Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • 週刊GD
  • 【ゴルフ野性塾】Vol.1737「鼻はスウィングの羅針盤」

【ゴルフ野性塾】Vol.1737「鼻はスウィングの羅針盤」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

今日6月9日、木曜日。

午前8時15分。
薄晴れの日が続く。
女房殿がベランダの樹と花への水やりを始めた。
樹と言っても丈1メートルの樹であり、朝の水やりが趣味なのであろう。
私が水をやる事はない。
3度やったが、4度目から断られた。ホースを使ってやったのが悪かったらしい。下の階への迷惑、そしてやり過ぎを指摘された。
女房殿はポットで樹と花の根元に水を注ぐ。
急がずにゆっくりとだ。
私は一気だ。
樹の根元の土が崩れる。
それも悪かったらしい。
雅樹はやらない。
人の趣味と興味に立ち入らぬを信条としている男である。
長女寛子は立ち入って来る。
だから中学、高校、大学と喧嘩が多かった。今は少ない。友との喧嘩なしの日々が何年も続いている様だ。
相談を受ければ相談に乗る。だが自分から口出しする事はないが雅樹の性分。どんなに苦しんでいても相談に来なければ我が身から動かずの男である。
私は口出し大好きな人間。
それでも何事に対しても面倒臭さ生じ、干渉せず、干渉されずの気持ちが強まって来たのを感じる。
午前8時55分を過ぎた。
ファックス送稿します。
そして風呂に入ってひと眠り。
今日も平和。
然り気ない日々が続く。

右耳でインパクトの音を聞け。

若い頃は250ヤードくらい飛ばしていましたが、40代の後半くらいから徐々に飛距離が落ち、60歳を過ぎてからガクッと飛ばなくなりました。現在の飛距離は200ヤードです。秋に定年を迎えますが、定年後はこれまで以上にゴルフに精進したいと思っています。塾長、あと10ヤード、飛距離を取り戻す方法はありませんか。(東京都・匿名希望・64歳・ゴルフ歴37年・HC16・ドライバー飛距離200ヤード)※質問は前回と同じ


収録は熊本空港CCイン12番ホールで始まった。
持つはドライバー。
マイクを右襟に装着し、マイクの電源は右ポケットに入れた。カメラの位置はカメラマンが決める。私から指示する事はない。
ゆっくりとした素振り2度終えて、正面カメラマンを見た。
名は村中洋生。
20年以上、私の正面に立ち続けて来た男である。年齢は50歳を少し過ぎたか。ボサボサの白髪頭を野球帽で隠しているが、はみ出した髪の毛は真っ白だ。
村中は頷いた。
私も頷いた。
2人の頷きが収録の始まりであり、20年の付き合いが続く。
2分10秒語った後、球を打つ。
左耳でインパクトの音を聞こうとした。
球は低く出た。
強いフック球だった。
2球目は右耳で聞いた。
高い球、そしてストレートボールだった。
インパクトの音を求めた。
鼻の向く方向はボールだった。
3球目を打った。
鼻の向く方向をボールよりも10センチ左に寄せた。
球はドローボール、そして高い球だった。

1本目の収録を終えた。
「どの球が一番いい音を出していた?」と村中に聞いた。
「3番目です」
2本目の収録に入った。
球3球打ったが、3球共、ボールの左に鼻の向く方向を定め、右耳でインパクトの音を聞いた。
この日、4週分収録、次の日も4本収録したが、総てインパクトの音をテーマとした。

結論を申す。
フックが欲しければ左耳で聞けばよいと思う。
それで左サイドの壁が出来る。
スライスが欲しければインパクト直前の鼻の向く方向を球に向ければいいと思う。そして、右耳でインパクトの音を聞く。
顔の中心は鼻だ。
顔を右に向けても左に向けても鼻が顔の中心から外れる事はないのです。
鼻はスウィングの羅針盤の針と思う。
球と右耳の距離は遠くなったが、その遠さがスライスを生んだ。
フックを欲すれば鼻の向く方向はスライスと同じ球の方向なれど、左耳で聞けば球はフックした。
球と耳の距離、微なる距離の差なれど、インパクトの音は大きく異なっていた。
左耳で聞けばフック、右耳で聞けばスライスした。
フックを欲すれば左耳で、スライスを欲すればダウンスウィング時の右耳で、ストレートとドローを欲すればインパクト時の右耳でインパクトの音を聞けばいいと思う。

日本のプロで最もインパクトの音を大切にした方は中村寅吉翁ではなかったか。
インパクト時の顔はインパクトとフィニッシュの中間を向いていた。その位置が最もよく聞える耳の位置だったのであろう。
彼にとってヘッドアップは悪癖ではなかった。
ゴルフ初心者は眼で球を追う。
それはヘッドアップだ。
しかし、耳で追えばヘッドアップではない。
いい球打てた時のインパクトの音、その音をどの位置で聞いたかを知れば飛距離は増すと思う。
私の6月2日と3日の8本の収録、インパクトの音が変った。
鼻の向く方向を球の左10センチに定め、右耳でインパクトの音を聞けば球は高く出た。
そしてドローかストレートで飛んでいた。
ドライバーだけの収録だった。
次の収録は9月下旬の予定なれど、その後の10月中旬の収録でアイアンでの収録を考えています。
希望あれば、11月上旬の執筆で述べさせて戴く。

60歳過ぎての頭の残しはヘッドスピードを落すと思う。
60歳過ぎれば頭も回転させる方がクラブヘッドのスピードが上がるのではないかと考える。
理は変化し、変化の先に進化ありだ。ヘッドアップ、悪癖と思うは理の硬化であろう。
少なくとも65歳以上の方のヘッドアップは悪癖ではない。自然態の動きである。
貴兄は耳で球を追え。
右耳でインパクトの音を聞いて貰いたい。
難しくはない。10球も打てば聞えたとの感覚、生れる筈だ。
飛距離欲すれば頭の回転、体の回転、下半身の回転は要る。
その回転力が落ちればスウィングスピードは落ち、クラブヘッドスピードも落ちる。
それが65歳以上の体力と年齢能力と思う。
曲る時は回転のバランス崩れた時である。
自分では目一杯の力を入れて打っているつもりでも、飛距離に何の変りもない。
右耳の位置を変えればいい。
それで頭も回転する。
回転態の進化だ。
以上です。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2022年6月28日号より