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【陳さんとまわろう!】Vol.245 ベン・ホーガンのグリップには驚かされました

陳さんのスウィングの代名詞的存在「スクエアグリップ」。これもベン・ホーガンに大きく影響されていたのだ

TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ

前回のお話はこちら

1日1ミリずつ
かぶせ幅を修正していきました

──ベン・ホーガンのスウィングを英国ウェントワース(1956年)とメキシコ(58年)のワールドカップで見て、そのショットの凄さに驚いた陳さんですが、それが下半身の動きばかりでなくスクエアグリップから生まれるものだと知って……。

陳さん はい。ずいぶん参考にしましたよ。ホーガンはボールを引っ叩くんだ。彼、腕がものすごく太いんだよ。それで思い切りボールを叩くわけね。それでいながらアメリカ代表で一緒に出ていたサム・スニードより正確にボールを運んでいくから驚くわけよ。スニードはスウィングでボールを打つタイプですから、体の動きがとてもきれいなの。だからこっちのほうが正確なショットを打つと思うでしょ。ところが違ったんだ。ホーガンよりブレるんだねえ。


ホーガンのようにボールを引っ叩けば、たいてい引っ掛けるんですよ。それなのに引っ掛けないのはスクエアグリップでクラブを握っているからなんだねえ。ホーガンは私の強さの秘密を教えるという謳い文句で「モダン・ゴルフ」という本を出版して(米国57年、日本58年/ベースボール・マガジン社)、その秘密がスクエアグリップにあることを紹介しましたがね、これを私も読んで、スクエアグリップの効用を遅ればせながら理解したんですよ。

――陳さんはスクエアグリップを川奈(ホテルゴルフ場)に修業に来ていたときに、陳清水(ちんせいすい)さんから教わったんでしたね。

陳さん そうです。清水さんは私が育った台湾ゴルフ倶楽部(淡水)の1期生のプロで、私の大先輩だ。早くから日本を足掛かりにしてアメリカ遠征をやっていて、そこで向こうの強いプロからスクエアグリップを学んで日本に持ち帰ったわけね。
そこへフックグリップの私が修業に現われたものだから、喜んでスクエアグリップを教えてくれたのはいいんだけど、グリップを直してナイスショットが出ても「いい」としか言わないんだなあ。だから何が「いい」のか、どういう球が出れば「いい」のかがよくわからないわけよ(笑)。
ただ、左手のかぶせ方を少なくするとボールが真っすぐ飛ぶようになったので、半信半疑ながらかぶせ方を少なく少なく、1日に1ミリづつかぶせ幅を修正していったわけ。握り方をいっぺんに大きく変えたら打てなくなるからね。
でも川奈で54年に半年、55年に3カ月間修業して、スクエアグリップにだいぶ慣れたといっても、まだまだ未完成ですよ。そういう状態のままウェントワースでホーガンを見てびっくりして、グリップを見たら私よりもっと左手を開いて握っていることに気が付いたわけね。

――左手親指をグリップラバーの真上に置き、右手は親指と人さし指の付け根にできるV字があごを指すという有名な握り方ですね。

陳さん そうやって握ると、ダウンスウィングで手に返しを入れて、クラブフェースをスクエアに戻していかないとボールが真っすぐ飛んでいかないんだ。その手の返しが「モダン・ゴルフ」にコマ落としの絵で描いてあって、それがまた動きがよくわかるんだねえ。

――陳さんはいつ「モダン・ゴルフ」を読んだんですか。

陳さん 東京ゴルフ俱楽部に所属してからだね(59年)。だから日本語版を。ホーガンの生のスウィングと彼の本で私のグリップ、スウィングに磨きがかかったというわけよ。

陳清波

陳清波

ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた

月刊ゴルフダイジェスト2024年2月号より