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【ゴルフ野性塾】Vol.1752「不安と恐怖がミスを生む。それがゴルフ」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

今日9月28日、水曜日。

午後11時27分。
夕方5時過ぎ、大濠公園に向った。
下はジャージに上はマンシング半袖ポロシャツ。
そして薄手のセーターを着てアシックスのランニングシューズを履いて15階から降りた。
大濠の周り、走る人、歩く人、自転車に乗る人、時計回りと反対の人、時計回りの人、1人で行動する人、2人3人の行動、集団で走る人とそりゃ様々な人で1周2キロの大濠の道は混んでいた。
歩く人は道の端を歩いた。
私もその1人であった。
小さな犬を3頭引き連れて歩く人がいた。大人しい犬だった。吠えもせず、飼い主の歩くスピードに合せて3頭並んで歩いていた。50歳過ぎの女性と思えた。
追い抜かれた。
半周歩いた。半周は1キロだ。
そして、私の住むマンション、けやき通りの15階へ向った。
15階迄は1キロである。
何かを想い、何かを考えながら歩く道じゃない。
暑さ過ぎた今、大濠を歩く人の数、多くなった。
自転車のスピードも増した。大濠も大濠の外の歩道もだ。
女房殿の口癖である。
「自転車には気を付けて下さいよ。本当に危ないんですからネ」
前から来る自転車に注意する事は出来る。見て分る。
しかし、後ろから来る自転車の音は聞えないし見えもしないのにどうすりゃいいんだ。
やっぱり、右か左の端を歩くしかないのか。
歩行者の遠慮と警戒が要る大濠とその周辺の歩道じゃあります。
午後11時57分になりました。
あと3分で9月29日だ。
1日過ぎるのも早けりゃ1年過ぎるのも早い74歳から75歳へと向う途中。
あと13日で10月11日。私の75歳の誕生日である。
体調良好です。
それでは来週。

頭の中で12数えて始動せよ。

ゴルフ仲間にアドレスが長いと言われます。自分ではそんなに長いとは感じていませんが、30秒くらいじっとしているようです。アドレスで体が固まる前に動き出せ、と言葉ではわかっているのですが、上手くいきません。塾長、どうすればすぐに始動できるでしょうか。(大阪府・西岡燿平・45歳・ゴルフ歴8年・平均スコア100)


固着は一からの動きのリズムを必要とする。
体の何処かを動かしていたらリズムは動きの中に宿るものだ。
当然、固着よりは一瞬の反応、体全体の動きの初動スピードは高まる。
固着を解くは呼吸と思う。
相手のいる戦い、相手の呼吸を止めるか乱せば有利となるは確かなりし事。
何故ならば重心位置が変り、相手の動きに一瞬の遅れ生じるからである。
ゴルフに体と体をブッつけたり、組み合ったり、殴り合う相手は存在しない。
やはり、戦う相手は己の持つ不安、恐怖、諦め、臆病心、絶望であり、多くの方の18ホールのラウンドはそこから始まり、そこに帰着する様に思うのです。

今、私は不安の反対は自信と思っています。
恐怖の反対も自信であり、打算の反対も諦めの反対も自信であり、絶望の反対も自信ではないかと思って来ました。
楽しくやりたいの気持ちの持続に必要なのも自信だけだと思う。
ただ、私がツアー参戦したのは28歳の時だったが、自信持っての己との戦いは出来なかった。
常に不安、恐怖を持ち続けてのツアー参戦であり、ゴルフ出来る楽しさは持っていても楽しいゴルフの経験は稀であったと記憶する。
勝てば始まりも途中も終りも楽しいものだ。
私は小さな試合6試合しか勝てなかった三流半のプロだったが、それでもその6試合、楽しめたかと申せば楽しくやれたとの記憶はない。
やっぱり、不安、恐怖が常に己の気持ちの中に宿り、苦しい気持ちの方が強かった。
勝った6試合、パッティングで勝ったとの想いは持てなかった。ショットで勝てたとの想いは持てた。
悔いは多かった。悔いなきラウンドは一度もなし、だ。

今、細まる記憶ではあるが振り返ってみた。
勝った6試合、優勝トロフィー出たのは1試合だけ、残りの5試合は賞金だけのローカル試合だったが、プレー速度は速かった様に思う。
考え込む事はなかった。
思考のリズム、スウィングリズムに大きな乱れなきラウンドであったと記憶する。
長考の一手は時に悪手を生むのではと考える。
考え過ぎは複数の悩みを招くと思う。
考え過ぎの切り時は何事に於ても必要だ。納得出来る思考の時間は長くても考え過ぎとはならぬものであろう。
しかし、不安、恐怖を抱いての考えは考え過ぎとなる様な気はする。
貴兄の18ホールは不安と恐怖、そして臆病心を抱いての時を過されているのではと推察。

私も臆病な男ではあった。
決断の気持ちが余りにも薄かったと思う。
弱いと薄いは似ている様で似てはいないものだ。
弱ければ強さを求めるは可能だ。
視点を変えれば強さは生れる。それはジュニア塾で経験する事が出来た。
しかし、薄きものを濃くするのは難しい。
ジュニア塾でも進化論塾でも出来なかった。
私は弱き人間であり、決断力、薄き者であったと思う。
その事に気付いたのは観戦記執筆のペンを持ってからである。
人の振り見て我が振り直せを知るには不器用であり、順応力、対応力薄き人間であった。

振り返れば何か見える。
己の器の小ささか、己の影か、そして悔いの石っころの多さか。
貴兄の悩みは私の悩みでもあったと思う。
ただ、私はプレー遅き者ではなかった。
球の位置に行き、構え、打ち終える迄は早かった。
歩きも速かった。
今、周りは私の行動動作をせっかちと呼ぶ。
なれど短気ではない。
耳の通り、悪くはない。
頑固でもないし、偏屈でもない。妥協は好きだし、人任せも好きだ。
折れてくれと願われる事はないが、頼まれたら折れる気持ちも持っている。
物事や人への好き嫌いもない。あったとしても忘れるのは得意だ。

貴兄はミスを怖れるな。
怖れは時を喰う。
貴兄のスウィング始動の遅さは不安と怖れから生じているのではと推察する。
自信を持てと言われたって持てるもんじゃない。
やらなきゃ解決しないと分っていてもやれるもんじゃない。
それを承知の上で申す。
練習場での練習、アドレスしたら頭の中で数を数えよ。
12迄数えてのスウィング始動だ。
そして、それが出来る様になったらコースラウンド時、練習場よりは早い数の数え様で球を打て。
数えるは練習場と同じ12。
貴兄を変えるは12の数字。
この事、初期イップスに悩み始めた人への私からのアドバイスだったが、その方、簡単にイップスから逃れる事は出来た。
12の数字、ゆっくりと数えてもいい。早めてもいい。
貴兄の悩みを解消出来る数字は12と信じて貰えばいい。
以上です。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2022年10月18日号より