【陳さんとまわろう!】Vol.246 スクエアグリップは非常に大切なんです
陳さんのスウィングの代名詞的存在「スクエアグリップ」。あらためてつくり方を教えてもらった
TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ
精度の高いドローボールは
この握り方から始まる
──ベン・ホーガンの「モダン・ゴルフ」(ベースボール・マガジン社刊)が日本で出版された2年後の1960年に「陳清波の近代ゴルフ」(報知新聞社刊)が出版されました。この中で陳さんはスクエアグリップの重要性を説いていますが、ここで陳さん流スクエアグリップのつくり方をあらためて教えてもらえますか?
陳さん いいですよ。私のゴルフを理解してもらうためには、スクエアグリップが避けて通れないからね。私のレッスンを受ける人にスクエアグリップに直してもらうのはそのためよ。精度の高いドローボールはスクエアグリップで初めて打てるようになるし、年を取ってからも飛距離が落ちないからな。
──その飛距離が落ちないというのがなんとも魅力ですね。
陳さん そうでしょ。じゃあね、まず左手。これはグリップラバーの下から握るんですよ。下からというのは、こうやって人さし指から小指までの付け根をグリップラバーの真下にあてがうということですがね。すると親指はこのようにグリップラバーの真上に乗るようになるはずよ。こうやって握ると人さし指から小指までの爪が見えるようになるの。左手をかぶせたフックグリップでは、これが見えないわけね。
──左の甲がピタッと目標を向くような感じになってますね。
陳さん はい。目標に向かう線に直角。だからスクエアグリップなんですよ。こうやって下から握る左手に対して、右手は上から握るんだね。上から、生命線を左親指の右横にかぶせるように乗せる。すると右手の母指球と小指球のふくらみで左親指をはさみ込むようになるんだ。だからしっかり握れるの。右の小指は左の人さし指に乗せる感じでいいです。このグリップはベン・ホーガンのグリップでもあるんですからね、身に付けるといいことがあるよ(笑)。
──ホーガンは右手親指と人さし指の付け根にできるV字があごを指すと説明しています。
陳さん はい。いまつくった私のグリップもそうなっているでしょ。こうやって限界まで握っておけば、いくら叩いてもボールは左に行かないんだ。叩けば叩くほどいいドローボールが出るんだよ。でも叩かないと右に行く。
──叩くというのは、手を左に返しながら、回しながら。ということはクラブフェースを左に回しながらボールを打ちにいくということですね。
陳さん そうです。返しながら打つから左回転のドローボールが出るし飛距離も出るの。これをフックグリップでやったら、右から左へと手の返しが大きくなるんですから、とんでもなく左へボールが飛んでいきますよ。昔の私みたいにね(笑)。グリップのことなんか何も知らなかった修業時代は左手をかぶせ、右手を開いて握るフックグリップでしたからね、力を入れて叩こうとすると手が返ってみな引っかけボール。ブーメランのように戻ってくるかと思えるようなボールが出たものね。
──陳さんはクラブをハンドアップで構えていますが、それはスクエアグリップと関係あるんでしょうか?
陳さん スクエアグリップにすると自然にハンドアップになるんですよ。手が高い位置にセットされるの。ホーガンも同じ。きれいな構え方だよ。ハンドアップで構えると左手の小指側が締まるのがわかると思いますがね、これでさらにクラブがしっかり振れるわけよ。
陳清波
ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた
月刊ゴルフダイジェスト2024年3月号より