【笑顔のレシピ】Vol.124「挨拶しろよ」とだけ教えても挨拶できる人間は育たない
メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!
TEXT/SHOTANOW PHOTO/Hiroaki Arihara
新年度が始まって早くもひと月が経ちました。4月から職場や学年などが変わり、これまでと違ったコミュニティに移った人は、ようやく慣れてきたころかなと思います。
新しい環境というのは誰しも、多かれ少なかれ緊張をするもの。周りに気を配り、いつもより丁寧に物事を進めていたのではないでしょうか。それも日を追うごとに徐々に緊張がほぐれていきます。自分らしさを出せるようになるという点では、決して悪いことではありません。
ただ子どもの場合、気のゆるみにつながって練習に身が入らなくなってきたり、道具やあいさつを大切にするという基本的なことがおろそかになったりもします。
そういった姿を見ると、つい「挨拶は? 片付けは?」というような注意をしてしまいがち。けれども行動だけをうながすような指導は、一時の効果はあるもののまたすぐに同じことの繰り返しになります。
それは、挨拶や片付けをきちんとする理由がわかっていないから。
僕はお互い気持ちよくコミュニケーションを始めるためには挨拶が必要だし、親御さんが一生懸命働いたお金で買ってもらったクラブを粗末にすべきではない、という部分まで理解ができるように説明をします。
ただし、丁寧に言うのは最初のうちだけ。理由を伝えたにもかかわらず繰り返す子には「それなくない!?」としっかりお灸をすえています(笑)。
1年経てば、子どもは驚くほど成長します。スコアも飛距離も数段伸びる子はザラにいます。もちろん技術の向上も嬉しいのですが、挨拶や道具の管理、僕との約束をきちんと守るということがしっかりできていることにこそ成長を感じます。
今年僕に注意されていた子が、来年は下級生に対して「ちゃんと挨拶できた?」なんて教えてくれていることを目標に、今年度も彼らと向き合いたいと思っています。
青木翔
あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている
週刊ゴルフダイジェスト2022年5月24日号より