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4万円以下で手に入る「弾道計測器」の精度はいかに?「トラックマン」と比較してみた

弾道計測のシステムが導入されていない練習場やコースのドライビングレンジでも気軽に弾道が計測できる簡易測定器の精度はどれほどのものなのか。4万円以下で入手できるモデルをテストしてみた。

PHOTO/ Yasuo Masuda  THANKS /井山ゴルフ練習場

解説/阿河 徹

アメリカでゴルフスウィング理論を学び、現在は最新データを駆使してコーチングを行う

自分の平均数値を把握すれば
課題が明確に

まずは弾道を数値化することのメリットについて、阿河徹コーチに聞いた。

「ゴルフは飛ばすゲームではなく、距離を合わせていくゲームです。もちろんドライバーで気持ちよくかっ飛ばせたほうが残りの距離が短くなる分有利ですが、パー4でワンオンできるわけじゃない。2打目でいかにピンに寄せるかという正確性が大事になってきます。それはティーショットでも同じで、飛ばすことでかえって2打目が難しくなることだってある。スコアメイクをするうえで、各番手の“自分の距離”を知っておくことはアマチュアにとっても大事なんです」

ただし「自分の距離」というと、ランを含めた「総飛距離」で把握している人が多いと阿河コーチは指摘する。

「コースでは、落下地点の状況によってランの距離は大きく変わります。それはドライバーもアイアンもウェッジも同じ。狙ったところにしっかり打つためには、総距離よりも『キャリー』を把握しておくことが重要です」

例えば練習場で7番アイアンの弾道を計測して『総飛距離』が150ヤードだったとしても、実際にコースで残り150ヤードから7番で打つと130ヤードぐらいしか飛んでいない、ということがある。落下地点の地面が硬ければ20ヤードぐらい転がることもあるが、地面がぬかるんでいて柔らかかったり、ラフだったり、受けた傾斜だったりすると、ランがほとんど出ないこともある。だからこそ、キャリーでどの程度飛ぶかを把握しておくことが大事なのだ。

「また、アベレージゴルファーならキャリーの前にミート率の数値が大事。ミート率の低い弾道データはあまり参考にならないので、まずはミート率を上げる練習をするほうがベストです。キャリーとミート率、この2つを知るだけでもスコアアップにはかなり有効です。トラックマンなどの高性能モデルは入射角やスウィングディレクション(スウィング軌道)、クラブパスも数値化できますが、むしろそれがゴルファーを混乱させる可能性もあります。アマチュアの場合はなるべくシンプルに計測器を使いこなしたほうが良いと思います」


ミート率はドライバーで1.47以上、アイアンで1.40以上を目標にしよう
ミート率はボール初速÷ヘッドスピードで算出される数値で、1.5前後が最大となる。ミート率が高いほど、ヘッドの力が効率よくボールに伝わっている証拠。「ミート率が低いショットは自分の飛距離データの基準になりません。ドライバーで1.47以上、アイアンで1.40以上のデータを参考にしましょう」(阿河)

「ドライバーはトラックマンと
さほど数値の差はないですね」(阿河)

普段トラックマンを使っている阿河コーチに、4万円以下で手に入る簡易的な弾道計測器3モデルをテストしてもらった。

「ドライバーと7番アイアン、56度のウェッジでじっくりテストさせてもらいましたが、とくにドライバーの数値は3モデルともトラックマンとの誤差はかなり少なかった。4万円以下でも十分活用できると思います。ただ、100ヤード以下のウェッジでは数値に差が出ましたね。

これまで多くの弾道計測器をテストしてきましたが、実は遅い球を正確に計測するほうが難しいんです。カメラの付いていないレーダー追尾式の弾道計測器は、ドップラー効果(音源が動いているときに音の周波数が変化する現象)を使い計測しているのですが、動きが遅いと認識しづらいんです。それが100ヤード以内のショットの数値に表れたのでしょう。

それでもドライバーや長めのアイアンの数値は安定しているので十分武器になると思います。また、これらはiPadなどを使わずに機器本体に数字が出るのもいい。ゴルフボーイはiPhoneのアプリですし、どれもコンパクトで持ち運びやすい。キャディバッグに忍ばせておけるのはかなり魅力です。トラックマンはありとあらゆるスウィングデータが取れますが、iPadも一緒に持たなければいけないし、セットアップも意外と時間がかかるんです」

今回の検証で使用した3つの簡易計測器

●プロギア「レッドアイズポケット HS-130_BLE」(写真右)
ボールの1~1.2m後方に設置するだけで弾道を計測できる。Bluetoothを搭載し、スマートフォンと連携することで計測データ履歴を管理することもできる。電源は単4電池4本。価格/ 3万6300円

●ユピテル「ゴルフスイングトレーナー GST-8 BLE」(写真中)
こちらも飛球線後方に1クラブ離して設置するだけで簡単に計測できる。スマートフォンと連携すると、クラブヘッドの最下点を数値化する「ダフリ&すくい打ち対策機能」も使用できる。価格/2万1780円

●ゴルフボーイ(写真左)
スマートフォンのカメラなどを駆使して弾道を計測できるiPhone用アプリ。ミート率や飛距離だけでなく、打ち出し角や弾道高さなども計測可能。ボールを俯瞰から撮影するため、スマホを固定するための三脚が必要になる。価格/月額500円

「トラックマン4」の数値と比較

多くのプロが使う弾道計測器。入射角やクラブ軌道など細かな動きを数値化できる。世界中のコースもバーチャルでプレー可。価格/285万4500円〜

ドライバーはトラックマンの数値とそれほど差がなかった

ウェッジなど短い番手では差が見られた

※ドライバーのヘッドスピード45m/s相当で計測。レンジボールを使用し、ベスト5球の平均値を取った

<阿河’s IMPRESSION>

●レッドアイズポケット
「100ヤード以上のショットは、総飛距離、キャリーともにトラックマンとの差は少なくかなり高性能! ただ、ミート率と短い番手の飛距離は少し不安かも。ショットの距離を把握するのにはいいと思います」

●ゴルフスイングトレーナー
「ドライバーの数値はどれも許容範囲。画面が見やすくて操作しやすいのもGood。でも50ヤード前後のウェッジショットはトラックマンとの差が大きかった。長い番手専用と割り切ったほうがいいかもしれません」

●ゴルフボーイ
「アイアンでキャリー10ヤードの誤差は出たものの、ドライバーの数値はトラックマンとほとんど差がなかった。打ち出し角や弾道高さも計測できるし、年間6000円と考えると、頻繁に練習する人にはいいかも」

週刊ゴルフダイジェスト2025年5月13・20日合併号より