Myゴルフダイジェスト

【ゴルフ野性塾】Vol.1751「悪しき癖の修正は難しい」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

台風が行った。私が住む福岡市

中央区赤坂直撃かと思ったが、ほんの少し東南にズレて台風の眼は通過した。
その時間、想像した程の強い風ではなかった。
なれど雨は真横に振り続いていた。
窓を閉め切ったマンションにいると雨も風も然さしたる恐怖にはならない。
驚かされるのは部屋の揺れと風の音だけだ。
台風14号、マンションは揺れなかった。
ただ風の音にはこれまで聞いた事のない金属的な音が混じっていた。
だがその音も一夜眠れば記憶薄まった。
この風をエネルギーに変える事出来ればどれ程の益になるのかと思う。
エネルギーをバッテリーか何かに蓄える時代は30年先か、それとも50年か。
そんな事を想いながら眠った。

今日9月20日、午前10時45分。
長男雅樹は8月21日に我が家を離れ、兵庫県西宮市の大手前大学へと向った。
そして、関西学生秋季一部校対抗戦に出場する男子と女子の指導に入ったが、女子は8校中2位、男子は6校中5位と地味な成績で終った。
なれど10月25日から28日に石川県の片山津GCで行われる全日本大学選手権の出場資格は得た。
この10年、全日本大学選手権への出場、女子は常連校となり、男子は3年振りの春秋連続出場である。
雅樹は9月16日夕、男子開催コースの滋賀蒲生GCから西宮へ移動し、一日西宮のホテルで休養し、翌18日、自分の車で福岡に戻って来る予定だったが、途中、高速が閉鎖され広島の西条駅前のホテルで台風の過ぎるのを待つ事となった。
雅樹から連絡が来た。
西条のホテルを出たと言って来た。
と、その30分後、雅樹からメールと写真が女房殿の携帯に入って来た。
風の中、高速道路を走った為か、それとも西条市内で起きたのか、タイヤが釘を踏んでパンクしていたのだと言う。
修理工場からの写真だった。
福岡へ帰り着くのは未定と言う。
飛ばす奴じゃない。
高速は時速100キロで走り、追い抜く運転はせず、追い抜かれるだけの法定速度を頑なに守る男である。
運転疲れたらサービスエリアの駐車場で眠る男だ。
今般の台風、我が家の被害は雅樹の車のタイヤ1本のパンクで済んだは幸運。
人の世は幸運と不運の重なり合い生じると思うが、近年、不運が増えている様な気がする。

女房殿は洗濯を始めた。
現在時9月20日、午前11時25分。
空は晴れ。
機影が見えた。
南から降りて来る全日空便だ。
然り気なく過せています。
体調良好です。
それでは来週。

今を壊すな。
大きなフォローは不要。

我流でゴルフを始めて、なんとか70台を出すまでにはなりましたが、左ひじを引く手打ちスウィングがビギナーの頃から変わりません。プロや上級者のような腕が伸びた大きなフォローに憧れます。塾長、どうすれば大きなフォローになりますか。(東京都・佐藤征大・47歳・ゴルフ歴18年・平均スコア82)


ゴルフに於ける理に反する動作、所いわゆる謂悪しき癖は初心時の3回の練習場通いで身体が覚える。
そして、初心時に身に付いた悪しき癖程、修正し難いものでもある。
良き癖の維持は難しい。
だから良き癖の維持の難しさと悪しき癖の修正がその後の人それぞれの上達に関わって来るのだと思う。
何事も人それぞれであり、世はそれを才能と呼んで来た。
順応力、対応力も才能の一つ、あるいは頭の良さと考えられて来たが、悪しき動きの修正手段、繰り返して行けば修正出来るものだ。
その事を知る指導者は街中の練習場に多くいる。
初心時の指導には丁寧さが要る。根気も要る。
諦めない忍耐も要る。
そして理論が要る。
ただ、ゴルフ歴18年の貴兄に指導者の如何様な丁寧さと根気と忍耐と理論を持って来ても、左肘を引く手打ちを修正するのは難しいと思う。

まず、飛距離がバラつく。
次に球の高さがバラつく。
その後に続くは左右の曲り。
最後は芯当りの出ない外れ球ばかりだ。
左肘を引くスウィングの矯正の相談は多かった。
進化論塾生の合宿、最も多かったのが左肘を引く癖の相談だった。
私は2つの選択肢を出した。
「インパクト直前直後で左肘の伸びたスウィングがいいのか。だが左肘を伸ばせば芯当りの快感はなくなる。勿論、芯当りなくなればスコアもラウンド18は悪くなる。それとも今の打ち方のままで飛距離の安定とスコアの向上を目指すのか。そうであれば芯当りの快感は続くと思う。選んでくれ。難しい事ではない」と。
皆、後者を選んだ。
ベストスコアを目指した。

私は記憶する。
タイ国バンプラGCの進化論合宿、参加された方の3分の1の方がベストスコア出された事を。
私にも情熱があった。
教わる方には必死さがあった。
3泊4日のコースに隣接するホテルに泊る合宿だったが、夕食後、私に悩みと希望を相談して来る方は多かった。
夕食後の2時間が要った。
私は総て受けた。
日本国内国外の進化論合宿、40回以上やったと思う。
私は疲れた。
それで合宿を終らせた。
今も合宿参加者との連絡は続いています。
ただ、世間話、身の周りの話、合宿時の想い出話だけで、ゴルフに関する悩み等はありません。
皆、年を取った。
そりゃ20年も過ぎれば当り前か。
自分が年取ったとは思わぬ。
周りが年取ったとは思う。
生きるってそうゆう事かと思う。

貴兄は何も変えるな。
ゴルフ歴18年と平均スコア82を無にしたければ左肘の動きを変えて行けばいい。
だが、大きなフォローにどの様な貴兄のゴルフの未来があるのかを考えて貰いたい。
左肘の伸びたフォロー、忘れろと言われても忘れる事出来ないのであれば、憧れは憧れのまま気持ちの何処かに置いていたらいい事だ。
悪癖の生命力は強い。
ならば触らぬがいい。
私であれば左肘を引く手打ちスウィングを己の最善と考える。
富士の山も静岡、山梨から眺める姿は異なる。
しかし、どの姿も富士山だ。
真実は一つ、なれど見る位置、己の位置で変る真実もあると思う。人それぞれ、立場それぞれで変るものあるのが人の世かと思う。
今のままで行くが最善。
貴兄に大きなフォローは必要ない。それでも大きなフォロー欲しいと言われるのならば今一度の連絡を待つ。
貴兄の今を壊して迄の左肘の伸びたフォローを作る手段はあります。ただ、私は勧めない。
今を壊すな。
切にそう思う。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2022年10月11日号より