【笑顔のレシピ】Vol.133「“自分の意志を貫く”ことと“頑固”の違い」
メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!
TEXT/SHOTANOW
自立した選手の条件の一つに「自分の意志を貫けること」が挙げられます。あらゆる情報がとめどなく押し寄せる時代だからこそ、取捨選択をして自分に必要なものだけを取り入れる能力は、これまで以上に大切になってくるでしょう。
ただしそれは「頑固である」ということとは違います。前者は、他人の意見を咀嚼(そしゃく)して自分に当てはめたうえで取り入れるか否かの判断をしますが、後者は好きか嫌いかという感情で決めてしまいます。
周囲のアドバイスを取り入れないという結果だけを見れば同じですが、そこに至るまでの過程が大きく異なるので、注意して見極めなくてはいけません。
例えば僕が打ち方に関するアドバイスをしたとしましょう。その時の会話では理解を示したものの、時間が経ってもなかなか改善の兆しが見られない。コーチをしていればざらにあることですが、そんな時は理由をきちんと聞くようにしています。
「言われたことを試してみた、もしくは考えてみたけど合わなかったのでやっていません」
こんなふうに答えられるのはかなり自立度の高い選手です。おそらくコーチが次のアドバイスをしなくても、自分から課題を乗り越える方法を探すことができるでしょう。
一方、「言われたことを忘れていました」とか「取り組んでいないけれど特に理由はない」というような答えが返ってくる選手はかなり危うい状態です。新しく入ってくる情報に対して、「自分のためになるかもしれない」という柔軟性がなくなってしまっているからです。
意外かもしれませんが、このように考え方が凝り固まるのは大会でいい成績を出した後。「取り組んできた内容が正しかった」と自信になればいいのですが、「正しかったから自分の考え以外は×だ」となるのは慢心。
コーチは選手の成果を出す存在と思われがちですが、良い結果が出ているときこそ先を見据えたコミュニケーションが大切なのです。
青木翔
あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている
週刊ゴルフダイジェスト2022年8月2日号より