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森守洋「レッスンは受けるな」Vol.36 飛びは武器、でも飛びだけでは戦えない

KEYWORD 森守洋

堀琴音、柏原明日架、香妻陣一朗ら多くのプロを指導する森守洋が、自身が行きついたゴルフスウィングの本質を語り尽くす。

PHOTO/ARAKISHIN

>>前回のお話はこちら


File.36
飛距離について


飛びは武器、でも飛びだけでは戦えない

ゴルフの仕事を長くやらせてもらってきて、ずっと不思議に感じていたことがあります。日本では飛距離が出る選手で技巧派と呼ばれる選手が少ないのではないかと感じませんか?

ジュニア時代から元々飛ぶ素質を持っている選手にそういう傾向があることを不思議に思っていました。ゴルフは飛ばすだけのゲームではありませんが、飛距離がアドバンテージになることは間違いのないことです。ですが、小さい頃から飛ばし屋と呼ばれる選手全員が技巧派にならないのはなぜなんだろう……。それでふと思ったのは、僕が大好きな温泉の文化に似ているかもしれないということなんです。

以前、僕は温泉が好きだという話をさせてもらいました。休みといえばもはや温泉!それくらい温泉が大好きで特に源泉掛け流しが大好物なんですが、僕が選ぶ温泉旅館は古くてひなびた温泉宿がほとんどです。そういう旅館にこそ良い源泉がある、温泉好きの僕がたどり着いた一つの答えです。

そのことがなぜゴルフとつながっているのか。


何が言いたいかというと、良い源泉を持っている温泉旅館というのは、風呂そのものが良いものだから集客に多くの力を注がなくてもお客さんが絶えることはあまりないです。だから意外と建物などのハード面に古さを感じることが多くあります。

来客側から見れば「もっとキレイにすればいいのに」「剥がれている側面のところを直せばいいのに」と思いがちですが、良質な源泉があることで、そこまで集客の努力をしなくてもそのお湯を求めてお客さんが来てくれることのほうが多いのです。だから、そこまでハード面に注力せず、極端に言えば何もしなくてもいいという発想になるのかもしれません。

これをゴルフに置き換えると、小さい頃から飛ぶ選手にも同じことが言えて、ほかの子たちよりも元々飛ばせるし、小中学校の大会だと飛ぶとスコアも出しやすく成績も出やすい。だから無意識にゴルフプレーが傲慢になってしまうことがあると思うんです。

まだ年齢も低いから仕方がない部分ではあると思いますが、それがゴルフが上手くならない原因なのかもと思ったんです。本人は意識していなくても、飛距離が出るし成績も出るから自分よりも飛ばない選手たちを無意識に下に見てしまう。

せっかくいいものを持っているのだから、それを生かしてすごい選手になってほしいです。日本のゴルフの歴史においてジャンボ尾崎さんや岡本綾子さんは屈指の飛ばし屋でしたが、それだけではなかった。ジャンボさんはアプローチが誰よりも上手かったし、岡本さんは生粋のショットメーカーでした。

飛距離がアドバンテージであることは間違いのないことですが、ゴルフはそれだけではない。逆に飛ばない選手のほうが、なんとか飛ぶ選手に負けないよういろいろ工夫して努力してゴルフゲーム巧者になっているようにも感じます。

ただ、温泉の場合は個人的には磨いてほしくないかも。僕が泊まる旅館は1泊数千円のところが多いのですが、その理由はハード面を求めているわけではなく、良質な源泉を求めていると自然とそういうところになっちゃうんですよね。いい意味で知る人ぞ知る秘境温泉といいますか(笑)。

ゴルフの話に戻りますが、元々飛距離の出る選手というのは飛ばそうとしなくても飛ぶわけですから、そこに関して努力を注入しにくくはなりますよね。

良い源泉の温泉旅館とゴルフには意外なところで共通点があったわけです。これからも僕は良い源泉を求めて、素晴らしい温泉旅館を探し続けたいと思います。これからも温泉とゴルフに関する話は尽きないので、またの機会で話させてください!

ゴルフにおいて飛距離は大事な武器ですがショットの精度やアプローチやパットも磨いていくことが大切です

解説/森守洋

もり・もりひろ。1977年生まれ。静岡県出身。堀琴音、柏原明日架、香妻陣一朗ら多くのツアープロを指導。原理原則を謳い文句にゴルフスウィングの核心に迫る

週刊ゴルフダイジェスト2026年11月3日号より

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