Myゴルフダイジェスト

【目澤秀憲の目からウロコ】佐藤謙太郎編③「リンクスはなぜ難しいのか?」

目澤秀憲コーチが、異業種からゴルフのヒントを得る連載「目澤秀憲の目からウロコ」。前回に続き、ゴルフコース設計家の佐藤謙太郎氏。イギリスの「リンクス」の難しさは、吹き続ける強い海風(gale)による部分が大きいが、設計者の目線で見ると、それ以外にもゴルフコースとして優れた点があるという

TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Tadashi Anezaki

佐藤謙太郎 73年からゴルフ場設計および建設業務に携わり、その間海外にも学ぶ。88年、㈱M&Kを設立し、その後、本格的にコース設計・監修事業に取り組む。これまで設計、改修したコースは海外14、国内28。現在も複数のコースを手掛ける

目澤秀憲 ゴルフ界の最先端を知り尽くすコーチ。現在は河本力、金子駆大、永峰咲希、阿部未悠などを教える

>>前回のお話はこちら

平らな地形の難易度 見逃されやすい

目澤 前回は「風」がテーマでしたが、風といえばやはりイギリスの「リンクス」の印象が強いです。

佐藤 リンクスというのは本来、自然の地形のことを指しますが、そこにゴルフコースが造られたということになにか、運命的なものを感じます。というのは、コース設計者の視点から見ても、イギリスのリンクスほどコースとして優れている設計はないと思うからですね。

目澤 自然の地形と風、ということですよね。元々はバンカーですら自然にできたと言われていますし。

佐藤 海の存在が大きいんですよ。シーサイドにあるからこそ、常に風が吹いていて、しかもそれが季節によって、日によって、時間によって変わるわけでしょ? コースレイアウトは同じなのに、風によっていろいろな「顔」を持つようになる。これだけは、設計の力では再現しようがないです。


目澤 確かにそうですね。それに加えて気温の変化とか、あと雨も多いですよね。

佐藤 設計家目線でリンクスが優れていると感じる点がもうひとつあって、それが「排水」を考える必要がないということなんです。リンクスの土壌というのは基本、砂地ですから元々水はけがいいんですね。日本だと、とくにグリーンは暗渠(土中に設置する排水設備)工事が必須ですし、コース全体にわたってどちらに傾けるかとか(グリーンやフェアウェイに傾斜をつけ、高低差を利用して排水を促す)、大変なんですよ。

目澤 リンクスってずっとフラットですけど、そう考えるとすごいことですね。フラットなのに雨が降っても地面がぐずぐずにならない。

佐藤 ずっとフラットな地形って、距離感がわかりづらいじゃないですか。それも、リンクスの難易度を上げる要素になってますよね。日本のコースでも、たとえばグリーンの奥にマウンドがあったりすると、これはすごく簡単で距離感がわかりやすいんです。逆に、奥が抜けていると距離感がつかみにくくて難しい。

目澤 それはよくわかります。それと、リンクスってバンカーの位置がわかりづらいですよね。ずっとフラットだから、ティーイングエリアに立っても見えないことが多い。

佐藤 それはちょっとコツがあって……、たとえばこういう平面のコース図があるじゃないですか(と、メモ用紙にさらさらとコース図を描き始める)。それを奥に傾けてティーイングエリア側から見るわけですよ。そうすると、実際の景色と照らし合わせて、なんとなく「ここにバンカーがあるな」というのがわかるんです。

目澤 そういうコース図の使い方があるんですね!

佐藤 設計者はその逆で、実際の景色として見えるか見えないか、ぎりぎりのところにトラップを仕掛けるわけですね。

「オーガスタ」の設計図は現代に通じる教科書だ

ボビー・ジョーンズとアリスター・マッケンジー博士の共同設計による傑作コースが「オーガスタナショナルGC」(米ジョージア州)。その設計図は現代でも多くの設計家たちが研究の教本としている


ヤーデージより長く見せるにはコースを「絞る」

ヤーデージよりホールが長く見えたり、短く見えたりすることがある。「ホールの左右に立ち木を配置して、その間隔を狭くすると長く見える」と佐藤氏。近い木に目線を誘導することで、相対的にターゲットまでの距離を長く見せている

「設計家の『意図』がわかるとコース攻略が楽しくなりそう」
グリーンの奥が抜けているときとそうでないときで、距離感のつかみ方の難しさが変わるというのは「肌感」でわかってはいましたが、改めて設計家目線で説明していただくと、だからあのコースのあのホールはこうなっているのか、という感じでいろいろ腑に落ちました。フェアウェイにあるバンカーも、ティーイングエリアからはっきり見えるものは「視覚的効果」のほうが強くて、本当のトラップは「見えるか見えないか」のところに置くというのが参考になりました。

月刊ゴルフダイジェスト2026年10月号より