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ヒッコリーにニッカーボッカー、愛車はクラシックカー…究極のこだわりゴルファーの集いに潜入!

ゴルフの楽しみ方は人それぞれ。競技志向でスコア重視の人、好きなファッションに身を包むことが楽しい人、仲間と楽しく回りたい……などなど多様。そんななか、ニッカーボッカー姿でゴルフを楽しんでいる人たちがいると聞き、訪ねてみたら、クラブはヒッコリー、愛車はクラシックカーという、こだわりゴルファーの集まりだった。

TEXT&PHOTO/Takeo Yoshikawa

そこはゴルファーを楽しくさせる
ワンダーランドだった。

夏のある猛暑日、岐阜市内のとある大邸宅を訪ねて行った。

建物に入ると、そこにはおびただしい数といえるほどのヒッコリークラブとパーシモンクラブがあり、壁にしつらえた本棚には貴重なゴルフ本も多く所蔵されていた。1970年代後半、アメリカのツアー選手が名器と呼ばれるパーシモンクラブやパターを手にして戦っていたが、それがブームとなり、やがて日本にも波及してきた。

当時、最も人気があったのがマグレガー社のクラブで、いずれも美しいフォルムと木目を備え機能美を誇っていた。一方、パターといえばやはり帝王ジャック・ニクラスが愛用したジョージ・ローのウィザード600、そして初期のピン・スコッツデールの2本だろう。これらのクラブは、ブームの最盛期には想像をはるかに超える値が付けられ取引されていた。そんなブームも去って久しいが、クラシッククラブの持つ魅力は色あせることなく、愛好家が絶えることはない。

訪れた日はある祝賀会が執り行われていたが、参加者はゴルファーで、愛用クラブはパーシモンよりさらに時代を遡るヒッコリークラブ。そしてゴルフ場に向かうときはクラシックカーという徹底ぶりで、身にまとっていたのはニッカーボッカーというこだわり。

1930年代にタイムスリップしたかのような楽しい岐阜の一夜だった。

クラシックカーを数台所有してイベントやレースに参加したり、ヒッコリーの世界大会に出場するなど、もはや趣味とはいえないほど本格的ながら、誰にでもフレンドリーで和気あいあいなのが素晴らしい

「新旧、それぞれの楽しみ方があります」
新谷永さん・ひろみさん

●年式・車種/1933年 MG Lタイプ SP
●使用クラブ/タッドモア

「古い車は1932年のアストンマーチン、ロータス・エラン、オースチンA35やジャガーEタイプなども所有しています。ヒッコリークラブでのプレーは、現代のクラブとは異なったマネジメントが必要になりますね。飛距離がだいぶ違いますから。現代の車と古い車との違いのようなものでしょうか。ヒッコリーと古い車、新しいクラブと今の車、それぞれに良いところがあり、どちらにも楽しみ方がありますね」

(左)最新の車と違いハンドルのパワーアシストがないだけに腕力も必要になる/(右上)運転席というよりむしろ操縦席といったほうがふさわしい/(右下)愛用クラブは、最新技術でヒッコリーシャフトのクラブを製作しているクラブデザイナーのタッドモアモデル

「ヒッコリーではナイスショットが出ないですね」
前田義夫さん

●年式・車種/ジャガーXK120
●使用クラブ/タッドモア

「ヒッコリークラブでは、なかなかナイスショットは出ないですね。6月に三重県の津CCで行われたヒッコリークラブ2本だけでスコアを競う「弐本選手権」に出場したのですが、飛ばそうとして思わず力が入ったようで、左腕と腰に痛みを感じて、翌日、整形外科に行きました。その後、別のプレー時には捻挫もしてしまいました」

愛用のクラブは現代の技術でリメイクされたタッドモア


「ゴルフを始めた時からクラシッククラブを愛用」
坂野靖明さん

●年式・車種/1970年 ポルシェ911S
●使用クラブ/マグレガー ターニー(ウッド)、マグレガー トニー・ペナ(アイアン)、ウィルソン ダイナパワー(SW)、マグレガー ルイス・サッグス(パター)

