを一生懸命練習する必要があります。たとえば、トータルで15ヤードの平らなアプローチであれば、私なら58度のウェッジを使って、9ヤードくらいキャリーさせて、残り6ヤードで止まるイメージが基本のピッチ&ランです。キャリーをもっと伸ばすと止まり切らないし、逆に7ヤードのキャリーだとスピン量が減るのでランが伸びますが、それでも少し手前で止まってしまう感じがします。
基本の打ち方に加えて
上げる球と転がす球が打てれば完璧
もし、基本のピッチ&ランが安定して打てるようになったとしたら、ほとんどのアプローチは同じ打ち方で対応できます。トータル15ヤードでキャリーが9ヤードというのを、20ヤードならキャリー15ヤードとか、10ヤードならキャリー6ヤードとか、自分なりに調節すればいい。実際はグリーンの速さや、上り下り、ライの状況など、考慮に入れなくちゃいけないパラメーターがたくさんあるので簡単ではないですが、同じ打ち方での経験値がたまっていくと、キャリーの判断も早く、正確になっていくと思います。
一般的なコースなら、ひとつの打ち方で十分対応できるとは思いますが、それに加えて、基本のピッチ&ランより少し高く上げて短い距離で止まる球と、少し低く出してやや長く転がす球の2種類、計3種類の打ち方ができると、さらにどんな状況でも寄せられる可能性が高まります。川奈GCの17番みたいに、グリーンを外したら「崖下」みたいなところからロブショットを打たないと寄らないケースもありますが、そんな状況はめったにないので、とくにアマチュアの場合は3種類の打ち方で大丈夫だと思います。
気を付けないといけないのは、使っているクラブのロフトとボールの種類です。とくにボールは大事で、プロ用のボールだと先ほどの9ヤード:6ヤード(トータル15ヤードの場合)のキャリー、ラン比率が可能ですが、飛び系のボールだと、9ヤードキャリーさせたときに、倍以上転がってしまうこともあります。また、飛び系ボールのほうが出球が高くなるので、狙った高さに出すためにロフトが立ったクラブを使わなくちゃいけないケースもあります。どんな球を「基準」にするか、自分自身で決める必要があるということです。
「基本の打ち方で止められるなら
ほとんど全部同じ打ち方で対応できる可能性が高い」
難しいことをやろうとしない!
基本となるピッチ&ランに対して、少し上げてすぐに止めたいときは、ボール位置を左足寄りにする。転がす距離を長くしたいときはその逆(ボールが右足寄り)。それ以外のセットアップ(手の位置など)と、打ち方そのものはほとんど変わらない
伊澤利光
1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中
月刊ゴルフダイジェスト2024年9月号より