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【ゴルフ野性塾】Vol.1699 「止めの息はスピードを生む。」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

宣言が続く。うつされるのは

イヤだが、うつすのはもっとイヤだから籠りの日々が続く。
我が家の女房、生協のファンになってしまった。
玄関迄、食材を運んでくれる便利な出前である。
女房殿も外へ出なくなった。
廊下のド真ん中、枕一つ持って寝っ転がった。
仰向けに寝た。
いつの間にか眠っていた。
3時間で眼が醒めた。
背中、腰が痛むのではと思ったがどこも痛くなかった。
我が家の冷房はそれぞれの部屋だけであり、廊下、トイレ、風呂場は暑い。
半袖シャツと短パンが汗で濡れていた。
天然木の廊下も濡れた。
シャツを脱ぎ、濡れた廊下を拭いた。
女房が居間から出て来た。
叫んだ。汚い~ッ!!
「俺のどこが汚い?」
「総てよ!! すぐにシャワーを浴びて頂戴!! 廊下は私が拭いておくからッ!!」
俺って粗大ゴミかな、と思った。
コロナで変った事、幾つかある。
一つは女房の発する言葉に遠慮がなくなった事。
30年前を想う。
長男雅樹13歳、長女寛子10歳。女房殿は38歳。
私は親分だった。
狭い雇用促進住宅の部屋、いつも私が部屋のド真ん中に座っていた。
今はそれぞれの時間を持ち、それぞれの部屋で過すが、廊下の昼寝は気持ち良かった。
明日も廊下で眠ろうと思う。
止めて下さいよネ、廊下で眠るのは!! と女房が叫んだ。
分っている様だ。
私が廊下で眠るつもりになっている事。
今日9月2日。窓の外は灰色の雲、連なって浮かぶ曇り空。
サイレンが聞える。
スピード違反で捕まったか。
我が身、平和なり。
それでは来週。

原因は三分の一。
肩か、手首か、止めの息。

ドライバーの飛距離が急激に落ちてきました。1年前の飛距離は210ヤードでしたが、昨日の同じコースでのラウンドでは190ヤードが精一杯でした。1年で平均20ヤードのダウンです。1年前は230ヤード出ている時もありましたが、今は飛んでも飛ばなくても180ヤードから190ヤード。飛んでいる時との差は40ヤード以上という嘆きの飛距離です。何とかしてください、塾長。(宮城県・斎藤勝・65歳・ゴルフ歴30年・ドライバー飛距離190ヤード)

いつかは出会う飛距離。
そして過去と訣別の時。
1年で20ヤードの一気の飛距離落ちは衝撃の事実であろう。
私も同じ経験を持つ。
その時はトップスウィングの位置が浅く、浅くなった原因を修正したら飛距離も球筋も戻ったので然したる驚きではなかったが、それでもそんな阿呆な、の想いは持った。
浅さを生んだ原因は三つあった。
一つは爪先ラインと肩のラインのズレ。
爪先ラインと肩と腰のラインは平行が私のアドレスだったが、肩のラインが開きのラインになっていた。
爪先ラインよりも左を向いていた。
その状態で同じ体の動きをすれば肩の入り様は浅くなる。
勿論、肩の開きだけの変化であり、他の部分は何も変っていなかったので球が曲る事はなく、飛距離が落ち、球筋がドローからフェードに変っていただけの事。
バックスウィング始動時、左肩を前方に突き出し、その直後にバックスウィングに入れば球質は戻った。

二つ目はトップでの手首の使い過ぎ。
飛距離落ちた時、手首のタメを作ろうとする方は多いが、手首だけで作るタメに如何程の飛距離出す力、あるとゆうのか。
スウィング全体で作る手首のタメ型であれば飛距離伸ばせるが、手首だけへの意識で生れるタメだと3ヤード出すのが精一杯だと思う。
そして、球筋が変る。
飛距離落ちた時は手首の型、タメ型からノーコック型へと移行させるが最善。
トップでクラブを宙へ突き上げる意識持てば芯捉えの確率は高まる。
体の回転力が増す。
手首のタメ型は止めの型であり、手首の動きを抑えたスウィングは振り抜きの型を生むのです。

三は呼吸。
人は呼吸なしで生きて行く事は出来ぬ筈だ。
呼吸とは吸う息、吐く息、そして止めの息の三つより成るが、止めの息の大切さを知る人は少ないと思う。
止めの息は体幹、そして体の動きの調和力を持つが、止めの息は体の姿勢を正す力をも持っているのではと考える。
プロテストに通った後の鹿沼CCの2年間、そして周防灘CCの18年間、通いの手段は雨の日も晴れの日も自転車だったが、周防灘の冬、午前8時から午後1時迄は自転車で山道を走り回っていた。
小石混りの山道の上りはきつかった。
体が覚えた。
踏み込む直前、吸う息を止めた。
その瞬間、タイヤが空滑りする踏み込みの強さが生じた。
あとは両の手の小指と薬指、そして中指で握るハンドルを下から引っ張り上げる動きすれば上りの坂道も真っ直ぐに上れた。
人差し指と親指は添えるだけだった。
止めの息の強さを知った時だった。

バックスウィングで息を吸う。
私は浅く吸う。
吸いの量は人それぞれだ。
人それぞれに己の正解があると思う。
飛距離落ち、球筋変った時、何が原因かを考えた。
年齢ならばもっと早い時点での飛距離減が起きていた筈。
私の飛距離減はそうではなかった。
突然だった。
私はバックスウィング途中、左腕が地面平行の位置を過ぎた瞬間、吸う息を止めた。
そして吸った。飛距離の変化は生じなかった。
トップ迄の動き、止めの息を入れた。
変化の位置が分った。
フルスウィングのトップ位置の手前、コブシ2個の位置での止めの息がダウンスウィングのスピード上げる事が分ったのです。
バックスウィング時の吸いの息、途中一度の軽い止めの息、そして再びの吸いの息、トップ位置での吸いの息から吐きの息への瞬時の変化。
若い時は意識せずともこの動きは出来る。
しかし、60歳過ぎると意識せずの動きの量は減って行く。

ジュニア塾生への指導時、クラブ2本持った連続の素振りを50回させた。
最初は呼吸が合わなかった。
20回で合う気配が生じ、30回で合い始め、40回で全員の呼吸が合った。
シャフトの風切る音が一致した。
1、2で上げ、3で振り下ろして来る素振りである。
ジュニア塾生は言った。
恐怖の1、2、3です、と。
タイ合宿でも振らせた。
夕食後のプールサイド、1、2、3の掛け声で振らせ続けた。
1、2の後、私は一瞬の間合いを作り、3と叫んだ。
止めの息を作るのが目標であった。
止めの息が乱れると、新たな振りの動き生じてスウィングは乱れるものだ。
プレッシャーへの対応は止めの息が要ると思う。
塾生95人がプロテストに通った。
シードを得し者は12名。
貴兄は三つの中の一つを参考とすればいい。
それで飛距離戻ると思う。
以上です。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月21日号より