Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • 週刊GD
  • 【野性塾】Vol.1724「固着の型を崩すと球は曲がる」

【野性塾】Vol.1724「固着の型を崩すと球は曲がる」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

今日3月3日。今日も晴れ。

ただ、薄晴れの空、東の空の山の輪郭がボヤけている。
1日が早くなって来た。
当然、1週間の過ぎ様も早い。
もう1週間終ったのかの想い、強まるばかりだ。
原稿に追われ始めている。
コロナの大騒ぎが始まった2年前の3月と同じ状況の訪れである。
連載13本の時があった。
今は4本なれど、追われていると感じる。
2年前、籠った。
その籠りの終り近付いて来ていると思う。
講演会と取材、そして塾生と大手前大学ゴルフ部員の指導、6月から始められるのではとの声を聞く。
昨日も今日も新連載依頼の話が来た。それ等が重なっての追われ始めた感覚なのか。
こうなるともう少し籠っていたかったの想いを持つ。
体調良好です。

トップ位置の型を作り、固めて行け。

大学時代の仲間4人でゴルフを始めました。ビギナーのうちはそれほど気にしていませんでしたが、始めて3年経ってかなり差がつきました。1人はときどき80台を出すレベルになり、あとの2人も100を切りました。自分だけがまだ110を切れず、完全に置いてけぼりにされている不動の4番打者です。ドライバーはスライスで、ときどき引っかけも出ます。アイアンはダフリとトップのミスです。塾長、週に1度の練習場通いで100を切るには、どんな練習をすればいいでしょうか。(神奈川県・匿名希望・31歳・ゴルフ歴3年・ベストスコア112)


固着を求めるべきと思う。
ワンショット毎に変るトップ位置とフィニッシュ位置からインパクトの均一性は生じない。
固着力を持たぬ美しきスウィングよりは基本と理想から遠くかけ離れてはいても同じ位置に上がり、同じ位置に収まる固着力持つスウィングの方が方向性と球質、球筋を持つは確かなる事。
杉原輝雄さんのスウィング、コーリー・ペイビンのスウィングは美しさとは無縁の振りだったと思うが、2人は極端に狭いホールでも平然とティーアップし、ワッグル1度で打って行く人達だった。
変らぬトップ位置とフィニッシュ位置、要するに状況の影響を受けぬスウィングの持ち主であり、トップ位置の型とフィニッシュ位置の変らぬ型の固着力を持つ人達だった。
飛距離の出ない人は曲らぬと言うが、そうではない。
飛距離の出る人でも曲らぬ人はいるし、飛ばない人でも曲る人はいる。要は型の固着力が生む同じスウィングで打てるか否かであった。
トップの固着力を持てば球質、球筋は変らぬものだ。フィニッシュの固着力を持てばバラつきの少ない飛距離となって行く。
スウィングの才能は大きく振る事、コンパクトに振る事、美しく振る事ではないと思う。
固着の型を生む固着力がプロでやって行けるか否かの才能とゆう気はする。

スウィングは我流である。
プロもアマも人、それぞれだ。
戦う時、頼りとなるは固着の型を持っているか否かである。
左右OBのないホールでは真っ直ぐに打てるし、スウィングも乱れないとゆう人は多い。
しかし、狭いホール、左右にOBのあるホールに来ると大曲りしてしまう、日頃のスウィングが出来ないとゆう方の曲りの原因はトップ位置とフィニッシュ位置の型が変る為であろう。
二つの位置の型が固着していればどの様な状況でも変りはしない筈。
プレッシャーに弱いとの指摘もあるが、プレッシャー感じても型、変らなければ球は曲らない。
プレッシャーが影響与えるはスウィングのリズムであり、スウィングのリズム変れば飛距離が変るだけの事。
曲りとは関係ない。
緊張してトップ位置が浅くなったはスウィングリズムが生みし影響であるが、トップ位置の型に変化なければ大きく曲る事はない。
小さく曲るだけだ。
ただ、飛距離は落ちる。
そして、トップ位置の浅さを感じて力を入れれば、そこで球は大きく曲る。
OBのあるホール、狭いホール程、平常心で打てと経験者は教えるが、それはトップ浅くても、打ち急いでも余分の力を入れるなとの教えである。
いつも通りに打てば飛距離落ちるだけで済む。
だが、余分の力を入れれば球は曲る。
固着の型を崩すからである。

リー・トレビノは言った。
「俺がゴルフ教わるとしたら俺よりゴルフの上手い者だけに教わる。俺にゴルフ教えられる人間はニクラス唯一人だ」
そこにはゴルファーへの信頼意識が存在したと思う。
今は変った。
ラウンド80切れない人がレッスン報酬を貰う時代になっている。
教わる側は教える側の持つ分析力、そして科学を信じて打席に立つ。
この流れ、いずれは変る。
教わる側が離れて行く。
指導に必要なのは信じ合う関係である。
信頼無くなれば人は離れる。
人間性、理論、指導力に疑問覚えれば、人は巣から出る。
自分より下手な人間にいつ迄も付き合う暇人は少なかろう。
指導には指導する側の過去が要る。

驚いた事が一つある。
ゴルフ歴5年、ベストスコアは不明。レッスン始めてからは人前で球を打った事なし。ただ自己申告ありて、レッスンの才能、抜群とゆう話だった。
熊本での話である。平成5年8月に熊本塾を開塾したが、平成10年春の話だった。
ジュニア塾生は俺が育てたと言ってたらしい。
塾一期生に聞いた。
教わったのか、と。
練習場のお客さんで挨拶しただけです、と言った。
そうか、無害無臭の人間か、と思った。確かに無害な人ではあった。ただ、無臭ではなかった。臭(にお)いを持つ人だった。レッスンを始めたからである。
そして塾生の名前を使っていた。
コーチ達が相談に来た。
放っておけ、と言った。
「無害であれば騒ぐだけ疲れるものだ。塾生が成功すれば、そうゆう人は出て来る。私も経験あるが、ゴルフ場の食堂、コーヒー1杯御馳走になっただけで、俺は坂田の無名時代から今迄、面倒見て来たと語る人がいた。ペンを持たず、ジュニア塾も開いていない、ツアー参戦しても試合の半分、予選落ちしてた頃の話だ。騒ぐな。疲れるだけだ」
興味を持たれる様になれば、そして少しでも有名になれば竹の子みたいにコーヒー1杯の出会いが姿を現す。
今、私は御馳走にはならぬ。
御馳走する側だ。それでも坂田と食事したとの話は出る。
それが人の世だ。
面白いと思う。
コーヒー1杯御馳走してくれた方の名は知らぬ。
拘らず、然り気なく過して行けるが幸せ。この2年、そう思って過して来た。

貴兄は固着させよ。
トップ位置の型を作り、固めて行け。それで週1度の練習の成果は出る。
週2度の練習出来るのであればフィニッシュの型を固めた方がいい。トップよりフィニッシュの型を固めた方が上達は早い。
ただ、フィニッシュの型を固めるにはトップの固着の倍の時間は要る。
壁の前に立ち、トップ型を作りて10秒の静止。型を解いて再びの10秒の静止。1度7回、70秒の固着への努力だ。
それで貴兄のスウィングは変る。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2022年3月22日号より