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【頑固オヤジ】Vol.156「アイアン型UTをやさしく打つチューンはある?」

東京下町でゴルフ工房を営む店主がギアに関する悩みに答える連載「頑固オヤジのクラブ工房」。今回のお悩みは、アイアン型UTを打ちこなすためのチューンナップ法について。

ILLUST/Kochi Hajime

前回のお話はこちら

Q. アイアン型ユーティリティを
やさしくするチューンとは?


風の強い日に、低弾道を打てるアイアン型のユーティリティを使いこなしたいと考えています。ですが、フックやスライスが出て安定しません。何か安定感が増すチューン、ありませんか?


バックスピンの量を
増やすことが大事

全英オープンと全英女子オープン、面白かったな、特に最終日。好打の応酬で優勝争いなんて、メジャーの舞台では久々だったよな。渋野選手も惜しかったな。

見てて思ったんだけど、やっぱりゴルフは“狙い打ち”ができる選手が一番強いな。全英で優勝したキャメロン・スミスも2位に入ったキャメロン・ヤングも、飛ばすだけじゃなく狭い所を上手くとらえていた。パットが上手いだけじゃ、メジャーでトーナメントレコードは出せないよ。

「読者からの質問です。風の強い日やレイアップ用に、アイアン型ユーティリティを使っているというシングルさんですが、フックやスライスのミスが出やすいとか。方向性が安定するチューン方法を聞きたいそうです」


この暑さでウチも客足が遠のいている感じなんだが、ゴルフ雑誌は年中無休。担当さんも炎天下の訪問、大変だよな。

「オイラは基本的に、アイアン型はアマチュアには薦めないんだけどね、難しいから。プロ並みのヘッドスピードと技術がないと、ロフト角22度以下のロングアイアンもどきなんて、打ちこなせるとは思えないんだよ」

「でも、ショートウッドじゃ打球が上がりすぎて、風の中ではライン出しできないから、ユーティリティを選ぶんですよね。打ち出しが低いゴロのような弾道でも、左右にブレなければいい、という使い方なら、アリでは?」

「それじゃ、飛距離がバラついてダメ。スコアを作るなら、キャリーをきちんと整えないと。それにはバックスピン、タテ回転をしっかり増やすこと。そのチューンが必要なんだよ」

フックの要素を鉛貼りで演出

「スピン量を増やすと、風の日には吹き上がってしまうのでは?」

今どきのボールはロングショットでは低スピンになる設計が主流。特にシングルやアスリート系ゴルファーが使うプロモデルは。

「アイアン型ユーティリティもスピン量を抑えて飛距離を伸ばす設計が多いから、アマチュアのヘッドスピードだとスピンが減りすぎて、打球が上がり切らない。それで無理してつかまえようとするから、シングルの腕前でもスライスやフックが出るんだよ。

だから、スピン量を増やすチューンをする。元々、昔のロングアイアンの特徴てのは、低い打ち出しで、スピンでキャリーを出していたから、風に強く曲がり幅も少なかったんだ。ドライバーみたいに高打ち出し+低スピンで飛ばす、なんてシロモノじゃないのさ」

スピン量を増やす、と言っても何千回転も上げるわけじゃない。少しつかまりを良くするイメージでいい。

「構えた見た目もあるし、素材的にもネックを曲げる、ロフト角を増やすというのはできない。一番有効なのは、ヘッドの背面やソールを少し削って軽量化し、少し長尺化すること。でも、使い勝手とかが変わるリスクが大きい。

オススメは、鉛貼り。1グラム前後をヘッド背面の四隅、トウ上、トウ下、ヒール上、ヒール下に貼り替えて、試してみる。ヘッドの挙動が変わって、フック系の球が出やすくなる位置を探すんだ」

「フック系だと、逆にスピンが減るんじゃないですか?」

「ドライバーのホーゼルのカチャカチャ調整とは違って、重心位置とか変えているわけじゃないんだよ。あくまでヘッドのターンする挙動の緩急や向きを、鉛で調整しただけ。それで“フェースで包み込む、フェースに乗る動き”が促されるポイントがあるんだ」

つかまる挙動のヘッドでつかまえすぎないように振る。これがスピン量を増やすコツなんだよ。ライン出しにはこの感覚、必要だと思うよ。

月刊ゴルフダイジェスト2022年10月号より