Dr.クォンの反力打法 Vol.24 オーバースウィングが悪いとは限らない
トップでクラブが深く入りすぎてしまう「オーバースウィング」。通常よくない動きとされるが、クォン教授によると「いいオーバースウィングも存在する」という。
【語り手/クォン教授】
ヤン・フー・クォン。テキサス女子大学教授。専門はバイオメカニクス。生体力学的に理に適ったスウィングを研究。教え子にタイガーの元コーチ、クリス・コモらがいる
【聞き手/吉田洋一郎プロ】
よしだ・ひろいちろう。D・レッドベターをはじめ、世界の名だたるコーチのもとを訪れ、最新理論を直接吸収。日々探究・研鑽に余念がないゴルフスウィング研究家
吉田 先生は以前、カウンター動作(反動)が大事だとおっしゃっていました。
クォン ダウンスウィングのクラブスピードを上げるためには、カウンター動作としてのバックスウィングもある程度勢いが必要、という話だったね。
吉田 でもクラブを勢いよく上げると、オーバースウィングになりやすい気もします。
クォン オーバースウィングは悪だと考える人もいるが、必ずしもそうではない。いいオーバースウィングと悪いオーバースウィングがある。
吉田 その違いはなんですか?
クォン ダウンスウィングの始動が上手くできてさえいれば、オーバースウィングであっても何の問題もない。むしろ、オーバースウィングのほうが飛距離を出すうえでは有利といえる。その証拠に、ドラコン選手などの飛ばし屋はオーバースウィングが多いよね。
吉田 たしかにそうです。ではダウンの始動は具体的にどうなっていればよいのでしょうか?
クォン 下の図を見るとわかりやすいね。AとBはともにプロレベルのゴルファーで、どちらもトップでヘッドが手元よりも下にきている、いわゆるオーバースウィングだ。2人の違いは、BのほうがAに比べて、ダウンの早い段階で”キャスティング”してしまっていること。
吉田 Bは手首が早くほどけてしまっているということですね。
クォン これが「悪い」オーバースウィング。オーバースウィングが悪いと言われる理由は、このようにキャスティングが早くなるケースが多いから。だが逆に言うと、手首のコックをキープしたまま下ろすことができれば、オーバースウィングであってもまったく問題ないわけだ。
吉田 それがAのスウィングですね。
クォン Aのようにダウンで手首をほどかず、体の近くにクラブをキープすることができれば、オーバースウィングの利点を最大限に生かして、高いクラブスピードを得ることができる。早いキャスティングは、クラブが外から下りやすくなったり、左ひじが引ける動きを誘発するだけでなく、クラブスピードのダウンにもつながってしまう。実際に、Aのクラブスピードが50.8m/sなのに対し、Bは44.9m/sにとどまっている。
吉田 なるほど。オーバースウィングも使いこなせれば強い武器になるわけですね。
クォン もちろん、ちゃんと芯に当てられれば、という条件付きだがね(笑)。
Dr. クォン&吉田洋一郎
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