【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.82「自分が頑張りすぎると損をする」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Tadashi Anezaki
谷口徹プロと20数年ぶりに練習ラウンドを一緒にし、刺激をもろうた話の続きです。プレーもジャッジも早いし、年齢の割に飛ぶし、ええゴルフをしとりました。
そして、ご飯を食べながらのおしゃべり。止まらんのですよ(笑)。
「スウィングなんて、十人十色やから、自分に合ったやり方を取り入れるしかないんやけど、あまりにも世間では、これがいいとかあれがいいとか言う。するとそうしないといけない、みたいになる。それは違うんやないんですかねえ」と谷口は言います。
僕も日頃から同じようなことを思ってるんでね、ほんまに。
たとえば、グリーン上で、糸のようなもんで線を引っ張ってパターの練習をしている選手が、今は多いですわ。せやけど、きちんとしたストロークをしてもね、グリーンが読めてなかったら入らんのです。だから、読む練習もせんとあかんのです。
スウィングなら、シャローイングとか流行ってますけどね、たとえば、ジョン・ラームとジョン・デーリー。同じジョンでも、テークバックの距離が1メートル半と5メートルくらいで、ずいぶん違います。ラームが、ヘッドが地面にくっつくようなデーリーのスウィングは取り入れられんでしょう。逆もそうやしね。
まあでも、ジョン・ラームのあのスウィングは無駄を省いていていいですよね。やっぱり、おっきいほうが曲がりますよ。誤差が出る。自分が頑張ってることで、ヘッドスピードを損してるケースもけっこう多いんです。
小さいほうが単純作業やから。林からチョンと出すときもそうでしょう。シャフトが平行になるくらいから打ってしまっていいんです。手よりもヘッドが上がっていればいい。
そうすると足も使えるのです。武道でもそうです。下半身を使うのはやっぱり絶対大事。ひざをついて打つ人は、世界中に1人もおらんでしょう。私の師匠(高松志門)も曲芸ではするけど、ひざをついてラウンドはしません。やっぱり損なんです。僕らでも210ヤードくらいしか飛ばんと思います。
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2022年5月31日号より