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【頑固オヤジ】Vol.151 「パターは“重いほうが安定する”とは限らない」

東京下町でゴルフ工房を営む店主がギアに関する悩みに答える連載「頑固オヤジのクラブ工房」。今回のお悩みは「パターの適切な重量」について。

ILLUST/Kochi Hajime

前回のお話はこちら

Q. 春先のグリーンに
重いパターは合わない?


オデッセイの新しいパターを購入。早速ラウンドで使用したところ、ロングパットの距離感がボロボロで3パットだらけに。慣れていないだけの一時的なものか、チューンが必要か教えてください。 (44歳・HC10・自営業)


“重さ頼み”は打てなくなる

なんか、急に暖かくなってきたよな。オイラ花粉症だから、あんまり早く花粉が飛ぶのは嫌いなんだけど、まあ寒いのが長く続くよりはいいかな。

「オヤジさん、パター買ったんだけど全然ダメでさ。どうしたらいいかな?」

近所の工務店の常連さん、父親もゴルフ好きだったが、この2代目も月に2回はラウンドするようにしてるらしい。

「どのパターだよ?」

「オデッセイの『ホワイトホットOG』。インサートが好きで、新しいモデルに買い替えたんだけど、距離感がバラバラになって」

「なんか前のとスペック、変えてないかい? 長さとか」

「……あ、ウェイト、変えた。ショップがサービスで割り引いてくれたから、交換できるウェイトも一緒に買って。で、少し重いヤツにしたんだった」

「なんで重くしたの?」

「ウーン、重いほうが転がりは良くなるかな、と。春先は芽吹いたり、刈り込みが少なくてグリーンが変に重くなったりするから」


重いヘッド=転がりやすい、は本当だけど、パットは転がりすぎるのもダメ。加減するようになって、ドンドン打てなくなるから、ラインにも乗せられないし、距離感もチグハグになっていく。

「10グラムのウェイトを20グラムに2個とも替えた? それじゃ確実に重すぎるよ。とりあえず、元の重さに戻しな。え? 軽い5グラムのウェイトも買ってあるのかい。まあ、それも試してみてもいいかも。最近のパターは最初からヘッドが重い傾向にあるからな」

パターヘッドは軽いに越したことはないんだけどね。

寛容性の高さとヘッド重量は別

「でも、プロは重いヘッド、使っているんじゃ?」

「ヘッドが重くていいのは、振るテンポを落としたい、打ち急ぎを防ぎたい場合だけ。高速グリーン対応てのは、そういう意味だよ」

「ウーン、でも軽いとパンチが入りそうな気もするけど」

「お前さん、アプローチでUT、使ったことあるかい。FWでもいいけど。あれ、ヘッドもシャフトもウェッジとかアイアンより軽いよな。でも寄せやすいからプロも使うんだよ」

ソールが広くて滑りやすい、なんてのは二次的なことで、軽くて加速しやすいのに、ヘッドの慣性モーメントが大きくてブレにくいから、打球結果がそろいやすいのが強みだとオイラは思っている。

「ショートパットは重くても軽くてもいいんだが、ロングパットで距離感を合わせるには、UT的な軽いヘッドのほうがいいんだよ。昔、カマボコ型なんて呼ばれていたマレットタイプは、アルミ製で見た目以上に軽かった。それでいて重心深度が深かったから、UT的に寛容性も高かったんだ。重いヘッドをおっかなびっくりぶつけるような打ち方よりも、しっかり振れて、多少芯を外しても大丈夫な軽いヘッドのほうが、距離感は合わせやすくなると思うよ」

ピンの初期モデルも軽かった。トウ・ヒールバランスでスイートエリアを広げてあったから打点のブレには強かったけど、振りやすい重さだった。

「大体、パターの振り幅ぐらいで打点ブレの寛容性を重視するのもいかがなものかね。そこは練習繰り返して、打ち方を鍛えるべきなんじゃねえのかな。それに、T字型みたいに、芯は狭いけど芯に当てやすいのが売りだったモデルもある。ラインに乗せる意思を反映するには、こちらのほうが正解だと思うんだよ、オイラは」

重い=慣性モーメントが大きい、ブレない、みたいに言うけど、パットはもっと融通が利いたほうがいいと思う。下りのラインでもヘッドを出せるぐらいの、ね。

月刊ゴルフダイジェスト2022年5月号より