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【笑顔のレシピ】Vol.110「1オーバーにつき素振り70回。僕が“罰”を課す理由」

メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!

TEXT/SHOTANOW

前回のお話はこちら

結果が出なかったことに対して科す懲罰。ここ数年、体罰問題と並び議論されているのをしばしば耳にします。昔は部活動などでも当たり前のようにありましたが、最近では「プロスポーツ選手を罰走させた」などとニュースになったりもします。

僕のアカデミーには懲罰はありませんが、ある罰ゲームを設けています。2つは似て非なるもの。その違いは目的にあります。

懲罰は「懲らしめて制裁を与えること」を目的とし、選手が嫌がるような練習や環境を作って、もう同じような目にあわないようにしたいという気にさせます。無目的な長時間の走り込みや、反省文や正座を強要し練習時間を奪うなどというのは、懲罰の最たるものでしょう。

一方、僕が高校2年生以上の生徒と取り決めているのは、「試合で1オーバーにつき、素振り70回」というメニューです。内容だけ見れば懲罰のようですが、このゲームには狙いがあります。

素振りは、僕が指導をするうえで、最も重きを置く練習方法の一つです。ただ重いものを振らせて追い込むのではなく、重さの異なるものを3つ用意して、「フォーム固め」「速く振る」「スウィングに落とし込む」という目的のもと行っています。

対象を高校2年生以上としているのは、この目的がきちんと理解できる選手を対象にしたいから。まだ素振りの重要性や楽しさを理解していない生徒には、ただの懲罰になってしまう可能性があるので取り入れません

さらにゲーム性を高めるために、もしアンダーパーが出れば1打ごとにアカデミーの細田コーチが同じメニューをこなすというルールがあります。これには特に意味はありません(笑)。でも、ゲームだから楽しくしたいし、フェアにしたいということで設定しています。

罰ゲームは内容次第でモチベーションを奪い、その競技を嫌いにさせてしまうリスクをはらんでいます。実益がきちんとあるか、楽しめる内容になっているかという点を慎重に検討して設計するようにしています。

「懲らしめるための罰」では成長につながりません(PHOTO/Tadashi Anezaki)

青木翔

あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている

週刊ゴルフダイジェスト2022年1月25日号より

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