薄いブルーとオレンジのツートン、「ガルフカラー」に塗られた1970年製のポルシェ911S

「ゴルフを始めたときからパーシモンクラブを使っています。アイアンはマッスルバックです。今、愛用のドライバーはトニー・ペナがデザインした1959年製のターニー。アイアンもトニー・ペナで63年製、パターは51年製のものです。車は50年以上前の、いわゆる「ナローポルシェ」と言われている911の初期モデルで、この車でゴルフにも行きますが、レース用車両なのでサーキットも走ります」

マグレガーが最も優れたクラブを製作していた時代のパーシモンクラブとマッスルバックアイアン

「最新クラブでのプレー時も、パターだけはヒッコリーです」
●柳幸治さん

●年式・車種/1960年 ポルシェ356B
●使用クラブ/ジョージ・二コル

緑のポルシェ356Bはマニア垂涎のモデル。ちなみにかのスコッティ・キャメロンもポルシェ356を愛用していた

「クラシックカーは20年前ほど前から乗っています。ニッカ―ボッカ―でのゴルフは友人たちに誘われてからですね。コースに行くと、多くの人に話しかけられます。現代のクラブでミスをすると悔しいですが、ヒッコリーでナイスショットが出ると、とてもうれしくなります。いつものクラブと違い、オールドファッションではゴルフスタイルも変わってきますね」

ジョージ・ニコルのクラブを愛用しているが、最新クラブでのプレー時もパターだけは同じ感覚を保ちたいとヒッコリーを使用する

「2019年の世界ヒッコリーオープンで優勝しました」
福本勝幸さん

●年式・車種/1963年 モーリス クーパーS
●使用クラブ/ジョージ・二コル

「友人のホールインワンコンペに参加したときからヒッコリークラブを使い始めました。スコアがよかったことからスコットランド人のアレックス・ブルースさんから「ヒッコリークラブとの相性がいい、ヒッコリーでの世界大会に出ないか」と誘われ、2019年大会でチーム優勝しました。日本には、まだヒッコリー協会がなかったので、友人と協会の支部を設立しました」

(左)愛用クラブはジョージ・ニコル/(右)世界ヒッコリーオープンでの優勝メダルを手に

「ヒッコリーでナイスショットをすると気持ちいいです」
上島隆弘さん

●年式・車種/1965年 MG- B
●使用クラブ/ジョージ・二コル

「いままでミニやロータスなど英国車を愛車にしてきました。ゴルフ仲間に誘われてニッカーボッカーでヒッコリークラブを使ってゴルフをするようになりましたが、なかなか上手く当たらないですね。ただ、当たったときは気持ちいいですよ。ニッカ―ボッカ―とヒッコリークラブでのプレーは、いつもより構えてしまって、必要以上に力んでしまうことが多いです」

愛用クラブはジョージ・ニコル

「スコア、飛距離ともそれほど変わらないですね」
小谷恒夫さん

●年式・車種/1994年 バーキン7
●使用クラブ/ジョージ・二コル

「2018年に友人のホールインワンコンペに参加したところ、古い車とヒッコリークラブやパーシモンクラブを知り、いろいろと調べてみました。実は大工の息子なので、木に対する親しみは人一倍あるんです。古いクラブでプレーをしてもスコア、飛距離はあまり変わらないですね。少し前に、2本のクラブだけでプレーをする「弐本選手権」に参加したのですがスコアは「49」「49」でした」

(左)トランクがないのでクラブは助手席に置いてコースに向かう/(右)クラブはジョージ・ニコルのセット

ガレージには名器がぎっしり

近くにある別棟のガレージには、時代を彩った多くの名器が保管されていた。将来的にはこれらの所蔵品を展示して、誰もが自由に見学ができるようにする計画があるそうだ

週刊ゴルフダイジェスト2022年9月27日号より