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【ゴルフせんとや生まれけむ】室伏重信<後編>「スポーツに共通する“心・技・体・調”」

ゴルフをこよなく愛する著名人に、ゴルフとの出合いや現在のゴルフライフについて語ってもらうリレー連載「ゴルフせんとや生まれけむ」。今回の語り手は、前回に引き続き元ハンマー投げ日本代表の室伏重信氏。

前回のお話はこちら

私は昔から何事も、とことん突き詰めて自分自身が納得しないと気が済まない、自他ともに認めるしつこい性格なんですよ(笑)。ハンマーの現役時代には当時はビデオがなく8ミリでしたが、自分や海外の一流選手の投てきフォームを撮影してその映像を何時間も繰り返して見ては研究したものです。そのしつこさはゴルフを始めるようになってからも全く同じでしたね。現役時代同様、自分やトッププロのスウィングを何時間もチェックしました。幸い、今はビデオがありますから昔よりもずっと楽でした。何しろ昔の8ミリは長時間停止にしておくとフィルムが焼けてしまったりしましたから、大変だったんですよ(笑)。

ともあれ、研究の結果、自分なりに分かったことが2つありました。1つはハンマーを投げるときもゴルフのクラブを振るときも「腕を使ってはいけない」ということです。今、私がハンマーをやっている学生たちを指導する際、口を酸っぱくして「腕を抜け」「力を入れるな」と言っているのは、まさにそのことなんですよ。でも、私自身、ハンマーではちゃんとできるのに、なぜかゴルフになるとついつい腕に頼って力が入ってしまって脱力できない。何とも難しいものですね(笑)。


もう1つは、どんなスポーツでも、トップクラスの選手の動きには「美」があるということです。MLBで活躍している大谷翔平君を例に挙げると、彼のピッチングもバッティングも動きがとても優雅に見えるでしょう? 力みが全くなくて、それでいながらダイナミックに大きく動いていてほれぼれするほど美しい。私もゴルフの「美」に少しでも近づこうと自分なりに頑張ってはいるのですが、こちらもなかなかできない。その道程はかなり険しいですね。

スポーツの世界では「心技体」が大事だとよくいわれます。いわゆる精神力、技術、体力のことですね。私はその3つに加えてスポーツには「調」も必要だと思っています。「調」とは調整力(コンディショニング)のことで、この4つがしっかりと機能していないと満足のいくパフォーマンスはできないんです。

私には大学生から社会人になった若い頃の3年間「技」に問題があり、その結果スランプに陥ってメキシコオリンピックの代表から漏れてしまったという苦い経験があります。それを克服してから技を中心に心・体・調を深く考え、それらの調和をはかりました。もちろん、この「心技体調」はゴルフにも当てはまります。この4つが噛み合っていないと満足できるプレーはできませんからね。

私も75歳を過ぎて未来を担う子どもたちのことを考える機会が多くなりました。小学生の頃からスポーツに触れてきた私が今強く思うのは、小さなうちからいろいろなスポーツをやったほうがいいということ。体を動かす感覚を養うことで、将来どんなスポーツをするとしてもそれが役に立ちます。スポーツは人生を豊かにしてくれます。その楽しさや素晴らしさを子どもの頃から体感して生涯スポーツに親しんでもらいたいですね。私もゴルフを楽しんでいきます。

室伏重信

むろふししげのぶ。1945年、静岡市沼津市出身。高校時代からハンマー投げを始め、日本代表としてオリンピックに4回出場。アジア大会5連覇を成し遂げ「アジアの鉄人」の異名をとる。引退後は指導者に。ベストスコア76

週刊ゴルフダイジェスト2022年5月10・17日合併号より